20話 友達
機械の国到着早々、私は気分を害してしまい、あまり外に出たくないと思い、部屋にこもっていた。
なぜこんな国ができたのか、アリシアにはわからなかった。
とにかくこんな国から一刻も早く出たいと、ただそれを切に願っていた。
人々は働いたり、家事をしたりするとき『めんどくさい』や『やりたくない』などと言っているが、実際何もやることがなくなったとき『あなたがめんどくさいと言っていたことならあるが、やりますか?』と聞かれたら多分『やりたい!』と言うのではないだろうか。
それに、ある程度ストレスがないとむしろ短命になるだとか、そんなことが書いてある論文を見たことがある。
とにかく、何度も何度も同じ作業をすることが嫌なだけであって、本当は家事だって好きだったりするのではないだろうか?
(よくのうのうと生きてられるな……。)
アリシアは、機械に家事から仕事まで全てを任せて、自分は映画鑑賞しているだけだなんて耐えられない。
そんなことを1年と続けていたら、そのうち動きたくなってくる。
(何を言っても通じないんだろうけど……それにしても寂しいな。)
今まで商人と行動していたが、ここにきて初めて寂しさを感じた。
家にいた頃は言わずもがな1人の時間が長かったし、学校では友達など作れるような状況じゃなかった。
(同い年の友達ってどんなんなんだろう?作ったことないし……でも、きっと楽しいんだろうなぁ…。)
一度孤独を味わうと、じくじくと身を蝕んでいくかのように哀愁とでも言うべき気持ちが心を支配し始める。
こんな時だからこそはかどるものもあるのかもしれないが、あいにく自分はそれを知らない。
ただ悲しい、何だか心細いと不安になるだけなのだ。
(ちょっとくらい年齢が離れててもいいからできないかなぁ…友達。)
「友達……。」
ちょっとした好奇心からなのか、ふとその言葉を口に出してみた。
何だかそれだけでも心が不思議な高揚感を得た気持ちになる。
はたから見たら奇妙なことをしている少女だろう、しかし、アリシアは至って真剣にこれをやっているのだからおかしくてたまらない。
環境がひどかったせいだろう、友達がいるのが普通などとは微量も思っていない彼女は一般的に見たら,"可哀想"の部類になるのかもしれないが、多分、彼女はそれすら疑問に思うのではないだろうか?
『そもそも可哀想となるのはどれほどの範囲からなのか?定義はあるんだろうか?』
とはいえ、これを実際口に出したとすれば一般的な大人たち、もしかしたら子供たちからも『そんなのどうでもいい。』や『何言ってるの?』と言われてしまうだろうから、彼女は思っても口には出さない。
この気持ちが共有できる相手が欲しい。今日のアリシアはやけに感傷的だった。




