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十七話

あれ以降、大志の心には不安が残り続けた。

捨ててきた過去が今の生活を壊さないかという不安が。

この穏やかで幸せな生活を、尊敬できる人間の人生を。

壊されてしまうのではないか。

そういった不安が、ずっと消えなかった。


「はあ……」


縁庵の二階の自室。

布団の上で横になり、天井の木目を見つめながら溜め息を吐く。

愛助には注意するように告げておいたが、それでも、相手はあの赤星だ。

何をしてくるかわからない。

もし彼が怪しい組織と繋がっていたら……

ただの想像ではあるが、嫌な可能性を生み出しては不安に思う。

そんな悪循環が止まらなかった。


「大志ー」


そんな大志の思考を障子越しの声が止めた。

隣にいるオーナー、織部のものだった。


「今、いい?」

「あ……ああ、どうぞ」


軽く周りを掃除して、大志は声をかけた。

スウェット姿の織部はスナック菓子と炭酸類の余りと紙コップを持ってやって来た。


「どうしたんだよ?」

「男子会しようぜ!」

「え……なんで?」


大志の質問に答えずに「お邪魔しま~す」と部屋の中にやって来た織部は、畳の上にドカリと座った。

仕方なさげに起き上がると、大志は渋々彼と向かい合った。

最初は下らない世間話をしていった。

この前見た映画の感想やら、新メニューのウケがよくて良かっただのといった、そんな話だ。

こうして対等な立場で、とりとめのない会話をしていると、大志は昔を思い出す。

その昔。

まだ八海連合にいて、周りの仲間が本当の友だと信じていた頃。

こうやって下らない話で笑いあっていたと。

胸が苦しくなり、顔を顰める。

そんな時だった。


「最近、なんかあった?」


織部はポテトチップスを摘まみながら尋ねた。


「……なんだよ?」

「最近、人が見てないとこでなんか心ここにあらずな顔してるからさ。なんか悩んでるのかなって」


能天気でお気楽に生きているようで、織部にはこういう鋭い面がある。

侮れない。

こうなる事がどこかでわかっていたかのようで、大志は紙コップを置いた。


「昔の仲間に会ったんだ」

「仲間か。いいじゃんか。それの何がダメなんだ?」

「……昔の話になるんだけどさ」


大志は自身の過去、八海連合に所属していた頃の話を語った。

かつては若者の自警団として世間から慕われていたグループが、暴力に溺れ、腐敗していったこと。

愛助の行動により解散したこと。

そして、当時の八海連合の頃から乱暴を働いていた人間と会ってしまったことを。

全てを打ち明けると、織部は「そうか」と呟いた。

その目線は真剣な時にする眼差しだった。



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