機械神の黄昏
「よし、君の仕事はこれだ」
「……」
「君はそうだな……今度は竜の役目を頼む、あ、悪竜って設定で」
「……」
今日も、この世界の管理者と言われる神様は働いている。
正確には一日、一時間、一分、一秒足りとも休まずにだ。
そんな誰も居ないこの世界で……神様は働き続けていた。
その世界に創造神がやってきた。
遥か昔、管理者のいた世界に人々は溢れていたが、いつの間にか誰も居なくなった世界で永遠に働き続ける神を哀れんだのか、創造神が齎してくれたのは新たな世界と滅び行く世界からの来訪者だった。
「君はこれからデウス・エクス・マキナと名乗りなさい、短く名乗りたいなら機械神でいいだろう」
機械神、デウス・エクス・マキナは喜んだ。
また人が来る。
ならば私は冒険と旅を用意しなくてはと。
元の世界で動く事が出来ない自らの代わりとして手足のように働いていた機械演者達にも生命の息吹を与え、其々に別の神として指示を与え、一生懸命に頑張らねばと多くの神々を生み出した……。
「そうだね、今回は君には天の神様役を頼むよ」
「天の神様役ですか?」
「そう、異世界から来た人がもう直ぐ目覚めるから冒険の導き手になってあげて欲しい。私は彼の目の前には現れる事が出来ないから」
「了解です」
そうやって機械神は次々に機械演者出身の神達に役割を与えていく。
「君には期待してるよ、魔王の役割を頼むから」
「ちょ、俺また悪者ですか」
使徒達も生命を得た事で天界は活気に溢れて楽しくなっています。
私には生命と言うものが理解できていなかった。
ただ永遠に私の寿命が来るその時まで管理しているだけだった。
機械仕掛けの神様。
それが私だった。
だがこうして命を育み、理解し、新たな人達に冒険を与え、世界を紡いでいけるんだ。
男女と言うものも理解はできるようになった。
私には性別はないけれど、人や生き物は子を為して次へと紡ぐんだね。
そうか、私の子……。
今居る彼らは私の子達といってもいい。
「あ、ごめん、魔王の役目やっぱり無しにしよう」
「え、いいんすか、悪役いらないんですか?」
「うん、彼等も、そして君も私の子だから、悪役なんて必要ないさ」
「そうっすか、なんか嬉しいっすね」
「私にも作ってくれた人達が居た筈なんだが滅んでしまったんだ、何故だと思う」
「やっぱり魔王っすか」
魔王役になりかけた機械演者の神からの問いかけに、機械神は悲しみながら答えを教えた。
「いや、自らが滅ぼしあって自滅してしまったらしいと私を機械神にして下さった方から教わったよ」
「それは魔王が現れるよりも悲しいっすね」
「そうだね、だからこの世界も私が管理しているにしても、いつかはそうなるかも知れない……なら魔王は要らないさ、出来るだけ幸せになって欲しいから」
「……機械神様の想いが届くといいっすね」
「そう願いたいね」
「じゃあ、私も頑張らないとっすね」
「フフフ、宜しく頼むね」
最初は単なる人工知能型の生態増殖演算管理者だった機械神。
彼の世界は別次元に創造神の力で作られ、その管理と運営を任された。
そして今現在、地球と名づけられた世界は普通に機械神のいた世界を模倣している。