昨日のこと
「はあ……なんで私、あんなこと言っちゃったのかしら……。」
放課後の生徒会室に、ひとりうつむく如月紅葉のため息が落ちる。
「あーーーっ!もう死にたい……!誰か私を埋めてくれぇ……!」
机に突っ伏して泣きわめきながら、昨日の出来事を思い出していた。
「なんで、なんであんなこと言っちゃったのよ……。別に、あいつのことなんか好きじゃないし……何とも思ってないし……。そうよ、ただ仕事が終わってなくて言わなきゃって思っただけで……。深い意味なんか……。」
ぽつりと呟くと、如月は顔を真っ赤にして慌てて頭を振る。
「いや、違う!何考えてるのよ私は……っ!」
――ガチャ。
突然ドアが開き、現れたのは昨日の張本人だった。
「はあ……。おい、昨日お前にやれって言われてた資料、片付けといたからな。別に泣きつかれたわけじゃねーけど、放っとくとお前が困るだろうし。」
桧山朽葉が無造作に資料の束を机の上に置く。
「……お前、泣くことないだろ。大げさなんだよ。」
「っ……あーーもうっ!!」
如月は顔を真っ赤にしながら机を叩いた。
「なんであなたは、人が忘れようとしてる過去をわざわざ掘り返してくるの!?ほんと最低、最悪だわ……!さすが平民ね!」
「はあ?何怒ってんだよ。ほら、資料も片付けておいたんだから機嫌直せって。」
如月はいつもの冷静さを失っていた。
(なんだよ……。いつもなら嫌味のひとつでも言ってくるのに、今日は様子がおかしいな。もしかして……。)
朽葉は数秒考え込むと、口を開いた。
「……お前、今日……生理か?」
その瞬間――
「~~っ!!」
如月の顔が一気に真っ赤になった。
「あんたはもう……ほんっとに……!!出てって!!今すぐ出て行けぇっ!!」
「な、なんなんだよお前……。」
放課後の静かな生徒会室に、彼女の怒鳴り声と、朽葉の戸惑う声が響き渡った。