3話 国境を越えて
[翌日]
「…。」
(最近は変な夢を見るな…。)
[一階にて]
「おはよう!今日はあなたの誕生日ね!」
「おはよう。」
いつもより幾分か機嫌が良さそうに見える。
(まぁ、今日で厄介払いか、私に良い職につかせて自分は楽しようとか考えてるんだろうなぁ。)
アリシアはそんなことを考えていた。
いくら自分の親でも、自分のやりたいことを否定してきたからには、彼女の敵でしかなかったのだ。
「あぁ!楽しみ!あなたの能力は珍しいからきっと良い職につけるわよ!」
(そっちか…。)
自分は今日で厄介払いされる確率の方が高いと見積もっていたので、良い職につかされるのは確率が低いと思っていたのだ。
「あなたが働いてくれれば私も休めるわ!……せっかく引き取ってあげたんだから恩返しぐらいしなさいよね。」
そう、アリシアはもともと引き取られたのだ。
しかし、別に産みの親が息を引き取ったからではない、目の前の女性が将来楽をしたいがために無理やり引き取ったのだ。
アリシアの産みの親は他の国にいるらしい。
(無理やり引き取ったくせに何を言うか。)
正直に言って、アリシアは目の前の女性に呆れていたが、顔を見るのもこれで最後だと思うといつもより心が軽かった。
[その晩]
育ての親たちから祝ってもらったが、口を開けばやれ楽させてだの、やれ国のトップにまで行けるようにしろだの言われた。
あまりの強欲さに反吐が出そうなのを我慢し、人々が寝静まるのを待った…
[翌日 A.M3時]
静まり返った町の中で、少女が歩いていた。
(これでこの街とも会うことはないのかな…。)
少しさみしい気もしたが、自分の夢を叶えるためには切り捨てないといけないものもあると割り切って、彼女は薄暗い闇の中に消えていった。
あたりに光が差し込み始めた頃、彼女は国境を越えるところだった。
もともと彼女が住んでいた街は国境から近かったのだ。
国境を越える時に、彼女は家に帰されないか心配したが、身分証明書で彼女が12歳だとわかるとすんなり通してくれた。
(意外とすんなり行けるものなんだなぁ。)
内心この国は大丈夫なのか心配した彼女だった。
国境を越え、しばらく歩いていると、ある商人と出会った。
商人は言った。
「こんなところであなたのような少女がなにをしているんです?」
少女は言った。
「自分の夢のために親の元から出てきたんです。」
商人は驚いた顔をしていたが、すぐに笑顔になり。
「ならば私のとこへ来なさい、私は色々な国を回っているのです。
あなたに商売の方法を教えたり、あなたが疑問に思うことなどにも少しは答えることができるでしょう。」
商売の方法を知っていれば、お金が尽きて植えることはありませんしね。
と商人は言った。
その商人はとても有名な人で、悪い人ではないことがわかっていた。
彼女は考えた上で、色々な国を回ることは自分のしてみたいことに含まれている。
こんな偶然滅多に起こり得ない、ここは甘えさせてもらおうと。
「よろしくお願いします。」