5話 自分の考え
「どうだかね。」
肩をすくめ、商人はアリシアに言った。
どうやら子供の戯言だと思われたらしい。
「まあ君はまだ12歳なんだろ?そのうち分かってくるさ。」
頭をクシャリと撫でられたアリシア。
アリシアも自分の言葉を軽く流されたことを不満に思っているらしい。
「次の国に着くまでは馬車の荷台でゆっくりしていなさい。もうそろそろ夕暮れだ。商人の朝は早いし寝る準備でもしていなさい。」
一時的に馬車を止められ、荷台の方に追いやられた。
荷台に入るとすぐに馬車が動き出した。
しばらくガタゴトと揺れていたが、星が出てきた頃に馬車は止まった。
商人は馬を休ませ焚き火を焚いた。
商人は夕食としてシチューを作ってくれた。
遅い時間に食事をすることはなかったので、少し楽しかった。
もしも今も家に止まっていたら、こんなことをした瞬間にあーだこーだ言われてしまったんだろうか。
ーーー
夜、商人は食事が終わるとさっさと寝てしまった。
私は初めて外で眠るということに興奮して、寝ようにも寝ることができなかった。
満点の星空はとても綺麗で、心の中を洗い流してくれるような気もした。
この星空はどこからきたんどろう。
アリシアは急にそんなことを考え始めた。もはや哲学の域に達しているような気がする。
アリシアが考えついた答えはこうであった。
星々は人々の願いや欲望なのではないだろうか?
明るく光っている星は純粋な心を持った子供たちの大きな夢で、くすんだ光を出す星々は大人たちの欲望なのだろう。
純粋な気持ちや、子供の頃に考えることを全て無くしてしまったら、星々の光はだんだん弱くくすんでいってしまうのだろう。
もしもこの疑問を母国の人に言ったら
『そんなことを考えずに成績をより良くするために時間を使え』
とでも言われるのだろうか。
大人が全て残酷な生き物だとは思わないが、私が今まで会ってきた大人はろくな人がいなかった。
一番強く輝いている星は、一体誰の夢なんだろうか。
これが大人の夢なのだとしたら、その人はきっとさらなる高みを目指して、今も現実でキラキラと輝いているのだろう。
「私もそうなりたいなぁ。」
自分もそうなるためには夢を追い続けなければ!
ちょっと自分の考えを否定されたり受け入れてもらえなかったくらいでめげてたらそんなのできない!
膨大な宇宙に広がる無数の星のことを考えてるうちにポジティブ思考になったアリシアは、折れずに自分自身を貫こうと考えた。
夜も更けてきたとき、アリシアはやっと眠りについた。
明日は初めての国で初めて商人の仕事を手伝う。
不安もありながら期待もある夜だった。
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