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勇者一行


 やっとエリカが居なくなると思ったのに、よりによって第3王子のガルフが付いて行っちゃって本当に最悪なんだけど。

 あの通りすがりの女が、少しばかり綺麗だからって!あの女が素直にエリカを連れて行かないからこんな目にあってるんだし。イライラしてザクザクと土を掘る手にも力が入る。


 しっかし、こんな村あったかなあ。


 ガルフとエリカが居なくなって、魔獣討伐も簡単に済ませなくなった、昨日は賢者の哲夫が怪我をした。

 魔獣はなんとか倒せたけど、かなり濃い霧が出て、緒方君が哲夫に肩を貸し私達はお互い離れない様に手を繋いで歩いていた。

 

 気がついたらこの村についた。


 一晩泊めて貰い、暫くこの村で哲夫の怪我を治るまで居ようと決めた。村人に伝えると、女の子が私を見て。


「ママ、あの人聖女だよね?怪我治せないの?」

「………」

「アハハ、彼女は聖女だけど治癒1なんだよ」


 緒方君が無神経に私のスキルをバラした。

 仕方ないよね、スキル使うと疲れるし。半日は昏倒してしまう。その間に置いていかれたら嫌だし。

 緒方君がこの村にいる間はお金を稼ぎたいと言い出した。


「村長さん、何か仕事ありませんか?」

「まぁ、あるにはあるが…」


 そんな訳で私と緒方君は、今、墓掘りをしている。何でも殺された遺体が3体あるとか。

 棺が荒らされないようにかなり深く掘るように言われた。スコップは重いし、あーしんどい。爪に土入って真っ黒になるし、本当最悪。


 朝から掘って、ようやく夕方になる頃に村長さんが来て、まぁこんなもんだろと言った。

 手には何か握られている。


 えっ?石?嘘でしょ。なんで石なんて握ってるの?

 慌てて這い出そうとしても、見上げる程の深さだ。


「ここはな、魔獣人族の村だよ。勇者様達よ」

「昨日お前らが殺した魔獣はな、儂の息子だ。魔獣人って知らんだろ?」

「僕の姉さんも殺した」

「本当、お前ら人間は害虫より質が悪い」


 ヤメて!痛い!救けて!

 隣の穴からは緒方君が叫んでいる。

 どんどんと石がぶつけられ、頭を腕で庇っていたら、とうとう骨が折れて頭が無防備になった。

 はっと影が出来て見上げれば大きな石を持ち上げている女と目が合った。その目凄い暗い目をしていた。


「息子を返せ!」


 凄まじい衝撃と痛みが頭を貫き、反射で私は治癒を自分に掛けた、そのまま暗い闇の中に昏倒する。


 昏睡から目覚めると土の中だった。藻掻いて、藻掻いて、藻掻き苦しむ、苦しくて涙がでる。目は土が入り込み痛くて開けられない。土を滅茶苦茶に掘り爪は剥がれる。


 酷い!生き埋めにされていた。あいつらは死んだと思って埋めたんだ。死に物狂いで掘りすすめる、上に少しでも上に。


 奇跡か、私の右手が外に出た。


 やっとの思いで這い出してみたら、そこは荒野だった。村の痕跡すらない。


「緒方君!哲夫!」


 はっと横を見れば真新しい墓が2つ。私は夢中で緒方君がいた墓の土を転がっていたスコップを使って掘り返す。


 やっと掘り起こしたそこには、恐怖と絶望で不死者に成り果てたモノがいた。

 緒方君だった成れの果てはガラス玉のような目をして両手を振り上げ………。


 パンッ。

 軽快な破裂音と頭を潰された聖女が這い出た穴にゆっくり落ちて。そのまま不死者はフラフラと歩き出し霧の中に消えて行った。




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