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第一章 悪役令嬢の取り巻きに転生したら皆から愛されますわ!?


「はぁ……また乙女ゲームの世界か……」


 私はそう呟きながら、自分の手をじっと見つめた。

 白く柔らかな肌、細い指、そして身に着けているのはヒラヒラした少し古風なドレス。

 どうやら私は、また乙女ゲームの世界に転生してしまったようだ。


 いや。

“また”と言うのは少し語弊があるのかも知れない。


 ──と言うのも、私は元々乙女ゲームの住人だった。

 悪役令嬢で、テンプレート通りヒロインを苛めて殺人未遂を犯し、その事を婚約者を始めとする攻略対象たちに断罪されて。

 最終的に処刑されてTHE END。

 そして、日本の平凡な家庭の子供へと転生した。

 前世の記憶が残っていた私は、自ずと自分が乙女ゲームの悪役令嬢だった事に気が付いて。

 前世の行いを正すべく、真っ直ぐ真っ当に生きた。

 処刑だなんて……あんな死にかた二度とごめんだと思って。

 しかし、結局不慮の事故で命を落としてしまった。

 転生の仕方までテンプレートとは……。


「……ここは……『恋する薔薇の園』の世界ね」


 記憶を辿ると、私は前世でプレイしていた『恋する薔薇の園』と言う乙女ゲームを思い出す。

 ヒロインは平民出身の孤児で、皇立アカデミーに入学した事を切っ掛けに貴族の令息達との恋愛がスタートするというストーリー。


「でぇ? 私は……」


 自分の姿を確認するために、部屋に置いてある鏡に向かう。

 黒いの艶やか髪と、青い瞳。

 そして何よりも目立つのは、首元で輝くルビーのネックレス。

 これは……間違いなく『恋する薔薇の園』のキャラクター、オルリカ・シュテファンの物だ。


「え、オルリカ!? なんでオルリカ!?」


 オルリカはヒロインの敵役として登場する悪役令嬢、アリーファ・フォン・アルテミスの取り巻きの一人。

 性格は高慢で冷たいが、実はかなりの努力家。

 そして何よりも、ヒロインに苛められる立場だった。

 何がどうなって悪役令嬢の取り巻きがヒロインに虐められるのかと言うと……それは後々話す事としよう……。


「うわぁ……これはまずい事になったわねぇ……」


 ゲームではオルリカはヒロインに散々苛められた後、最終的に退学に追い込まれる悲劇のキャラ。

 ちなみに悪役令嬢であるアリーファもまた、ヒロインを苛めて破滅する運命にある。


「どうしよう……このままじゃゲームのストーリー通りに進んでしまうわ……」


 私は頭を抱えながら、これからの事を考えた。

 まず、ヒロインのルーティンが始まる前に何とかしなければ。

 でも、どうやって?


「そうだ、取り巻きとしての役割をうまく利用して、アリーファを守りつつ自分も守る方法を考えよう!」


 そう決意した瞬間、部屋のドアがノックされる。


「オルリカ様、朝食のお時間ですわ」


 聞き覚えのある声。

 アリーファのもう一人の取り巻き、ベルタの声だ。


「す、すぐ行き……ますわ」


 怪しまれたら色々と面倒そうだし、言葉遣いだけでも令嬢っぽくしないと。

 私は深呼吸して覚悟を決めると、立ち上がりドアを開いた。


「お、お待たせしてしまいまして、ベルタ様……」

「大丈夫ですわ、オルリカ様。さぁ、参りましょう? アリーファ様もお待ちかねです」


 ベルタと共に朝の食堂へ向かうと、すでにアリーファが所定の席に座って私達を待っていた。


「おはよう、オルリカ。遅いじゃないの」


 アリーファが少し心配そうに眉を顰める。


「申し訳ございませわ……アリーファ様。寝坊してしまって……」


 私が深々と頭を下げると、アリーファの表情が優しげに緩んだ。


「もぉ、仕方ないわね。あなたはいつも生真面目なのだから。たまには休んでも良いと思いますわよ」


 え……?

 アリーファがオルリカにそんな事言う!?


 ゲーム内のアリーファは、常に高慢で、強気で、自分の立場を誇りにして奢り上がり、取り巻きたちを小馬鹿にしていた。

 しかし、現実では意外と気遣いが出来る性格のように見える。


「あ……ありがとうございます……」


 私は内心で驚きつつも、席に腰を下ろした。

 ベルタも微笑みながら私の隣に座り、朝食を勧めてくれる。


「オルリカ様、今日は何かご予定はございますか?」

「いいえ、特にありません……わ。あ、でも課題でレポートを作成しないと……」

「それでしたら、私がお手伝いいたします」


 ベルタがそう言うと、アリーファも頷いた。


「それが良いわね。わたくしもお手伝いするわ。三人でやればきっと効率がいいですし」


 この三人の関係って、こんなに良好だったっけ?


 取り巻き達は常にアリーファに媚びを売って、互いにライバル視していた筈。

 でも、ここでは何故か三人の仲はとても良く、まるで親友のように思える。


 もしかして……私は何か勘違いしていたのかも……?


 もしかしたら、ゲームの中の描写はあくまでプレイヤー視点の偏った情報だったのかもしれない。


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