6話 新しい国への道
夢を見た。
一人の人が何かをしている夢だ。
その人はとても楽しそうに何かに打ち込んでいた。
しかし、だんだんと元気が無くなっていった。
何があったのか、そこまではわからなかったが、見ているだけで辛くなった。
目が覚めると、太陽はもう登っていた。
時計を見てみると、時刻は7時。
周りを見回すと、商人は出発するための準備をしていた。
「おはよう。もうすぐ出発するから準備をして。後、明日からはもっと早く起きなさい。そうじゃなきゃこれから先はやっていけないよ。」
どうやら寝坊してしまったらしい。
(もっと早く起きなきゃやっていけないなんて、ちょっと盛りすぎなんじゃ…。)
商人の仕事や、普通朝何時に起きるかなどアリシアは知らない。
ここであーだこーだいってめんどくさいことになるのも嫌なので、素直に『わかった。』とだけいっておいた。
ーーー
「これから行く国はどう言うところなの?」
自分の国から出たことのないアリシアは興味津々で訪ねた。
「あぁ、これから行く国はとても自然が豊かなところだよ。秋なんかは紅葉が美しいと評判でね。その国には暗澹の国から逃げ出した子供もいるらしい。」
「本当!?」
「あぁ。その子供はとても有名な作家になったんだそうだ。君も一度は見たことがあるんじゃないかな?」
『秋になると紅葉が美しい』その言葉だけでもワクワクする。
早くカメラが欲しい。
カメラさえあれば、その美しい風景を閉じ込めることができ、いつでも見れる。
映像作家の仕事をするにしろ、今から行く国の紅葉は写真に収めたい。
それに、自分のように国から逃げ出した人にもあってみたかった。
その人は作家。
(一体どんな本を書いているんだろう?自分も見たことがあるのかな?)
「その人の本はなんて言うの?」
「代表作は確か、『夢の花』だったかな。他にも色々あるけど、一番有名なのはそれだよ。」
読んだことこそなかったが、アリシアはその話を知っていた。
(国についたらその本を読んでみたい。)
「あの、その本を読んでみたいんですが…。」
「あぁ、今回の商品取引は1日で終わるし、滞在期間は3日だから読む時間はあるよ。」
「ありがとうございます!」
「他にも色々読んでみるといい。本は読んでいると幸せな気持ちになるしね。」
今日さえ乗り切ってしまえばあとは自由みたいだ。
読みたい本もいっぱい読めるし、初めて行く国の自然も堪能できる。
カメラがあれば一番いいのだが、あいにく今はないため、自分の記憶の中にしっかり刻み込んでおくことにしよう。
国に着くまでの時間、アリシアは国についたらすることを考えていた。