表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

エリカ


 ホームルーム中にそれは起こった。


 バシャン。


 教室の床がいきなり抜けたと思った瞬間、透明な水の中に落ちていた。

 水が鼻に入って目の奥がツーンとする。ゴボゴボと私の中の空気が口や鼻から漏れパニックになる。

 苦しい、怖い、何これ?

 水を吸った制服が重い、藻掻いて必死に水面に出ると岸辺に緒方君と武元君と佐々木さんが居た。

 水から頭が出てあたりを見回したら、テレビで見た青の洞窟のようだった。キラキラと水面に反射して洞窟が青く染まっている。


「な、なんなのよ。これ!寒いんだけど!」


 佐々木さんが甲高い声を出して騒ぎ始めている。そっとため息をついた。

 やだなあ面倒臭い人達と一緒だ。

 湖までは大きくないこれは泉?

 なんとか浅瀬まで辿り着いて泉から這い出ようとする。


「あ、加藤さんだ」

「え?あの子もいたの?」

「加藤さん大丈夫?」


 武元君、佐々木さん、緒方君の発言で大体の性格はわかる。緒方君が引っ張り上げてくれた。


「あ、ありがとう。ここって…」

「僕はさっき落ちてきたから良くわからないんだ」


 緒方君はわからないと首を振ってる。

 体が重い。


「これは!落ち人が4人も」


 突然、知らない声が洞窟に響き渡った。


◇◇◇◇


 落ちた場所は、辺境伯が管理している泉だと教えてもらった。

 他のクラスメイトは何処に行ってしまったんだろう。もしかして別の場所に落ちたのか。どうせ落ちるなら仲が良かった遠藤さん達が良かった。


「いやぁ。こんな事も本当にあるんだね」


 ニコニコと笑顔で話しかけてきたのは、この国の第3王子。この人、正直苦手。だって目の奥で私達の事を見下してる。

 佐々木さんはイケメンだと騒いで、頭が幸せな人だなって思う。


「僕はね、たまたま辺境伯のこの地で静養させてもらっていたんだ、そうしたら君達が落ちて来たってわけ」

「あの…僕達帰れるのでしょうか?」

「ん、かなり難しいけど。全く帰れない訳じゃないって聞いたよ」

「本当ですか?!」

「それでね、それを聞くためにも君達にはスキル判定して貰って、職業選んで欲しいんだ。簡単でしょう?」


 たまたま静養ってありえるのかな?

 何が簡単なのかよくわからないけど。

 両親からは、いちいち理屈を捏ねるな。なんてよく叱られるから学校や外なんかだと無口キャラしてるけど。本当は心の中は物凄く色々と突っ込んでる自分。


 2日目の昼、ひとりで廊下にいた王子様に言われた。


「ねぇ君ってさ、何でも他人事にして結構あの子達の事を馬鹿にしてるよね?」

「えっ?」


 突然、王子様に話しかけられたけど内容が酷かった。私達を見下してる人から言われるととても腹が立つ。腹がたったので彼を無視して部屋に戻った。


 こちらの世界に落ちて1週間過ぎ。私は攻撃魔法/火特化のスキルを覚えた。そこからなれる職業で魔法使いになった。

 ノーマルで攻撃魔法を覚えるのは珍しいといわれたけれど、佐々木さん達のようにレアであればもっと楽だったのにと思っている。


 彼らは勇者に聖女に賢者の職業についた。

 彼らだけで、この国からお願いされた浄化の旅へ行けばいいのに、クラスメイトだからという理由で旅に連れ出された。


 優越感に浸りたいのかな。迷惑すぎる。

 終始、旅についていけない素振りをしていたらやっと追い出される事になった。

 旅に出てまだ2日目の朝なのに、佐々木さんはカリカリしていた。男子に思った程チヤホヤされなくて苛ついてたもんな。


 いきなり知らない女性に、私を押し付けようとする彼等にドン引きする。

 とても綺麗で凜とした雰囲気の人で、明らかにガルフさんの目の色が変わった。


 あっさりと振られて、内心ザマァ見ろなんて思ってたけど。



「じゃあ、エリカここでお別れだ」

「え?ガルフさん何を言ってるんですか?」

「ん?ここでお別れって話さ」

「そんな、私ひとりじゃ…」

「そうかな?君、実力を隠していたよね。久しぶりの勇者だと思って着いてきたけど、全然あれじゃすぐに死んじゃうさ」

「それを分かって、彼等と別れて私と来たんですか?」

「まぁそれもあるけど、辺境伯からまた新しい落ち人が来たって連絡が着たからね。確認しに戻るのさ」

「なら、私も一緒に」

「断るよ。僕もそんなに暇じゃないからね。大丈夫この村の村長にでも落ち人だと言えば面倒見てくれるさ。それと君のその他力本願な癖直した方がいいと思うよ。それじゃあね」


 次の瞬間ガルフさんは消えていた。

 転移の魔法なのかもしれない。

 私はその場に呆然と立ち尽くすだけだった。


 何これ、あんまりだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ