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異世界を買ってコンプリート! ~異世界オンライン~ 【読み切り版】

作者: しいたけ

 『20年住めばタダで家が貰えます!』


 そんな謳い文句に釣られてやってきた某田舎町。何も無い田舎に住み始めて三年経ったが未だに不自由は無い。ネットはあるしコンビニもあるしスーパーもあるしゲーセンもある。強いて言えば少々退屈なくらいだろう……。


 今時オンラインショップで何でも買える時代だ。多少の田舎でも何てことは無いさ。今日も日課のネットサーフィンに勤しむとしよう♪


  ポチポチ


「……ん?」


 不意に開けた初めて見るオンラインショップ。


「……異世界オンライン?」


 シンプルなデザインのサイトには日用品や食べ物、本や奴隷―――


「―――奴隷!?」


 僕は『奴隷』と書かれた人の形をしたアイコンを押した途端、突如現れたページを見て驚いた。なんとそこには様々な女性や男性に値段が付けられており、コスプレのような耳や髪型をした人まで様々と載っていたのだ!


「こ、これは……もしかして御風俗的な何か?」


 しかもよく見ると値段も幅広く、ざっと見ても上は1000000円から、下は100円までとぶっ飛んでいる!!


「……確かに僕もそろそろ彼女が欲しい年頃だ。出来れば30までには結婚したい」


 僕はまじまじとリストを見渡す。


「……あ」


 目に留まるロリ巨乳。ちょっと破けた黒いドレスに折れた角のコスプレ! 僕の超ドストレートだ!


 しかも値段は3500円!! 安い!!


「なになに……『洗濯料理何でも出来ます』だって」


 独り暮らしに一物の寂しさを覚えていた僕は、下半身に忠実な(シモべ)として気が付けばカードで支払いを済ませていた。


「よし!お風呂に入って綺麗にしよう!」


  ゴトンッ


 ふと奇妙な音が鳴り、僕は立ち上がり後ろを振り向く…………するとそこにはいつの間にか大きなプレゼント箱が一つ置いてあった。


 箱には『お買い上げありがとうございます(*'ω'*)』と書かれており、更に下には『返品不可(ゝω・)』と記されている。


  ガタガタ!

  ガタガタ!


「おわっ!」


 プレゼント箱が急にガタガタと震えだし僕は恐怖のあまり思わずキッチンへ逃げてしまった。もしかしてさっき買った怪しいオンラインショップの……


  バリッ!

  バリバリ!!


「ぴえぇ……!」


 プレゼント箱から手が突き出てビリビリと破かれる。そして姿を現したのは、先程購入したロリ巨乳の可愛らしい女性だった!



「アヘール王国よりまいりました、666代元魔王のリリィです。以後よろしくお願いします…………」


 少女らしい声色でペコリと頭を下げた女性は僕の顔を見たまま固まっている。


「あの……どちら様で?」

「アヘール王国よりまいりました、666代元魔王のリリィです。以後よろしくお願いします……」


 いや違うんだ。僕が聞きたいのはそこじゃない。


「君は何処から来たんだい?」

「【異世界オンライン】を通じてまいりました。これからは貴方が私の主人となります……どうかお手柔らかに」


 いやぁ、最近のデリヘル?出張ヘルス?レンタル彼女?とやらは随分と凝ってるね。僕ビックリだよ。折れた角の部分とか本物っぽいしね。


「料理が出来るって書いてあったけど、早速作って貰ってもいいかな?」

「……はい」


「冷蔵庫の中の物は好きに使っていいよ♪」

「はい」


 僕は彼女が出来た気分でウキウキとイスに座りリリィの料理を心待ちにした。母親以外の手料理なんて生まれてこの方食べたこと無いもんね。


  ガラッ


 野菜室からニンジンやピーマンを取り出すリリィ。一体何を作るのか楽しみだ。


  バギッ!


 何やら白いプラスチックの壊れた板と謎の機械が冷蔵庫から現れた。


「ああ! 確かに『冷蔵庫の中の物』って言ったけど冷蔵庫壊しちゃダメだよ!!」

「え? すみません。『冷蔵庫』とやらは初めてなので……」


「ええっ!? だって料理が出来るって書いてあったじゃん!?」

「いつもは魔法でやってますので……」


「あ、なんだ。それなら早く言ってよ。その魔法とやらで……ってそんな訳あるかーい!」

「…………」


 僕はリリィちゃんの肩にノリツッコミを入れた。ここまで凝った設定?は関心だが冷蔵庫凄えぶっ壊れたぞ? 大丈夫かな?


「ご主人さま。料理魔法の許可を願います」

「いいよー。許可しまーす♪」


 段々とノリに乗ってきた僕。可愛い女の子との慣れない会話にテンションが爆上げだ!


「料理魔法を発動します……」


 リリィちゃんがキラリと目を光らせると、ポンと目の前に美味しそうなパンが現れた。


「ほいぃ!? どっから出て来たの!?」

「魔法です。この世界には魔法が存在しないのですか?」


「あるわけないじゃん。ココは科学と機械が支配する第三惑星だよ? 魔法なんて夢のような話……」

「……そうですか」


 リリィはパンを僕に手渡した。僕はそれを受け取り一口齧る。中から出て来たゲル状の物体については聞かない事にしよう。もう口の中に入っちゃったからね…………。


  カサカサ……


 二人の目の前をコックローチ先輩が横切った。ヤバい、真面に片づけもしてないからいつの間にか住み着いてやがったぞ……。


「ギエェェェ!!!!」


 コックローチ先輩を見て悲鳴を上げるリリィちゃん。


「虫は苦手です! ご主人さま『爆発魔法』の許可を!!」

「ははは、スリッパで叩けば大丈夫だよ。はい―――」


  バチン!


  ドガァァン!!!!


 手渡したスリッパでリリィちゃんが渾身の一撃をお見舞いすると、何故か床が爆発し床下が丸見えになった。しかしコックローチ先輩ははぐれ〇タルの如く素早くそれを躱していた。


「僕の家が…………」


 初めて見る床下にしみじみと悲しみが込み上げた。これ直せるのかな?


「ご主人さま『窒息魔法』の許可を!!」

「へ? ああ、スプレーの事かな? はいどうぞ」


 僕は残量確認を兼ねてコックローチ先輩に向かって軽く発射した。するとコックローチ先輩の動きが少し鈍くなる……が僕の動きも鈍くなり息が出来なくなってきた……


(うぐ……く、苦じい…………)


 ジタバタと藻掻くコックローチ先輩。僕も隣でジタバタと暴く藻掻く。このまま二人で謎の耐久レースかな?


「リリィちゃん……ストップ……!」

「はい、ご主人さま」


「ブハァ!!」


 息が出来るようになり生きる喜びを全身で噛み締めた僕は、この時同じ苦しみを味わったコックローチ先輩と何やら意思が通じた気がした。カサカサと動き回るコックローチ先輩が何だか愛おしい。


「リリィちゃん……急に息が出来なくなったけど何かした?」

「空間から気体を消滅しました」


「……もしかして、本当に魔法?」

「何度も申し上げている通り魔法です」


「その折れた角も?」

「恥ずかしながら本物でございます」


「異世界オンラインってもしかして……」

「はい、本当に異世界から取り寄せてございます……」


「奴隷?」

「はい、私は奴隷でございます。今はご主人様の物でございます」


「3500円?」

「異世界は星の数ほどございます。いくら魔王でも私は弱い部類。故に値段もリーズナブルでございます」


「…………ヤバくない?」

「…………(ニコッ)」


 僕は身の危険を感じ(今更だが)一歩引いた。コックローチ先輩は無邪気に走り回り時に飛んでいる。


「ご主人様、埒があきませんので『すぺーすぼるかのん』の許可を……」

「……ごめん、一応聞いても良いかな?」


「ちょっとした星なら三回壊してもお釣りがくる威力の魔法です」

「頼むからやめてね?」


 この広大な宇宙船地球号を『ちょっとした』扱いされるのは心外だが、ぶっ壊されるのはもっと心外だ。僕は左手に(スリッパ)を右手に(スプレー)を持ち、苦楽を共にしたコックローチ先輩に別れを告げた。


  スパァン!!


(さらばコックローチ先輩……)


 コックローチ先輩の亡骸を外に放り出し、とりあえず爆ぜた床を眺めた。


「リリィちゃん、コレ直せないかな?」

「修復魔法を発動します」


 スッと指さし光が漏れると、あっという間に床は元通りに戻った。ついでにワックスがかかった様にピカピカ光っている。


「うわお! 凄い凄い!」


 リリィちゃんに拍手を送り、僕はゲルが流れ出したパンをもう一口齧った。


「ねえ! 僕にも魔法使えるかな!?」

「異世界オンラインでお買い求め頂ければ可能かと……」


 流石異世界のオンラインショップ! 魔法も買えるなんて凄いね!


 僕は異世界オンラインにアクセスし、魔法のページを検索した。


「おお! 色々あるぞ!!」


 お手軽な魔法からヤバめの魔法まで色取り取りだが、とりあえず初心者向けの物を探すとしよう……。


「うーん、と……」


 初心者向けのページを開き、セールの文字に目が留まる。『初めての魔法使セット』と書かれた詰め合わせがなんと今なら1500円!


 ファイヤーボール(MP消費4)

 エレクトロサンダー(MP消費3)

 アイスニードル(MP消費5)


 なんと三属性も使えて大変お得!


「買う買う♪」


 僕はポチポチとカード決済を済ませた。これで魔法が使えると思うとワクワクが止まらない!


「ご主人様から魔法の気配を察知しました。もう使えると思われます」

「ホント!? やった!!」


 僕は空咳をし、発声に備えた。まずはエレクトロサンダーをやらを撃ってみよう!


「いくぞ……エレクトロサンダー!!」


 ちょっと渋めの声で格好良く声を出してみる。


  パチッ


「いてっ」


 指先から勢い良くデカイ静電気が飛び出した。思ってたのとかなり違うんですけど……。


「なんかショボくない?」

「初級ですので……」


 ま、気を取り直して次行こう! また空咳一つかまし、より格好良く発声する構えを見せる。


「いくぜ……ファイヤーボール!!」



 ……

 …………?


「あれ? 何も出ないよ?」


 掌をフラフラと振るも火の玉はおろか、ライターレベルの火すら出ない。


「ご主人様……MP切れです」

「…………」


 レベル1の魔法使いより酷ぇや…………

読んで頂きましてありがとうございました!


沢山の感想や評価お待ちしております!

もしかしたら連載……するかも。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは是非連載していただきたいですね!!w とにかく話をいくらでも広げられますからね! 国すらも売ってるらしいですから、もう何でもアリですね!w
[良い点] ええーっ! これ俄然連載いけるでしょ! リリィちゃんとあははでうふふな異世界(現実世界)恋愛しようよ! しゅごいー! きのこ、おそろしいこ!
[一言] いえいえ。3500円で魔法のパン食べさせてもらえれば、 お買い得な気が。 床も直ったしー。 冷蔵庫も修復魔法で直りますよね。うんきっとそうだよ。 しかし、コックローチ先輩は発見数の20倍の法…
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