P60 思いきって切ったところから
初めてお読みになる方へ
この投稿は分岐したもう一つの作品です。
申し訳ないのですが今までの内容を把握するには以下のページで1-57話までお読みになってください。
https://ncode.syosetu.com/n0067gx/
召喚聖女はたくましい ~聖女なんてごめんです~ ナナコロビヤオキ作(作者本人)
じょじょじょ…バツン!
縛ってあった髪を台に置いた
先日 ゴブリンに切られた部分は頭の上部分 なので隠そうと思えばヘアバンドでうまく隠せるものだった
まぁ 前髪増えたね?くらいなもんで
この世界では女性は髪が長いのが普通
だから今まで背中の中央くらいまであった私の髪も残してそのままにしていた
確かにドレスにはその方が似合うしね
残った髪は下半分 アナの懇願により残しておいた髪を自分でばっさりと鋏で刈ってしまったのだ
理由は簡単
コーディア様から自分が意図せず魅了の魔法を使っている事を指摘され それに嫌悪したからだ
私は魔法が面白いし 勉強も沢山した なのでほんの少しだけど 良い魔法と悪い魔法がある事もわかってる
はっきり言うと魅了の術は人の精神に干渉するものだ それはやってはいけない事 少なくとも自分にそんな術をかけられたらと思うだけで身体が怒りに沸き立つ
人の心は自由であると思いたいのだ
理想論ではあるけれど
この世界では髪が短いと女性として見られにくいーならばそれを利用しよう
今まで魅了の術にかかってしまったかもしれない人達の目は醒めるかもしれないし
というわけでコーディア様の毛で
右手用腕輪
ネックレス
アンクレット
を作って どこからも魔力が漏れないように準備した
髪に未練は無い むしろ
おお 軽い 楽だ
なんだか心も軽くなった気がする
よし 新生ムギの始まりだ
ーーーーーーー
日本で言う梅雨というより
ここエイダールでは スコールのような雨が降る季節がある
ただ 降る時間は比較的短い
降ったり止んだりの繰り返しだ
私の借り家である土禁亭は 小さな馬小屋が付いている
馬小屋には瘴特隊の警備の馬が繋がれる
強い雨の中 彼らは怖がる事もない
さぁっと通り雨みたいに止んで 太陽の光が差し込む 瘴特団の馬達は 遊びに行きたいかの様に前脚をカツカツと鳴らす
ーたぶん リッツも出たがってるだろうな
先日ボビトの森にゴブリン浄化をした際に 何をどう分かったのか 置いていかれた事に 不満だったのか しばらくご機嫌が悪かった
ー今日は 休みだけれど 世話しに行こうかな
ストーカー隊に王宮に行く事を伝えておく いい加減護衛は必要ないだろうよ
最近 魔法を使ってだまくらかせば 彼らに気が付かれないで 出かけられるのではと こっそり画策している
王宮馬房にて リッツの顔を見ると やはり太陽の光が浴びたいのか 出たがっている
馬房担当のおじさんに 馬場で乗っても大丈夫な事を確認 早速鞍を付けて 軽く馬場内を回っていく
王宮内では安全が確保されてる為 ストーカー隊は付いてこないのがいい事だ
遠くから「あ!ムギか?」と子供の声が聞こえる クルト王子だ
ギャフン以降 頻度は減ったが彼はよく馬房にやってくる
「こんにちは 殿下」
「おまえ髪の毛どうした!?何があった!!」
「ただのイメチェンですよ 私の国では普通です」
クルト君は唖然としながらも
「そういうものなのか…まるで男みたいだ ああそうだ 殿下って呼ぶな 名前で良いと言ったろう」
うむ 子供故にあっさりとしたものだ
「では クルト様 今日はボール遊びだと 服が汚れますよ」
「別にいい しゃべりに来たし」
「そうですか じゃあお菓子でも食べながら お茶にしましょうか」
「やった!じゃああそこの東屋にいるから 早く来い」
リッツはまだ馬場に居たがったので鞍を外しておく「後で戻るからね」
東屋で持ってきた自分のおやつを広げた
クルト君はウキウキで
「今日は何だ?」
「ホットミルクとパンの耳です」
「パンの耳?あれは捨てる所だろう?」
「パンの耳を侮る勿れですよ 油で揚げて 砂糖で味付けしてあります
私の子供の時の定番おやつでした」
「ムギが言うなら 美味いんだろう よし 食べてみてやる」
この上から目線め
「美味しいでしょ?」
「ほんとだ カリカリしてるけど 中が柔らかい」
「食べすぎて太るから 要注意ですよ」
クルト君 既に2本目モグモグしてるけど
「なぁ ムギはさ 聖女を辞めたいと思わないのか?」モグ
ああ 思うさ めちゃくちゃ思う
「そうですね いろいろ怖い事もありますから でも 辞められませんので」
「怖い事? 騎士が守ってくれるんだろう?」モグモグ
「瘴特隊の皆様が居ても 自分でやらなくてはいけない事もありますから
それに 守られているだけは 性に合わないみたいで」
「おまえ むちゃするんじゃないか」
モグモグモグモグ
ぎく
「この間馬の背に立とうとしてただろ あんなの騎士でも普通はやらない」
モグ
「そそ ソウデスカ?」汗汗
「なぁ 瘴気ってどんなものだ?」
モグモグ
「瘴気ですか えっと 空気が重たくて 色は濃い灰色に見えます 動物が吸いすぎると 意識が無く凶暴になってしまい 攻撃してきます」
「危ないじゃないか!」
食べるの止まった
「そうですよ 危ないです」
「...何で そんな危ない所に お前が行かなきゃ行けないんだろう」
ソウデスネ ナンデデショウネ
「...そういう力があるからですよ クルト様が大きくなられる前には 全部解決できたらいいんですけど」
「いや 僕も大きくなったら 瘴特隊に入る」再びモグモグ ゴクゴク
「王族の方は無理なのでは?」
「いや やるったら やる」
モグモグ 加速
「じゃあ私は クルト様が瘴特隊に入る必要がない様に 次も頑張って行ってきますね」
「行く? 今度はどこへ行くんだ」
モグモグ
「北東部だそうです 遠方なので少しかかりそうみたいですよ」
「...どのくらいで 帰ってくる?」
あ やっと止まった
「さぁ でも1ヵ月はみたらいいって言ってましたね」
「長いじゃないか!」
「そうですねぇ 川で船の移動もあるみたいですし」
「やだ」
「え?」
「行っちゃいやだ」
クルト君は私のベンチ横に来て お腹に抱きつく
「ムギが危ない目にあうのは嫌だ
ムギが居ないのはもっと嫌だ」
…ごめん 反省 怖がらせた
頭を撫でていい子いい子する
「ありがとうございます でも大丈夫ですよ ちゃんと帰ってきますから」
遠くから 殿下ーと呼ぶ声が聞こえる
「また来る」と言ってクルト君は走り出す
ふと机の上を見たら飲み物しかない…
あ、あいつパンの耳残り全部持っていきやがった!
実験的な試みですが この先本編があまりにも甘すぎるため 甘さ半分以下で作りたくなりました。
少し本編と同じ会話などが出てくることもありますが枝分けれするように違う話になっていくかと思います。
話の終わりもどうするかは未定ですが よろしくお付き合いください!
こちらは不定期更新になります
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