ゲーマーな神様
無性別神様モノではありません。ネタに書いていたもので神様チックだから此方へ……。
一人で唸りながらノートに書き込みを続ける。
社会人にまでなって何をしてるんだと云われるだろうが、人の趣味には口を出す奴が間違っている。
これは中学から続けてきた俺のライフワークだ。文句は言わせん。休みの日には好きなように過ごしたい。
そもそもこの世にあるゲームはビジュアルだなんだとゲーム要素ではない部分で勝負しようとか姑息過ぎる。
大容量サーバーが人工生態コンピューターを利用するようになってから凄まじい処理が可能になったのはわかる。人間の脳波を利用してバーチャルゲームを楽しめるようになったのも凄い事だ。
だがな、ストーリーなんて焼きまわしのようになって久しいし、これなら伝説の家庭用ゲーム機の竜の冒険とか深遠の迷宮とかレトロゲームの方が楽しいだろうと思う。まあそのリバイバル作品がバーチャルで楽しめるから悪い事ばっかりではないんだけどな。
それよりも魔術師の物語にあるような過酷なゲームとまでは言わないけどシステムをもっと見直してよりリアルに近づいたゲームを作った方がいいだろう。なんでいつまでも職業が固定だったり、HPバーが見えるようなゲームばっかりなんだよ。ある意味初期のゲームからまったく進歩してないだろうが。
やっぱりステータスは全て見えなくて、習得には訓練だったりスキルの熟練によって強さが徐々に増えていく、レベル方式なんてのがあるからやりこみが少ないんだ。一日24時間やり込めるゲームが欲しい!
「おお、君もそう思うよね」
「え?」
「だから、やっぱりもっと革新的なゲームがあればいいよなって思ってるんだろ」
「いやそうだけど、お前誰だよ」
「ああ、すまないね、こんな身なりなんだがこれでも娯楽の神様やってるんだ」
目の前に現れた少年は自分を神だと名乗る奇妙な奴だった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「それで自称神様(笑い)がどうしたんだ」
「酷いな……この扱い故に移転計画もでるのも納得というものか……」
「なんだって」
ちょっと落ち込んだ様子が鬱陶しいのでついつい口が悪くなる。
しかし、突然現れたってのを考えれば普通の人間じゃあないよな。
じゃなきゃ俺が白昼夢をみるほど精神が病んできたってことだ。
「いやこっちの話だ、まあ神様と言って信じて貰えない程に力がないのは事実だからな」
意外に腰が低いのか……ふむ、神様ってのが本当だとしたら、なんていうか不憫なもんだな。
信じてない俺が言うなって? 仕方がないだろうに、神様の知り合いなんていねえよ。
目の前の奴は除いてな。
「いや、まあ人の部屋に突然現れた事から考えりゃ人間ではないと思ったけど、見た目少年だし、怖くないし、なんつーか不審者ではあるけど、怖くないっていうか」
「それもこれもお主らの信心がたらぬせないのだがな!?」
逆切れか! あるがままの事を述べただけなのに信心が足らないとか言われても困るぜおい。
だって不審者じゃん、突然現れた謎な部分除いたら。ねえ?
「いきなり八つ当たりかよ」
「神というのはな、信心が力の源なんだぞ!、それをこの国のもの達ときたらいくら時が経ち科学文明が広まったからと言って参拝するのは正月とよくて夏祭りや秋祭りのみ、一部の信心深い者を除けば自分の都合の悪いときだけ神頼みだ。その上年がら年中異郷の神のいべんとに精をだしよってからに、そんなに聖夜に子作りに励みたいかぁ!」
ハァハァと興奮気味の少年、危ないから其れ位で簡便して欲しい。
判るよ、そのあたりは激しく同意しておくよ。だからって辞められないけどな!
「まあ、困った時の神頼みってのは悪いなとは思わなくもないけど、言われても実際神様拝んでどうだこうだと言われたりしてもお葬式は仏教が多いだろうしそういう文化だから仕方が無いんじゃないか?」
一応正論というか疑問もぶつけてみれば神様ってのを信じる事が出来るかも……
なんて思ったけど激しい主張が帰ってきた。
「それが問題なんじゃ!神界は今やしゃったー街にも似た侘しさなんだぞ!、たかだか100年も経たぬうちに西洋にかぶれよってからに、仏教とはな、既に1000年程前に話しがついていたんだ」
た、確かに歴史があるよねー。
聖徳太子云々だっけか、詳しくしらんが蘇我と物部の争いだった……あれ? 本当に話し合いできたのか。
「だけどそんな事を俺に言われてもな」
「いや、先ほどのお主の考え……実は娯楽の神である我も持っていてな」
「なに、まさかの同士が娯楽の神だと!?」
この神(瞬間に認定)は同士だった。
「それこそこれでも貝合わせから存在するように歴史を持つ我と同等の見識に至ったお主だからこそ目をつけたんだ、力を貸して欲しい」
目の付け所が良いじゃないか!
俺を選んだ事は後悔させないぜ……。
「まさか俺の考えたゲームができるとかそういうイベントが強制発生とか」
「実はな、信心を獲得するのに異世界へ有望な若者に赴いて貰おうと思っておってな」
「ちょっとまて、なんでゲームの話しが突然に異世界トリップ物になるんだよ」
「まあ話しは最後まで聞いて欲しい」
真剣な話なら最後まで聞こうじゃないか、オレの為にな!
「構わんが……」
「うむ、先にも述べたように我らの生存はその信心に支えられているのじゃ」
「お参りに来る人が多ければそれだけ存在が確定するとかそういうことか」
「まあ似たようなもんだが、神様を畏れ敬ってもらう存在でな、これまで天候だとか安全を見守っていたりしたのだが、今の世界は科学技術が発達しすぎててな、正直な話交通の安全とか言われても困るのだ。居眠り運転なんてしようものにどうやって加護があると思う。不注意でスリップしたり事故を起こしてとか多少の神通力でなんとか出来る限界など超えている。なのに都合の良い時だけお参りだといって己の欲望だけを告げられてもな……」
オウ、なんというか仰るとおりで困るわー。でも災害とかってどうなん……って聞きにくいな。
「な、なんだ、大変なんだな」
「そこでな、異世界に我らが引っ越そうという第二次高天原計画と言うものが提案されたんだが」
ちょ! 第二次ってなんぞ! てか居なくなったらやばくない?
「神様が居なくなるって大丈夫なのか」
「我らも生きていかねばならぬ」
「いやいや、流石に不味いだろう」
「まあな、それもあって、何とかしようと我が考えたのが遊戯によって異世界を旅をさせて信心を集めさせるという思案の末だと思って欲しい」
どうやら俺の思ってた以上の事態に巻き込まれたようだ。
やってやろうじゃないか、でも遊戯で信心を深めさせるって……難しい事考えるなあおい。
「この計画は日本の神様中心で推進してるから、ちょっと引きこもりな神様だとかまで力を貸してくれるからやりたい放題だぞ!?」
いいのか、神様がそれでいいのか。だけど生き死にという存在という問題に直結してるから仕方ないのか。
任せろよ! 普通のゲームじゃ信心なんて獲得できないぜ。
「じゃあ術とかつかってさ、魂だけを異世界というか設定した世界の中で動かしたりも可能か?」
「うむ、プログラム次第で可能じゃろうな」
「じゃあいける、これまでのゲームで何が問題だったか……それはリアリティの欠如だ」
バーチャルがどれだけ進もうが所詮はバーチャルなんだ。実際に肉体を動かしてってなれば話は違う。
日本のゲーマーがないて喜ぶぞ、あとはそれが信心に繋がるかどうかってことだろ。
神社スタイルに限らないなら和洋折衷のスタイルにして神殿をつくってそこでお祈りをさせるとかってのもありだな、信仰心によって術とか技に違いが出るとか悪心になれば罰もありとかな。
敵を倒して経験地でレベルアップするんじゃなくてもっと地味に徐々に強くなっていくとかスキルってのは補助装置だけに留めて自分の行動とか詠唱でできないとな、上級者になれば無詠唱も可能とか剣も自分の動き次第でダメージが変われば違うだろう。
タイトルは創世天地開闢物語―神々の祝福―でいこう。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
それからの一年、自称神様達と一緒になってゲームが出来上がった。
テストプレイも済ませた俺は現在現地の専門スタッフとして神様の使徒というか見習いやってる。
順調にゲームも売れて数百年振りに信心が集まりまくってるらしい。
時折新規シナリオとかを考えながら突発的に発表されるこのゲームは永遠に終わらないだろう。
最近考えてるのは輪廻先をこの世界にしてしまえという話だ。
第二次高天原移住計画の内容を流用させてもらえば可能だろう。
楽しみになってきたぜー!
「なあ遊戯担当の神様」
「何かな」
「なんで俺だったんだ」
ちょっと何時も不思議に思ってた事、どうして俺だったんだろう。
「フフフ、面白そうな奴だと思っただけさ、遊戯の神がそれを外せるわけが無いだろう」
ククク、そうか、単純な理由だったんだな。よし、これからも楽しむぜ、其れが一番だろうからな!