プロローグ
「寂しくなるけど、ミッファなら大丈夫!」
「ミッファの事忘れないから!」
「王都でも治癒してね」
「手紙書いて!」
「元気でやるのよー」
「応援してるから、頑張ってね」
村の皆が別れの挨拶をしてくる。別れなのに、彼ら彼女らは物凄くいい笑顔をしている。
え、なんかおかしくない?
◇◇◇◇
泉の真ん中に立っていた、私は笹書美穂20歳。仕事に向かう途中だったのに、ぼんやり泉に立ち尽くしていた。
いつの間にか知らないおばちゃんが隣にいた。ニコニコしてよく来たねーなんて声をかけてくるからびっくりする。
そのまま村に連れてこられて、大きな水晶を渡された。水晶を両手で持つと水晶はうっすら白くなる。
「あら!あんたは治癒の素質があるようだね」
なんて言われたよ。治癒って何さ。
ねぇこれ、なんてファンタジー?
◇◇◇◇
今さっき、治癒のレベルが5になった。
『パンパカパーン』
いきなり馬鹿みたいなファンファーレが村に鳴り響く。あちこちから歓声があがり村人が集まってきた。何、何、急に何なの怖いんですけど?
「え?何これ」
「ミッファおめでとう!」
「ミッファ凄いーもうレベル達成じゃん!」
「これで王都に行けるね!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
急に私を囲んで輪になった皆からお祝いされまくった。ひと段落すると、今度は別れの言葉をかけてくる。なんで?
「寂しくなるけど、ミッファなら大丈夫!」
「ミッファの事忘れないから!」
「王都でも治癒してね」
「手紙書いて!」
「元気でやるのよー」
「応援してるから、頑張ってね」
私、ミッファじゃなくて美穂なんだけど。
ぽんっと肩に手が置かれ振り返ると、村長がそれはいい笑顔で私に言った。
「いやーミッファさん。おめでとう、おめでとう!」
「え?村長さん?」
「最初に覚えたスキルのレベルが5になったら王都へ行けるんだよ、王都に行ったら必ずギルド登録してくれよ。はい、これどうぞ!」
「え?王都?今から?」
もう、昼は過ぎていて日本なら15時のおやつタイムってとこか、今から何処かに行くとしたら野宿になるよ。
「勿論だよ!さぁ出立して!」
村長から、黒の肩掛けバッグを渡された。
「中に説明書入ってるから読むといいよ、さぁ行った行った」
突然、出ていけと言われ呆然としていると、あっという間に村の外まで追い払われた。
村の門が閉まる寸前に村長は私に言う。
「君はレアでもないし、早く独り立ちして貰えて助かったよ。君がいると次の人が来ないからね。それじゃぁ元気でな!」
目と鼻の先で村の門がバタンと閉められた。
え?
はぁーーーー?
何なの一体、私何かしたっていうの?