死にたいなんて───。
【Twitter企画25作目】
私は首を切りたいとは思わない。でも、手首なら切ってもいいと思う。
少しずつ手首に近づくカッターを他人事のように眺めながら私はそう思った。
でも、死にたいとは思わない。
ちゃんと切ったら自分で手当てするんだ。私はそう思ってた。
やがて手首に触れたカッターの刃先は私の薄い皮膚を脳に伝う痛みと共に少しずつ抉りながら私の内側に干渉してくる。
別にストレスが溜まってる訳じゃない。ただ『切りたくなった』だけ。ただそれだけ。
新鮮な私の内側に辿り着いた刃先は途端に私の意思とは関係なく、私への干渉をやめてしまった。
傷口から血が流れる。少ない私の血液。なんで?もっとしないとダメなのに。
やだ。やだ。もう、やだ。
もう──。
「──死にたい。」
私の声はいつのまにか溢れていた。
『嘘だ』
誰かの声が聞こえた。聞き覚えのある声が聞こえた。
いつだったか。私は昔、自転車で転んでしまったことがあった。私はその時、自転車を練習しようと無機質なコンクリートの上で気合いを入れて漕いでいた。
でも、それは当時の私にはとてもできるようなことではなかった。練習と言って、補助輪を外した自転車はそれまでの常識とはまったく違うおかしな乗り物だった。
ハンドルがぶれて、私は転んだ。
膝から血が出たのを覚えている。擦れて、ズボンが破れ、膝からは大量の血液がドクドクと流れていた。
そんなことは当時の私にとっては大事だった。もちろん泣いた。
どうすればいいのかまったくわからず、ただただ泣いた。
その時も私は誰かの声を聞いたのだ。
私は声のした方へと首を回した
『嘘だよね?』
私はその時、初めて彼の顔を見た。
あのときとは変わってしまったが、それでもその顔はあの誰かによく似ていた。
「だ、、れ?」
誰だろう。彼の名前はなんだっただろう。
彼は左手のカッターの刃をしまいながら言った。
『僕の名前は────』
私は手首の血液なんて気にすることなく、彼を見ていた。
彼は再び私に問いかける。
『嘘だよね?』
私はもう、なにも言えなかった。私の目から何か水のようなものが流れていく。
この気持ちはなんだろう。なんで私は泣いているんだろう。
彼は私の涙をそっと拭いて、言った。
『本当の気持ちはを教えてよ』
私の気持ち。
私は静かにうなずきながら答えた。
「嘘」
彼はそれを聞いて笑った。
ども。
なんとなーく最近忙しいと勘違いしそうなミーケんです。
今回の短編はすこし暗い感じにしてみました。
どうでしょうか?
僕的には暗い気がするのですが、、、。
まぁ、僕以上の闇を抱えた方々からしたら「まだまだだ!」と言われてしまうかもですが。
では!また次の機会にどーぞ!