7話 断片的な夢
ガタゴトと馬車が揺れる。しかし、アリシアはそんなことに気付きもしなかった。
早く国につかないかな、という考えが頭の中を占めていた。
ーーー
夕暮れ時、アリシアと商人は目的地である『自然の国』についていた。
商人は門番と何やら話をしていた。
多分、滞在期間や何をしにきたのかを聞いているのだろう。
いずれアリシア1人で門番と話をするようになるのだろう。
しかし、アリシアは上の空で、ただただ奥に見える山を見ていた。
現在は初夏なので、山は深い緑で覆われていた。
「さて、今日はもう日も暮れてるし、宿を探そうか。」
いつの間にか検問は終わっていた。
国の中に入り、宿を見つけ2部屋取った。
何故2部屋もとったのかと聞くと
「君は女の子だろ?私と同じ部屋は嫌だろうし、プライベートスペースも欲しいだろうしね。」
とのこと。
ありがたいのでお言葉に甘えさせて貰った。
アリシアは部屋に入り1人になると、備え付けのベットに背中を預ける形で倒れ込んだ。
この数日の間に、自分の生活に大きな変わりがあったので疲れたのだろう。
ベットで1人考え事をしていた。
しばらくすると、部屋にベルの音が響いた。
考え事をしているうちに食事の時間になったらしく、係りの人が食事を運んできてくれた。
食事をとり、その日はすぐに寝た。
ーーー
ぼんやりとした意識の中、アリシアは自分が誰か他の人になっていることに気づいた。
あぁ、きっとこれは夢だな。
もしかして、自分が誰かの人生でものぞいているのかな?
夢の中の他人……もとい自分は、原稿用紙とにらめっこしていた。
字はかすれて読めないが、そばに見える手が動いていないことから、いきずまっているのだろうと思った。
夢の中、その手は一切動くことがなかった。
ーーー
目覚めると、あたりはまだ薄暗かった。
一体自分は何時に起きたのだろうと思い、メティアスと呼ばれる機械の電源をつけた。
起動と共に、自身の目の前にホログラムが現れた。
ホログラムには A.M 4:28 と表示されている。
早く起きすぎたかな、だなんて、普段は考えないであろうことを考えた。
しんと静まり返った部屋で、アリシアはここ最近見る変な夢のことを考えていた。
(一体何なんだろう?小説なんかである予知夢……。)
予知夢だったら自分の視点じゃないのだろうか?そもそも何を意味しているのだろうか?
わけのわからない夢ばかりだ。
最初は自分とは違う女の子の夢。
その夢の中では、自分以外に4人の男女がいた。
彼女らは故郷の現状を変えようとしていたみたいだった。
次は性別すらもわからない夢。
しかし、夢の中の人はだんだん元気をなくしていた。
どうしてそうなってしまったのかすらわからない夢だ。
最後に、今日見た夢。
夢の中の自分はどうやら小説家らしい。
しかし、何にそこまで悩んでいるのか、ペンを握っている手は1ミリたりとも動かなかった。
どれも断片的な部分しか写っておらず、どれにも共通点は見つからない。
自分には関係のないことなのだろうが、どうにも気になる。
商人が部屋を訪れるまで、アリシアはずっと物思いに更けていた。