11話 作家との対面
A.M 6:02
結局、昨晩眠りにつけたのは深夜で、十分な睡眠時間を取ることもできず、おまけにはさ早くに目覚めてしまった。
まだぼやける目をこすってベットから這い出た。その際、布団ではなかったため、ベットから落ちて少し体が痛かった。
洗面所に行き、歯磨きをするついでに顔を洗う。目がさっぱりしたところで着替えを済ませてしまう。
ぐぅ〜とお腹の音がなるが、朝食まではまだ時間がある。
何をして時間を潰そうかと考えていると、ふと机の上に置いてある小説に目がついた。
題名は『フームス』
外国語で、意味は煙。題名通り、表紙には灰色の煙が書かれている。
夢の花といいフームスといい、この作者の本は大抵シンプルな表紙であることが多い。
とにかく時間が来るまではこの本を読もうと思い、表紙をめくった。
ーーー
トントン、ガチャと扉が開く音が聞こえてきた。
本から目を離し、朝食を持ってきたお婆さんにお礼を言い、朝食をいただく。
今日の朝食は鮭のレモン焼き、玉子焼き、お漬物、味噌汁、白米だった。
出来たてなのだろうか、まだ暖かい。自分の家にいた頃は和食を食べる機会なんてほとんどなかったため、もっといろんな料理を食べてみたいな、と思った。
その後、商人が部屋部屋を訪れ、昨日のように荷物積みを手伝い広場まで行った。
ーーー
特に変わったこともなく、午前中の商売は終わった。
午後はいよいよ待ちに待った作者との対面だ。
「連絡はして置いたよ。彼女は今日の午後は特に予定が入っていないらしいからゆっくりしてくるといい。」
「ありがとう。今日はちょんと連絡してから帰る。」
アリシアがつぶやくと、商人はきょとんとしたあと、穏やかな笑顔を迎えた。
アリシアはなんだか恥ずかしくなって、顔を赤く染めて今日着ていたパーカーのフードを被った。
「じゃあ私は行ってくる。」
「わかった。」
商人は北のほうへ向かい、アリシアは西のほうへ向かっていった。
10分くらい歩いただろうか、目の前には一軒の家しか見えない。
庭があって、普通の家より少し大きな家だ。
家のチャイムを鳴らして少し待つと
『はい。』
「えっと……アリシアと申します。商人の所の…えっと…弟子?です。」
『………あぁ!あそこの子ですか!ちょっと待っててくださいね。すぐ出ます。』
数十秒ほど待つと、目の前のドアが開いて、銀髪でセミロングの髪を持った女の人が出てきた。
美しい人だったのでちょっとびっくりした。
「どうぞ。上がって。」
笑顔で迎え入れられ、アリシアはちょっと緊張しながら家の中に入っていった。




