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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界の証明

作者: 夢入カロン

ワシは今、牢屋にいる。釈放されることはないじゃろう。

なんでこんなことになったのか? 犯罪を犯したからに決まっておろう!! そうでなければこんなとこにはおらん!!

薄暗い、寒いところでただ、その日を迎えなければならんのだから、憂鬱になりそうじゃ。


なぜ、このワシが捕まったのか? 理由は"大量殺人と人体錬成"という、この世界の法に触れることをしていたからじゃ。そのおかげでワシは死刑になってしもうた。でも、後悔はしておらん。

ワシはワシの信念にしたがってやっただけじゃ、他の誰がなんと言おうが、法律に裁かれようが関係ないわ!!


昔から死んだ人の魂がどこに向かっていくのか、転生はあるのか? という疑問があってな。だから、魔法学の輪廻転生の証明を、錬金術の禁忌とされる人体錬成から、解きたかっただけなのじゃ。

殺人はけっして快楽のためにやったわけじゃないぞ!! 自殺志願の者だけを殺すようにしてたからな。無駄に命をなくすより、役立って死んでもらったのだから、彼らには感謝しておる。


魔法学の輪廻転生では『魂は異世界へ向かい転生する』という仮説がある。それを証明するにはその異世界で調べる必要があるのじゃが……いかんせん、そんな(すべ)はない。行けたとしても誰が誰として転生したのかがわからん。

現在できるのは魂を可視化をすることのみ、それでも死んだ魂は、肉体から離れては息を吹きかけたように消えるがの。


そこで、人体錬成をし死んだ魂が戻るかという実験もやってみたのじゃ。

人体錬成は『死者を蘇えさせること、魂を再構成させ新しい魂を作ることができる』という仮説での。しかし、これは人間倫理に反するとし禁忌とされ、立証までされてないのじゃ。


人体錬成ができれば『魂が戻るなら、魂は別の場所にいた』ということが言えないかの? 異世界と言わずとも、天国や地獄というワンクッション置かれた世界もあると仮説できるじゃろう。


実験では魂は戻ることはなかった。(しかばね)は屍でしかなかったというのが、研究の結論じゃ。

ワシは結果にそむき、飽きずに繰り返したのじゃ。……納得がいかないからのぉ。

数十年実験し、犠牲になった命が千人を越える頃、ワシは警察に捕まった。


法律はワシを"死刑"と下し、こんな場所にこの老体を押し込めた。処刑されるその日がくるまで、ここからは出られない。



「200番。死刑執行だ、出ろ」


看守の若い兄ちゃんに言われるがまま、数年ぶりにここから出られた。

……もう、何年もろくに歩いてないせいかまともに歩けん。そんなワシの様子を見て、兄ちゃんはワシに肩を貸してくれた。何年ぶりに優しくされたじゃろうか……。


処刑台にワシは、看守に付き添われたどり着くことができた。処刑方法は首吊り、ロープの所までワシは階段をのぼる。

13段、この数は忘れないじゃろう。


首にロープの輪を通す。これでもう、ワシの人生は終わる。


「200番。最期に言うことは?」


「これがワシの最後の実験じゃ!! 必ず、成功させてやるぞ!!」


この日が来たらそういうつもりじゃった。最後までワシは諦めておらん!!




――息苦しい。それが最後のここでの記憶じゃ。


「タカノリ~朝よ、早く起きなさい!!」


「う、うん」


ワシは異世界で転生し、もう6年が経つ。ここではタカノリとして暮らしておる。仮説は本当じゃ。ワシの実験は成功したのじゃ!!

この世界での生活は前の世界と比べ、苦ではないし大差ない。しかし唯一、違うことがあるのじゃ。


"科学というものが発達した世界"


魔法というものがない世界。当然、呪文や杖、空飛ぶほうきもない。真新しいものがそれらを補っておる。

炎を出すにはライターやガスコンロ、水は蛇口を捻れば出てくる。移動には車、電車、飛行機がある。

そうじゃ、テレビとか言う動く絵が娯楽としてあったりする。ワシのお気に入りの番組は『シップ』、朝食を食べながら見るにはちょうどいい番組じゃ。好きなコーナーは"街角突撃インタビュー"じゃ。それに出ている女子アナがワシ好み、名前はなんて書いてあるかわからんがな。

平日休みならこの後チャンネルを変えて『モウニングバーバー』も見るぞ。


……話がそれたの。とにかく、ワシがこの世界でやりたいことがある。

今度は科学者として、あの世界が有ることを立証する。そしてあの世界でこの世界があり、転生はあると立証してやるのじゃ。

だから、今は勉学に勤しんでおる。中々面白い内容じゃ。


それとな、あの世界では出来なかった友達というものを、小学校という場所で作ることができた。入学式に歌った歌のように100人友達を作ってやろうかの。



ここは楽しい世界じゃ。

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