第5話 覇という名の国 (1)
(続き)
「姫どうされたのですか……?」
副将の隆盛。立ち止まり沈黙していた、私が気になったのか?
慌てて、駆け寄ってきたよ。呆然としていた私だから、気になったのであろう……
だから私は、部下の隆盛に告げたよ……
「ん……? いや、何もない。そろそろ帰ろうか? 殿が城で待ってるからな……」
すると彼女は、何も変わった様子の無い私に安徳したのか?
「そうですね……余り遅いと、心配しますね……」
そう明るい告げてくれたよ……
だから私はね、隆盛共々部下達に下知を飛ばしたよ!
我が城、我が街に帰る指示を━━
「よーし!帰るかー!皆前進、馬の進軍速度を上げろー!一気に街まで戻るぞー!」
馬に鞭を入れた私━━
愛する、あの人が待っている城へと向かうわ━━
よく考えてみるとあの人……
私がいないと、何が何やら解らず、不安でいるかもしれないの……お城の中で……
だから私……その事を思い出すとね……
鞭に力が入るわ……不安でいるあの人の顔が、脳裏に浮かぶし……
そんな訳だから、慌てて帰るはね……あの人が待つ城へとね……
━━そう思うと、いてもたっても、いられなくなり。更に愛馬に鞭を入れ!
━━そして愛する、主人がいる城へと駆け抜けて行くの、私はね……
◇◇◇◇◇
(本文)
僕の目の前で可憐に━━そして艶やかに舞い踊る。蝶のような彼女……
その美しい容姿と舞いは、幻想の世界へ僕を誘う《いざなう》……
そう、それはまるでね。極楽浄土か桃源郷……
そんな、昔々の物語の中に出てくるような天女のような、女性だよ……
だから、僕。そんな彼女の神憑り的な、美しさと妖艶さに、酔い吸い込まれ━━目を離せないでいるの……
かの英雄達が美女の舞い酔いしれたとは、物語などの話では良く聞く話だけど。本当にそうだねと、自負してしまうよ……
そう思う僕だけど……?
その後は僕……自分自身にそんな資格などあるのかなぁ〜?
と、思ってしまったよ。だってさぁ、僕。そんな英雄達のような、知、勇、武等持ち合わせていないし……
でもね僕の奥さま達は、それを皆揃え持つ英雄達のような女性だから。僕……
何もしなくても良いみたい……
だからね今、奥さまの一人。貂嬋の舞いに酔いしれているの僕は……
ダークエルフの彼女だけど。リアルの貂嬋よりも、僕の奥さまの方が、妖艶で美しいと思うよ。
こちらの世界……テレビ、アニメ、映画……その他、マンガやラノベはないけれど。こちらに来てから、毎日のように奥さま達の舞いを見ては、酔いしれている僕なの……
特に今四人もいる奥さま達の中でも、貂嬋の舞いは特別に上手だよ……それは正に舞い姫……
その名に相応し彼女だね……
服装の方も天女のような、デザインだから尚更さら、天女と区別が出来ないほどだよ!
そこに目掛けてダークエルフの女性……正にファンタジー!
女神さまだと、過言ではないぐらい美しいよ!
そんな美しい、奥さまの舞いに見とれている。僕だよ……
そんな、幻想の世界へと僕を誘い、舞い━━弦楽器や笛等から流れてくる音楽……
それを下記消す声が聞こえてくるね……!?
その声はとても清んだ声の女性だよ。どうも僕を探しているみたいだね……?
何か粗相があったかな僕? そんな事を考えていると?
「殿?殿?殿ー?何処ですか……?」
殿と呼ぶ声僕、直ぐに反応したよ!
「ん……ここだよ、張〜! ここにいるよ〜!」
するとね、筆頭奥さま。それはもう御機嫌斜め……かんかんに怒っているよ!
「もう、殿……何をしているのですか? 今日は定評がある日ですよ……それに貂嬋……貴方も一緒にいたのなら、注意して連れて来なさい、殿を……」