1話 なりたいもの、なりたくないもの
第0章 開幕
普通ってなんだろう?『〜してはいけない』とか『〜なんだから我慢しなさい!』だの『人に迷惑をかけるな!』
日常で使われているこれらの言葉、『なんでしてはいけないの?』って思ったことを口に出そうもんなら『それが普通!』だなんて言われちゃうかも。
本当にそれは普通なのかな?国によっては普通じゃないかも。
これはそんな考えを持った女の子の話。
第1章 暗澹の国
「…つまんないな。」
暗澹の国、今となってはこう呼ばれているけど、元々はもっと違う名前だったらしい。
(まぁ、この国にはお似合いな名前ね。)
「アリシア!部屋にこもってないで降りてらっしゃい!」
「はーい。」
[1階にて]
「はぁ…あなたはいつまで夢を見てるの!いい加減に現実を見なさい。あなたは12歳になるんだから。」
この国では12歳で義務教育は終わり。その後も進学する人はするけど…
「あなたの能力だったら動物看護師になれるわよ?……映像作家なんてやめたらどう?」
そう、私は映像作家になりたいのだ。
世界中を旅して綺麗な風景を撮りそれを動画にして売るという仕事だ。
それに、私の能力だったら動物たちからも情報を得る事ができる。
「それは私が決める事だから…それに、私はこんな国に閉じこもって居たくない。他の国を見たいの。」
「はぁ…あなたは昔から変わった子だわ、『なんで嫌なことを仕事にしないといけないの?』だなんて、そんなの当たり前でしょ!」
「ごめんなさい…誕生日までには将来のことについて考えるよ。」
「道を誤らないで頂戴。ここ最近は仕事が忙しいというのに…。」
「わかったよ…」
[家から離れた丘の上にて]
「諦めるわけないのにな。」
夢を諦めるわけがなかった。世界中を旅するのは私の目標でもあったのだ。
(そもそも当たり前ってなんなんだろう?)
何度考えてもゴールの見えない疑問
「はぁ…結局、この国を出て行かなきゃ無理か…。」
どうしようもないことをどうにかすることはできない。
ゴールの見えない疑問を考えないようにして、私は少しの眠りについた。
この国が暗澹の国なんて呼ばれ始めたのは、この国の人たちは嫌なことを仕事にしていて、いつでも暗い雰囲気を漂わせている。
この国の人たちは、生まれながらに持った能力を、嫌な仕事のために使っているのだ。
そんな大人にはなりたくない。
私は普通に囚われたくないのだ、色々な考えを聞いてみたい。
その為にも映像作家となってこの国を出たいと思っている。