表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

ノースとグラトンは絶対に許さない

なんとなーく余命もといタイムリミットが分かった気がする。

これは今すぐダイナミックに転んで足の骨を折ったりすれば余命が延びたりしないかな?


あ、でも逃げる方法も無くなるわ。

しかも荷物扱いになって担がれたりした場合もっと早く魔族の土地に着くかもしれない。


八方塞だねこれは。

魔法に目覚めるしか無い。

今すぐ誰かに魔法をご教示賜る事はできませんかね?

1週間の内になんとかしないと私の人生終わりそうな予感がする。


弟に勧められたどの本でも旅の初めにこんなに死ぬ死ぬ思ってる主人公居なかったわ。

逆に殺す殺すならいた気がするけど、死んでからの復讐はちょっと遅いから。


森は目に見えるのに歩いても中々近付かない。

このまま不思議な力が働いて森に辿り着けずに私を殺す事を諦める展開は無い?

「グラトンもう少しペースを…」

ノース止めろペースが上がれば私の死が近付く!

「落としてくれませんか」

な、なんだと!?

良く見るとノースの息が若干上がっている。

もしやこれは…

「はぁ!? ……ノース様いくらなんでも体力無さ過ぎやしませんか?」

ほう、上位関係はグラトンよりノースが上か…。


じゃなくてノース本当に体力無いな!

こう見えて私は学生時代にバスケしてたから体力は結構あるんですよ。

というかそもそもまだ壁外に出てから2時間も経ってない。


ペースもノース以外は息を切らすどころか汗一つ掻いてない程度。

それに風は涼しいし太陽も軽く傾いてて日光もそれほど強くなく地面もアスファルトとか石畳じゃなくて草地だから地表も熱くないし歩いてても結構快適なのに…。


「……私は普段教会から離れる事が無いんです。 長距離の移動は馬車を使いますし…」

こんな状態じゃ笑顔も痩せ我慢にしか見えない。

いい加減その胡散臭い笑顔の仮面外せば良いのに。


ま、笑顔じゃ無くなっても疲労は変わんないけどね!!


これは私の寿命延びるんじゃないですか? やったね!

「グラトン、ノース様の為にいったん休憩しよう」

「……仕方ねぇな」

この雰囲気、チータムとグラトンは同僚とかですかね?

あと不明な上位関係は無表情がどの位置なのかだけど、会話にも混ざらず名前も呼ばれずずっと最後尾についてるだけだから3人と面識があるのかもわからないんだよなぁ。


ちょっと先に丁度良い木陰があると言ってそこまでチータムが走って行った。

足元しか見ずに歩いていたけど目線を上げればテレビで見た事のある立派なハルニレっぽい木がしげった枝を大きく広げて立っていた。

遠くからでも分かるほど広い木陰は10人ぐらいが楽々納まる大きさがありそうだし木漏れ日が良い感じに見える。 草原の真っ只中というこのシチュエーションだけ見ればピクニックに最適だと思うけど残念ながらこの状況で辿り着いても寛げるほど私は図太くない。


木の下に到着すると麻袋のような質感の1人分の大きさの敷き物が敷かれていて、ノースがそこに崩れるように座り込むとチータムが水の入った器を差し出した。

どうやら皮袋からわざわざ移したらしい。 甲斐甲斐しいな…。


私もちょっと喉が渇いたけど水が欲しいって言って分けてくれるだろうか?

いや魔族の土地まで歩かせる気があるなら最低限の飲食物はくれると信じたい…。


とりあえずノースの左斜め前に距離を2mほど取って座り足を伸ばした。

木に凭れたかったけど既にノースが陣取ってるしその横に座るなんて冗談でも嫌だ。

距離をとろうと木の裏に周ろうとすれば絶対に剣士のどっちかが牽制するだろうし態々確かめたくも無い。


ノースの横にチータムが控えて私とノースの間…若干ノース寄りにグラトンが座った。


…………そして何故か無表情が密着する勢いで私の横に座った件について。


これは見張り? 私見張ってるの? 見張られてる?

手を伸ばしたら繋げちゃうねなんて笑い事にできないぐらいすっごい威圧を感じるんだけど!?

頬にじりじりと何かが刺さってる気がするけど横目で見ても視線は全然こっちに向いてない。

意識だけこっちに向けてるの!? 無表情の気で私の頬にストロー専用の穴が空きそうだよ!!

グラトンの露骨な殺気より今の無表情の発する気の方が数倍怖い!


休憩のはずなのに歩いてる時より色んなものの消耗が激しい気がするっていうか絶対消耗してる。


「勇者さん」

うおっ!?

いきなりノースに話しかけられ不本意にも私はびくっとなった。


振り向くと人心地ひとごこちついた様子のノースがこっちを見ている。

「……何でしょうか」

「貴女魔法について聞いてから全く言葉を発していませんが、何かを企んでいる様に見えて不気味なんです。 言いたい事もしくは聞きたい事は無いんですか?」


何たる言い草!!

あれだけお前に教える事など何も無いオーラで人を牽制しておきながらいけしゃあしゃあと言いやがって!

「無いなんて筈は有り得ませんよね。 どうぞ遠慮せず聞いてください」

その顔凄い腹立つわ~!!


「聞いたら教えて頂けるんですか?」

「教えられる事ならば」

私の聞きたい事の大半が教えられない事に違いない…。

まあ聞くだけタダならどの辺りがセーフラインなのか確かめてみるか?

「じゃあ…この人の名前は?」

横に座る無表情をちらりと見上げて聞いてみる。

「当人が名乗っていないのに差し出がましい事はできません」

お? ノースより無表情の方が上位っぽい?

無表情上位疑惑浮上。

分かっても好奇心が満たされるだけで意味は無いけど。


「この世界の人は全員魔法使えるんですか?」

「初歩魔法なら誰にでも」

「それ教えてくれます?」

「他人に教えられるほどの知識は持ち合わせていないので残念ながら」

「ゼッカさんは初歩魔法教えてくれますか?」

「無理だ」

やっぱりかー…。


「何で私が召還されたんですか?」

「魔王を討つ為に」

「魔王とはどういった存在ですか?」

「そんな事も知らないのかお前」

うるさいグラトンお前には聞いてない!

「魔族を統べる者の事です」

「魔族とは?」

「我々より強靭な肉体と豊富な魔力を持つ種族です」

「魔族と人間は争ってるんですか?」

「魔族は力に物を言わせて魔界を広げようとしているので、それを阻止する為に争っています」

「魔、界…?」

魔界と聞くと悪魔が思い浮かぶけど魔族イコール悪魔?

……はっ! もしや超魔界村!?


「魔族のすむ界隈、即ち魔界です。 魔国とも言いますが我々は国と認めていませんので」

ああ、なんだ。

ややこしい呼び方しないで下さい…。

子どもの頃に必死になったゲームの世界を思い出して冷や汗が出てくる所だったわ…。


「何故国と認めてないんですか?」

「突如現れ勝手に居着いた者がここは自分達の国だと主張した所で誰も認めませんから」

「突如…現れたんですか? 魔族は」

「500年前に現れ侵略行為を始めた、非常に厄介な蛮族として歴史に記されています」

ふむ…。

ドラゴンよりはジェネレーションギャップが少ないな。


「知能や文明の違いはありますか?」

それにしても私さっきから翻訳したみたいな話し方しかしてない。

意識し出すとなんか笑えてくるけど我慢我慢…。

「残念ながらどちらもそれ程違いがありません。 500年の間にさかしく進化でもしたんでしょう」

「言語の違いはありますか?」

「不愉快ながら同じ言葉を話します。 独自の言語も持つようですが真偽は不明です」

言葉も知能も文明も同じなら話し合いができるのか。


人間を食料としていますとか、言語を持ちませんとか言われたらどうしようかと思ったわ。

意思疎通ができるなら闇落ちしたあと魔王の眷属になれるかもしれないしこれはなかなか使える情報ですよ。


「お前どんだけ常識知らずなんだ? ノース様はガキのお守りをするほど暇じゃないんださっさと死んで俺達を解放しろ」

「………………sit」

訳:お前マジでいい加減にしろ金玉潰してやろうか

これがfから始まるスラングを口に出せない小心者の私の精一杯…っ!!

「あん? なんつった?」

「いえ髪の毛が口に入りそうになったので息を吹いただけです」

「手を使えよお前頭おかしいんじゃねえの」

うるせーよバーカ!!


あー、もう!

こいつらと関わるだけで私の内心がどんどん荒れていく!!

ノースが明日全身筋肉痛で寝込みますように!!

グラトンは戦闘中に下利便漏らして社会的に死ね!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ