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1 甘いものは、神!

皆さんは、甘い物がお好きですか?


この作品は、スイーツと甘い物が好きな様々な老若男女の短編です。

全十話。

ぜひご一緒に甘い物をご堪能くださいませ。

1.甘い物は、神!


 放課後、私は友達の梨緒りお芽依めいの三人で、学校の近くにあるいつも寄るドーナツショップに来ていた。そこでその日も、私たちはそれぞれ好きなドーナツを食べながらいつものように駄弁っていた。

紗耶香さやかって、いつもそれだよねー」

 黒髪ショートで少し派手目のメイクをした梨緒が私のチョコオールドファッションを見て言った。

「だって、これ好きだもん! そう言う梨緒だって、今日もそのドーナツじゃん!」

 梨緒はフレンチクルーラーを食べている。

私がそう言うと、「あはは」と彼女が笑った。

「ウチもこれ好きだし!」

 それから、梨緒と私は芽依の方を見た。彼女はその日もストロベリードーナツを食べていた。

「あたしもこのドーナツ好きだから」

 茶髪ショートで薄めのメイクをし、ピンク色のカーディガンを着ている芽依はそう言って、にこりと笑った。

 そう。私たちは三人ともドーナツが好きなのである。


「ねえ、あのさ」

 ふと、ストロベリードーナツを食べている芽依が、梨緒と私を見て口を開いた。

「何?」

「どうしたの?」

 梨緒と私が同時に訊いた。

「実はさ、あたしね。好きな人が出来たの」

 それから、芽依が小さな声で言った。

「え?」

 私は驚いた。

「ウソ! マジで?」と、梨緒もびっくりした。

芽依はゆるふわ系の女子で、この三人の中で群を抜いて可愛いと私は思う。梨緒も芽依のことを可愛いとよく言っている。彼女は男子から好かれるタイプの女子であった。

「うん」と、芽依は頷く。

「誰なの?」

 私がそう訊くと、「……香取かとりくん」と、彼女が恥ずかしそうに答えた。

「香取くん?」

 私はそう言った後、すぐに誰かを思い出そうとした。

「香取くんって、あのサッカー部の人?」

 それから、梨緒が思い出したように言った。

「うん、そう」と、芽依が答えた。

 そこで私も香取くんを思い出した。彼は私たちとは別のクラスの男子で、サッカー部に所属していると噂で聞いたことがあった。彼はルックスも良く、他の女子たちからも人気があった。

「でもさ」

それから、梨緒が口を開いた。「香取くんって、今、彼女いないのかな?」

「あー……どうだろう?」

 芽依は呟くように言った。

 私は彼のことを少し考えた後で、口を開いた。

「確か今はいないんじゃなかったかな?」

「そっか。それなら、ワンチャンスあるんじゃない?」

 それから、梨緒がにやりと笑って言った。

「そうかな?」

「うん、梨緒の言う通りだよ」

 私がそう言うと、芽依は一度黙り、何かを思案していた。それからややあって、彼女は私たちの方を見て口を開いた。

「うん。じゃあ、あたし、告白する!」

 彼女はそう言った後、照れ臭そうに笑った。

「よし! 行ってこい‼」と、梨緒が彼女に言った。

「うん、頑張って!」と、私も彼女を鼓舞した。


 その翌日のお昼休みに、私たち三人は香取くんのいる教室へ行った。彼は茶髪の短髪で、顔立ちが整っており、その顔は童顔であった。彼は二、三人の友人たちと窓の辺りでお喋りをしていた。

そこで私は彼を呼ぶと、すぐに私たちのもとへやって来た。それから、私は彼にその日の放課後に芽依から話があるから体育館の裏に来てほしいことを伝えた。すると、彼は「OK!」と言って、私たちの所から離れ、元いた場所に戻った。

 そして放課後、芽依は体育館の裏へ行った。梨緒と私は教室で待機をしていた。

 芽依が教室を出て十分後くらいに、彼女はそこへ戻ってきた。

「どうだった?」

 梨緒が早速、芽依に訊いた。

「あたし、香取くんと付き合うことになったよ!」

 彼女は満面の笑みで言った。

「え? ウソ!?」

 芽依のその言葉に、私は思わず驚いた。

「本当!?」と、梨緒もびっくりしていた。

「本当だよ」と、芽依は嬉しそうに言った。

「おめでとう!」

 私はにこりと笑って言った。

「良かったねー」と、梨緒も笑顔で言った。

「ありがとう」

彼女はそう言った後、「でさ」と口を開いた。

「今日、実はこれから香取くんと一緒に帰ることになったの!」

 芽依がそう言うと、彼が私たちの教室に入ってきた。

「やあ!」

 どうやら彼はさっきから廊下にいたようである。

「香取くん!」

「いたんだ!」

梨緒と私がそう言うと、「うん」と彼は頷いた。その後、彼は「じゃあ、帰ろう」と言って、芽依の手を引っ張った。

「うん……。」

 芽依は彼に手を握られて、恥ずかしそうにしていた。

「あ、二人ともじゃあね」

 それから、芽依がそう言った。

「じゃあね」

 私がそう言うと、芽依と香取くんはそそくさと行ってしまった。

「……まさかだね」

 それから、梨緒が呟くように言った。

「うん。そのまさか、だね」

 私もそう呟いた。


 それから、二週間が経った。

 その日の授業終わり、私は梨緒と芽依と一緒に帰ろうと思っていた。ちょうどその時、私たちの教室に一人の男子がやって来た。

「芽依、一緒に帰ろう!」

 それは香取くんだった。

 彼に呼ばれて、芽依は「うん」と頷いた。

「紗耶香、梨緒、じゃあ、またね」

 彼女はそう言って私たちに手を振った後、彼の所へ行くとすぐに教室を出て行った。

「いいよねー」

 梨緒が羨ましそうに言った。

「そうだね」と、私も呟く。

「ねえ、紗耶香?」

 それから、梨緒が私を見て言った。

「何?」

「もうすぐテストでしょ?」

 梨緒のその言葉で私は思い出す。二週間後に中間テストがあるのだ。

「うん」

「今日、カフェで勉強しない?」

「いいよ」

 それから、私は梨緒と一緒に駅の近くにあるカフェへ向かった。


 カフェに入って、私はアイスティとシフォンケーキを頼んだ。梨緒は、アイスカフェオレとチョコケーキを注文した。

 それから少しして、私たちの頼んだ飲み物とスイーツがやって来た。

 届いてすぐに梨緒はカバンからスマホを取り出し、いつものようにそれらの写真を撮った。私もケーキとドリンクの写真を自分のスマホで撮った。それから、私たちはそれぞれのグラスを鳴らし、乾杯した。私はアイスティを一口飲んだ。梨緒もアイスカフェオレを一口飲む。

 その後、梨緒がチョコレートケーキを一口頬張った。

「うん、おいしい!」

 彼女は嬉しそうな笑顔を見せる。

 私もシフォンケーキを一口食べた。フワフワとした食感がたまらなく美味しかった。

「うん、これも美味しい!」

私がそう言うと、「やっぱ、甘い物って神だよね?」と、ニヤニヤしながら梨緒が言った。

「うん、分かる」

 私もそう言って笑った。

 それから、私たちはケーキを食べながらテスト勉強を開始した。私は英語のワークを進めることにした。梨緒はカバンから数学の教科書とノートを取り出し、教科書の例題を解き始めた。

 しばらくして、そのカフェに二人の女子高生がやって来た。

私は彼女たちの方を見た。制服を見る感じからして、私たちと同じ高校の生徒のようであった。私は彼女たちを見たことがあった。確か別のクラスの子たちだった気がする。ただ彼女たちの名前などは分からなかった。

 彼女たちは席に座るなり、私たちと同じように飲み物とスイーツを注文した。それから、彼女たちは自分たちのカバンを開けて、教科書やノート、筆記用具を取り出した。

「ねえ、隣のクラスの香取くんって知ってる?」

 私と梨緒が勉強に集中していた時、ふと近くに座っていた先ほどの女子高生二人組のうちの一人が口を開いた。

 私は「香取くん」という名前を訊いて、ビックリし思わず彼女たちの方を見ていた。

「うん、知ってる。あのカッコいい人でしょ? サッカー部の?」と、もう一人の女子が言った。

「そう。その彼なんだけどね。噂だと、付き合った色んな女の子たちと遊んでいるらしいんだよ」

 最初に話した女子がそう言った。

 それを聞いて、私は内心ドキリとした。遊ぶ? 一体どういうことなのだろう。

「えー、マジで! ヤバくない?」

「うん。ヤバいよね。そうそう。つい最近、彼がまた別のクラスの子に告白されたらしいよ」

「そうなんだ!」

「そう。多分、その子も彼に遊ばれてるんじゃないのかなぁ……。」

「えー、それは可哀想……。」

「ねー」

「怖いね、香取くんって」

「でしょ? そんな男なら付き合わない方がいいよね」

 彼女たちはそう話しながらそれぞれのケーキを食べていた。

 その後すぐに私は梨緒と目が合った。彼女もその話を聞いていたのだろう。

「ねえ、今の話、本当かな?」

 梨緒が困惑した顔をしてそう訊いた。

「香取くんのことだよね?」

 私がそう言うと、「芽依、大丈夫かな……?」と、彼女が呟くように言った。

 その時、私はテスト勉強どこではなくなってしまった。

 すぐに私は勉強道具をカバンにしまい、残りのシフォンケーキを食べ切った。それから、アイスティも一気に飲み干した。

梨緒も同じように思ったのか、カバンに荷物をまとめ、彼女も残っていたチョコレートケーキを食べ、アイスカフェオレを流し込んだ。それから、私たちは会計を済ませると、すぐにそのカフェを出た。

そのカフェを出て、私は芽依に電話を掛けた。すぐに芽依が電話に出た。

「もしもし?」

『もしもし? 紗耶香? 何?』

「芽依、今どこにいるの?」

『どこって、駅の近くのファミレスにいるけど』

「もしかして、香取くんも一緒?」

『そうだよ。今、一緒にテスト勉強してるよ。ねえ、紗耶香、聞いてよ!』

「え? 何?」

『香取くんに、数学を教えてもらったの! 香取くんって、頭良いみたい!』

 彼女は嬉しそうにそう話した。

「そっか」

 それを聞いて、私はホッとする。

「それは良かったね」

『うん』

「あ、急に連絡してゴメンね。じゃあ、また明日」

 そう言って、私は電話を切った。

「どうだった?」

 それから、梨緒が私にそう訊いた。

「今、芽依、香取くんとファミレスで勉強してるんだって……。」

「そっか。なら、平気か」

「うん。私たち、考えすぎかもね……。」

私は呟くように言った。



 チャイムが鳴った。その日のテストが全て終わった。中間テストの最終日である。

 クラス内が騒がしくなる。テストが終わったことで、皆ホッとしたのだろう。私もそれが終わったことで、フーと息を吐き、安堵していた。

「テスト終わったー」

 梨緒が私の席までやって来てそう言った。それからすぐに芽依もやって来た。

「お疲れ」と、私は二人に声を掛けた。

「二人ともお疲れ~」と、芽依も言った。

 その後すぐに担任が帰りのホームルームを始めた。私たちは一度、席に着いた。

「ねえ、二人ともこの後、暇?」

 ホームルームを終えた後、芽依が私と梨緒の所へやって来て言った。

「うん、暇だけど?」

 私がそう言うと、「ちょっと二人に話したいことがあるの……。」と、彼女が言った。

「何? どうしたの?」

 それから、梨緒が訊いた。

「ここじゃあ、アレだから……。ちょっと二人とも来て!」

 芽依はそう言って、梨緒と私をトイレへ連れて行った。

「何? 話って?」

 今度、私がそう訊くと、芽依はようやく口を開いた。

「実はね……香取くんと別れることにしたの!」

「え?」

 芽依の口から出た言葉は意外なものだった。

「どうして?」

 それから、梨緒がそう訊いた。

「彼とね、馬が合わなかったんだ……。」

 芽依は小さな声で言った。

「そうなんだ」

「うん。あたし、彼と付き合って思ったの。彼ったら、ただ私とヤりたいだけだったみたいなの……。」

 彼女の言葉に、私は口を塞いだ。香取くんがまさかそのような男の子だったとは思っていなかったからだ。梨緒も白目を剥いていた。

 その後すぐに私は、この前梨緒とカフェで勉強していた時に、別のクラスの子たちが彼の噂話をしていたのを思い出した。あれは本当だったのか。

「それはひどいね……。」

 私がそう言うと、「でしょ? あたし、それで冷めちゃって……。」と、芽依は言った。

「そっか」

 そう私が頷くと、「うん。別れて正解だよ!」と、梨緒が言った。

「男って他にもいるでしょ?」

「うん、そうだね」

 芽依は納得したように頷いた。

「ねえ、紗耶香と芽依!」

 それから、梨緒が何かを思い出したように口を開いた。

「ん?」

「何?」

私と芽依がそう言うと、「今から、ドーナツでも食べに行かない?」と、梨緒がニコニコして言った。

「いいねえ!」

 私が賛同すると、「うん、行く行く!」と、芽依も嬉しそうに言った。

「あ、そう言えば、昨日から新作で抹茶のフレンチクルーラーが出てるんだった! ウチ、それ食べよう!」

 梨緒が嬉しそうに言った。

 その後、すぐに私も新作で抹茶のオールドファッションが出ているのを思い出した。

「私も抹茶のやつ食べよう!」

「じゃあ、あたしも今日は新作を食べる!」

 それから、芽依がそう言った。 

「ストロベリーのオールドファッション?」

 私が思い出してそう訊くと、「そう!」と、彼女は言って笑った。

「いいねー。それじゃあ、行こう」

 梨緒がそう言った後、すぐに私たち三人はいつものドーナツショップへ向かった。

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