19話 機械の国
その後法律の国を出るまで、アリシアは本を読み、時には空想と考察を繰り返し、またある時は阿智に赴き人々の話を聞いていた。
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次の国へ移動する最中、アリシアはまた商人から分厚いマニュアル本を渡され、荷台に追いやられた。
暗澹の国から大宇ことができたのは商人のおかげだし、とても感謝している。とはいえ、一度読んだだけで十分な本を押し付けてくるのはどうかと思うのだ。
またしても読んでいるふりをしながら、自身が持ってきた本を読んでいた。
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『機械の国』、新しく来た国の名前だ。
今回の滞在期間は前回より短く、1週間ほどだった。
名前からして、機会がたくさんある工業の発展した国なのかと、アリシアは考えていたが、実際は違った。
機械に全てを任せた国だったのだ。
工業なんかはもちろんのこと、カウンセラーや介護士、看護師なんかも機会が行なっていて、人間はただそこにいるだけでいい国だったのだ。
無論、商人が取引する相手も機械、商売自体は比較的早く終わるものの、この国での技術力なんかを報告用紙にまとめて商人組合に送らなければならないらしい。
宿に着くと、そこにも機械しかいなかった。
部屋に荷物を降ろし、街中を散歩すると、あらかじめ商人に伝え外へ出た。
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街中には生身の人間がたくさんいた。
しかし、彼らは商店街に行くことなく、夜なんかはイルミネーションでキラキラと光っていそうな、所詮ネオン街、歓楽街と呼ばれるような場所に一直線で入って行く。
しかも、彼女らはみなゴテゴテに飾りを身につけ、自身の権威を見せびらかすかのようにしている。
中には化粧を厚塗りしているものもいる。ようは『厚化粧オバケ』だ。
アリシアはネオン街に入っていった。
すると入り口にはいなかったが、自身の足で立つこともできないのか、四つの車輪がついた物に乗って移動するものまでいた。
その機械の一部はガラスだったので、興味心から中の人を横目でのぞいてみた。
機械に守られた人はでっぷりと太っていた。
あまりにびっくりして、マリシアは急いで宿まで戻っていった。
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ゆっくりと呼吸をし、落ち着いたところで
(こんなの、機械だけでいいじゃないか!)
人間がいたところで、全ての仕事を機械に任せているのだから、いっそのこと機械だけの国にしてしまってもいいと思えるほどだった。
人はそううまくできていないのだから、ある程度のことは残しておかないといけないのだろうかと、アリシアは考えを巡らせた。




