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ようこそ楽園へ

 人類の進化とは凄まじいものだ。


 人類は驚異的なテクノロジーの進展に成功し、人間は働く必要すらなくなりつつあった。


 2200年。日本は先進国として温暖化問題と少子化問題を完全に解決し、穏やかに生活を送ることができていた。


 ほとんどの仕事はロボットにより担われ、人間はロボットを購入し代わりに仕事へ行かせることで稼ぎを得ていた。


 ロボットは人間に服従し、ほとんどのことを代行してくれる。まったく便利な道具だ。


 穏やかな風が吹く日。それは突然訪れた。


 ――――――――――――――――――――――――――――――


 合格通知


 天霧雫 殿 


 あなたは厳正な審査の結果、特別国家公務員に選ばれました。


 ――――――――――――――――――――――――――――――


 やってきた通知に思わず喜びを隠しきれない。


 1年で10億円稼げると言われている特別国家公務員の試験を突破したのだ。


「やった!これで楽に暮らせるぞ!」


 

 どうして受かったのか正直わからなかったが、嬉しくて嬉しくてそれどころではなかった。


「やっと楽な暮らしができる」



 これだけの大金があれば専門学校へ行った時の莫大な費用をチャラにできる。


 親に楽な暮らしをさせてやれる。


 

 1つ懸念があるとすれば、仕事内容は一般公開されておらず職場に配属されてからわかるということだ。


 

 まぁ国家公務員なんだし、命の危険がある仕事ではないと明言されていたし大丈夫だろう。



 1週間後


 俺は車に乗っていた。何時間乗っているかわからない。山奥へ向かっているようだ。


 これから職場へ送迎されるらしいが、どんな職場なのだろう。


 泊まり込みで仕事があるみたいなのでいっそう気になる。


 しばらくすると、車が停車した。


 すると目の前に現れたのは大きなドーム状の建造物だった。中には中央の方にビルのようなものが見える。


 その前には大きな庭園と何箇所も家のようなものもあった。


「なんですか?この建物は?」

 

 運転手に問いかけるが、返事はない。


「あ、送迎用ロボットだったもんな」


 それにしてもこんな大きな建物がこんな山奥にあったなんて驚きだ。


 ロボットが無言で建物の方へ向かうので慌てて追いかける。


 建物の麓には地下へと通ずる階段があった。


 


 下の方が見えないくらい真っ暗で、長い階段だ。


 地下の薄暗い通路を進むと光がはみ出ている扉の前に来た。




「入室願いマス」


 ロボットはこの部屋に入るように言うと軽くお辞儀をしてそそくさと去っていってしまった。


 


 なんだか不気味な感じもしたが、ゆっくりと扉を開ける。


 そこは明るい学校の教室くらいの広さの部屋だった。




「あ!同期の人ですか?」


 一人の同い歳くらいの少女が話しかけてくる。


 


 すごく美人で、どこか幼い顔つきだ。金髪のストレートロングヘアに小さめのサイドテール。なかなかいいじゃないか。


 


 もう一人も同じくらいの歳の青年だった。メガネをかけていて、背も高くてなんだか賢そうな雰囲気を醸し出している。




「そうみたいですね。よろしくお願いします。」


 俺は2人に挨拶をした。


 


 2人も挨拶をしてくれた。いい人たちそうでなによりだ。




「それじゃ、自己紹介しましょっか!」


 少女が切り出す。




「そうだな。3人揃ったことだしそうするか」


 青年も乗ってくる。


 


 その後特に変わったことは何もなく一人ずつ自己紹介をしていった。


 


 少女は姫川恋羽ひめかわこはね


 モデルをやっていたらしく、仕事に飽きたためこんなところへとやってきたらしい。


 対して倍率は高くなかったのではと思い、少しがっかりした。年収10億なのにみんな食いつかないもんかねぇ。


 


 青年は健崎大祐けんざきだいすけ


 彼は大学へも行っている超エリートらしい。今どき9割以上の人が義務教育で勉強を終わらせるというのに、すごいな。


 勉強漬けの毎日に嫌気が差してこんな仕事を選んだらしい。なんかかっこいいな。


 話を聞いてみると、どうやら3人組で仕事をするみたいだ。2人とも変わっていて、なんだか楽しくなりそうだ。


 自分も自己紹介を終えると、部屋の上部についている大きなモニターが突然明るくなった。


 画面には1体のロボットが映っている。


「これヨリ、業務内容の説明にかかりマス。」


「あなたタチの業務内容はズバリ!被検体の監視デス!」


「被検体?監視?どういうことだ?」


 とっさに聞き返す。


「いいから最後まで聞いてくだサイ。この建物は大きく3つに分断されており。その各エリアABC全てに被検体がいるのデス」




「被験体は生まれたときからずっとこの建物「パノプティコン」で暮らしていマス。」




「一体、何のために?」


 俺が質問するより前に素早く健崎は聞き返す。




「この世の「楽園ユートピア」を作るために必要な実験なのデス」




「楽園……?」


 恋羽も声を漏らす。




「ソウ!人類は長らくロボットとともに生活をしてきまシタ。そこで人類はさらなる利便を追求しようとしまシタ」




「すべてをロボットに任せた永久機関。それが「楽園ユートピア」デ、人間は自由気ままに暮らすことを望んだのデス」




「なるほど。それでそこで生活をする人たちのシミュレーションを監視させようってわけだね」




 健崎はもう目的を見破ってしまったようだ。




「あなたタチは未来の日本、いや世界を担うキワメテ重要な仕事を託されたのデス。励んでくだサイネ」




 その後、俺達は様々なルールや注意事項を聞かされた。それをざっくりまとめてみるとこうだ。




 1 絶対に監視をしていると被験体に気づかれてはいけない。


 2 絶対に外界についての言及はしない。


 3 定期的に監視レポートを提出すること。




 以上を守らなかった場合は重罪だそうだ。


 刑務所送りなんてゴメンだ。


 あと、ここの被検体たちに課せられているルールはたった1つ「皆の楽園でなくてはならない」


 つまるところ、誰かに危害を加えるなと言うこと。よくできたルールだ。


 


 説明を受けた後、消毒をして着替えを済ませると私物の電子機器を没収された後、タブレットのようなものを渡された。


 


このタブレットはメールや電話、それに楽園内でのショッピングにも使えるらしい。




 どこまでも至れり尽くせりな環境に脱帽だ。




 さあ仕事の時間だ。「楽園」とやらを見せてもらおうか。




続く

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