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死神遊園地  作者: 鈴神楽
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奇跡が起こるドリームキャッスル

最後の対決、その相手は?

 較は、ゆっくりと中央の城の謁見の間に入る。

「ここまで来る予感は、あったわ」

 死神仮面の女性が言う中、較は、それを無視して、手に入れた仮面で良美を解放する。

「遅いぞ」

 良美の言葉に較が言う。

「あのさ、どこぞの姫様じゃないんだからあっさり捕まるの止めてくれる」

 良美が遠い目をして言う。

「囚われの姫役って乙女の夢なんだよ」

「誰が乙女なんだか」

 較も呆れた顔をする中、死神仮面の女性が睨む。

「それじゃ、帰るよ」

 較があっさり言うと、良美も頷く。

「この遊園地意外と施設が良さそうじゃん、完成したら小較と一緒に来ようか?」

 そのまま二人が出て行こうとすると死神仮面の女性が怒鳴る。

「このまま帰れるつもり!」

 較が頷く。

「不利な状況に長く居るほど、あちきは、マゾじゃないから。とっとと帰るよ」

「帰さないと言った筈よ!」

 その言葉と共に、窓から強烈な光が入り込む。

「何が起こってるの?」

 良美の質問に較が嫌そうに言う。

「やっぱり、態々あちきをこの遊園地内で戦わせたのは、この為の呪力を溜め込む為だったんだ。かなり大掛かりな術だよ」

 死神仮面の女性が頷く。

「そう、これから行うのは、神の召喚。神は、私に光臨する!」

 次の瞬間、死神仮面の女性から強烈な光と共に三面六臂の姿に変化する。

「あれって阿修羅?」

 良美の言葉に死神仮面の女性だった者、阿修羅の現身になった者が答える。

「戦いの場、修羅場の神、阿修羅。貴女と貴女と戦いを望む多くの者の意思を呼び水とし、呼び出した。神々の中でも戦いを司る阿修羅には、貴女も滅びるしかない!」

 圧倒的な気配に良美など、吹き飛ばされそうになっているが、較を見上げて言う。

「必要ないよね?」

 較が頷く。

「当然、あちき達の力を見せつける」

 駆け出す較。

「阿修羅に敵うと思うか!」

 一本の腕が振り下ろされる。

 それだけで床が鋭く切断される。

 それを回転してかわし、その勢いのまま、蹴りを放つ。

『サークルトール』

 雷撃が籠められた回転蹴りだが、阿修羅の現身の左の中央の腕が平然と受け止める。

 下の手が較を掴み、動きを封じると上の手による手刀が較の足を半ばまで切り裂く。

「これが阿修羅の力!」

 宣言する阿修羅の現身だったが、較は、止まらない。

 残った足で床を蹴り一気に接近すると肘を押し当てる。

『バハムートハードクロー』

 肘先に収束された気が阿修羅の神気を貫こうとするが、途中で止まる。

「無駄だ、人の力で阿修羅に傷をつける事は、出来ない」

 阿修羅の現身は、言葉と同時に三本の右腕での攻撃で頭、肩、腹を同時に打ち抜き、較を吹き飛ばす。

「お前に残された道は、無い!」

 ゆっくりと近づく阿修羅に残った片足で立った較が言う。

「本気で勝てるつもり?」

 阿修羅の現身が眉を顰める。

「この状況で何を言うか、お前の攻撃は、届きもしない」

 すると較が笑みを浮かべる。

「今の攻防で、あちきは、自分の勝ちを確信したよ」

「何を馬鹿な事を! その妄想もろとも消えていけ!」

 振り下ろされた腕の攻撃を較は、飛びのき避け、後ろに回りこむ。

「無駄だ、この三つの顔に死角は、無い!」

「そう? だったら、追い続けてね」

 高速で阿修羅の周りを回り続ける較。

「いくらやっても無駄だ、お前の動きは、全て見えている」

 すると較が言う。

「動きが見えてる? だったらどうして攻撃しないの?」

 それを言われて戸惑う阿修羅の現身に較が答える。

「簡単な話だよ。阿修羅の力を使えたとしても、使うのは、貴女。常人と同じ反応速度しかない貴女では、あちきのスピードに対応する事は、出来ない」

 その答えに阿修羅の現身が悔しそうにする。

「だが、お前の攻撃も阿修羅には、通用しない」

「だったら、逃げれば良いだけだよ? それでも良いの?」

 較の余裕たっぷりな言葉に阿修羅の現身が怒鳴る。

「させるものか!」

 六本の腕を広げて、全方向に力を放つ。

「これならば、お前も避けきれまい!」

「所詮は、戦闘素人だね」

 較は、自分の所に向かってくる力の塊に向かって正面に立ち、両掌を見せる。

『カーバンクルハードミラー』

 阿修羅の力とぶつかり、弾き飛ばされる較、しかし同時に較を弾き飛ばした力は、反射して、阿修羅の現身に向かっていく。

「しまった!」

 咄嗟に腕でガードする。

「やってくれた! しかし、二度目は、無い!」

 阿修羅の現身が較の姿を探すが、見当たらない。

「二度目は、必要ないよ」

 較は、阿修羅の現身の上に居た。

『オーディーンランス!』

 限界まで研ぎ澄まされた気の刃と化した較の足が自分の力を防いだ阿修羅の腕を狙った。

「効かないと言っている!」

 阿修羅の現身が自信たっぷり言うが、較の足は、阿修羅の腕を切り裂いた。

「馬鹿な!」

『シヴァダンス!』

 較が生み出した氷が阿修羅の現身を捉える。

 そして、較が力を収束させて、とどめの一撃を放つ。

『ゼウス』

 強烈な雷撃が阿修羅の現身を包み、氷を粉砕し、弾き飛ばす。

 死神仮面の女性から阿修羅が抜け出してしまう。

 床に倒れこむ死神仮面の女性が体を痙攣させながら言う。

「どうしてだ? どうして、お前の攻撃が阿修羅の神気を貫けた?」

 較は、良美に肩を借りながら言う。

「神様の力の正面からやりあうのは、無理だから、そっちの力を反射、相殺させる事で激減させたんだよ」

 死神仮面の女性が言う。

「詰り、私の力の使い方が間違っていたと言う事か?」

 較が頷く。

 そんな中、死神仮面の女性が言う。

「これが現実というのか? 私の思いでは、お前の力には、勝てないのか!」

 涙を流す死神仮面の女性に較が言う。

「あちき達が負けない理由を教えてあげようか?」

 死神仮面の女性が忌々しげに答える。

「八刃の歴史や思いは、常人より強いと言いたいのだろう!」

 較が苦笑して良美を見る。

「単純、あたしとヤヤは、何時も二人で覚悟を決めて戦っている。二対一だったら、二の方が強いのが当然でしょ」

 意外な答えに死神仮面の女性が驚く。

「馬鹿を言うな、我々とて、何人もの思いを束ねていたぞ!」

 較が首を横に振る。

「アサシン達と一緒。所詮は、方向性が近いだけで決して一つにならない。同じ覚悟を持てない以上、どんなに数があろうとも一と同じなんだよ」

 死神仮面の女性は、それでも悔しそうであった。

「それでも、私は、勝ちたかった」

 良美が眉を顰める。

「どうも気になって居たんだけど、どうしてそんなに死にたがってるの?」

 それを聞いて死神仮面の女性が驚く。

「何を言っている! 私は、ただ、お前達を滅ぼし、世界の危機を取り除くために戦っているだけだ!」

 その時、較の携帯が振るえ、較が携帯を取り出して、メールを確認して言う。

「ヨシ、ビンゴ、この人は、最初から死ぬつもりだったんだよ」

 それを聞いて良美が言う。

「どういうこと?」

 死神仮面の女性が慌てる。

「まさか、私の正体が解ったのか?」

 較が苦笑する。

「ホープランドの周囲には、うちのメンバーが待機してるんだよ、そこであんな派手な術を使えば、そこから探り出すのは、難しくない。貴女の正体は、奈良の神降ろしの家系の巫女、八神ヤガミ和子カズコ。神降ろしの血筋を維持するために近親婚を続け、貴女自身、実の父親と子供を作っている」

「それ以上言うな!」

 死神仮面の女性、和子が叫ぶが較は、続ける。

「貴女は、そんな思いを娘にさせたくない、その一心から臨月の身で家を飛び出し、出産、産まれた子供を信用できる人間に預けた。家族には、死産したって伝えたみたいね」

 和子は、信じられない顔をして言う。

「そんな、父親にも知られていない事をどうやって調べたの?」

 較は、頬を掻きながら言う。

「神降ろしの家系って八刃も注意してるの、万が一にも予想外の場所で神降ろしをされない様に、その子も監視されてたりするわけ」

 驚愕の真実に和子が慌てる。

「あの子は、何にも関係ないの! 自分の血の秘密も知らないの! そっとしておいてあげて!」

 良美が手をあげる。

「それと、自殺とどう関係あるの?」

 較が急展開に震えている和子を見ながら言う。

「多分、自分が死ねば、その子と自分達を繋ぐ糸が無くなると思ったんだよ。そして、耐えられなかったのかも、自分の娘に会いたいと思う気持ちを押さえ込むのが」

 和子は、涙を流して言う。

「そうよ! 会いに行けば間違いなくあの子も八神の家に呼び戻されてしまう。それでも、会いたいと言う気持ちは、抑えられなくなりかけていた。このままでは、何時か会いに行ってしまう。そうなる前に命を絶とうとした。そして、出来ることなら娘の為に何かしてあげたかった。貴女達を滅ぼせばその分、娘が安全になる筈だったのよ!」

 良美が笑みを浮かべる。

「世界平和だなんだ、いった所で結局、自分の娘の事が一番大切だったって訳ね」

「悪い!」

 睨む和子に較と良美が声を合わせて言う。

「「全然OK」」

 和子が驚く中、周囲の光が移動しながら収束していく。

「これって阿修羅の気配だけど、和子さんがこんな状況じゃ、もう一度、宿るのは、難しいはずだけどな」

 首を傾げる較に和子も頷く。

「その通りです。近くに新たな現身が無い限り、戻っていく筈です」

 その言葉に較が携帯電話で慌てて呼び出しをかける。

「和子さんの娘さん、近くに来てない!」

 その言葉に和子が目を見開き、携帯からの答えに較が眉を寄せる。

「その顔だと、近くに居るんだ?」

 良美の言葉に較が頷く。

「すぐ傍のあの遊園地に泊り込みで遊びに来てるって」

 和子は、動かない身体を無理やり動かして言う。

「阿修羅様、あの子は、関係ないのです! あの子だけは、見逃してください!」

 そう言っている間に阿修羅の光は、移動を開始し始めた。

「ヤヤ、もしも、あの光が子供に宿ったらどうなる?」

 良美の質問に較が苦々しそうに答える。

「訓練もしれない子が神降ろしなんてしたら、一発で精神崩壊を起こす」

 見詰め合う較と良美。

「一発かましてやれ!」

 良美の言葉に較が頷き、右手を飛んでいく阿修羅の光に向けるが、この世界で力が安定していないのか、阿修羅の動きは、不規則であった。

「連射しても当たるかどうか……」

 その時、和子が較の腕を掴み言う。

「私の気を使ってください。そうすれば多少の誘導が可能です」

 良美が言う。

「いまやろうとしてることは、世界を壊す可能性を広げる事だけど良いの?」

 和子が断言する。

「娘が居ない世界なんて考えられません」

 較が頷き、和子の気を取り込み、放つ。

『ホワイトファングイーグル』

 較の右手から放たれた白い光は、引き寄せられる様に阿修羅の光とぶつかり、対消滅した。



 八刃によって事後処理されているホープランド。

 騒ぎの元凶、和子は、多くの関係者の元に晒されていた。

「こんな下らない騒動を起こしおって! お前は、どれだけ一族に負担をかければ気が済むのだ!」

 和子の父親の言葉に、ホワイトファングの反動で、ベンチで横になっている良美の目付きが鋭くなる中、較が近づいて行き言う。

「それで、今回の事に関する落とし前ですけど、どうするつもりですか?」

 それを聞いて和子の父親が騒ぐ。

「今回の事は、この業界の総意! お前みたいな危険な存在を放置する事が出来なかったそれだけだ! 我々には、罪は、無い!」

 呆れた物言いだが、較は、気にした様子も見せずに言う。

「あちきを殺そうとした件は、不問にしても良いですよ」

 あからさまに安堵の息を吐く和子の父親に較が良美を指差して言う。

「でもね、ヨシに手を出した場合、その組織がどうなっても仕方ないっていうのが不文律だって事くらい知ってますよね?」

 冷や汗を垂らす和子の父親。

「私の命でよければ好きにしてください」

 和子の言葉に和子の父親は、少し思案した後に言う。

「仕方ない、後継者は、新しく産ませれば良い。全責任は、この者に背負います」

 良美が目を吊り上げて上半身を起こす中、較が言う。

「それだけじゃ足りませんね」

「これ以上、何を望むと言うのだ!」

 和子の父親の言葉に較が即答する。

「和子さんの娘さんです。和子さんが隠蔽していた娘さん共々、あちきたちの監視下に入ってもらいます」

 それを聞いて和子が慌てる。

「娘は、何も関係ありません!」

 それで真実と悟り、和子の父親が怒鳴る。

「お前は、何処まで私を愚弄すれば気が済むのだ!」

 拳を振り上げた和子の父親にとび蹴りをかます良美。

「五月蝿い! 実の娘に手を出す変態が、お前みたいな奴は、一生刑務所でも入っていやがれ!」

「小娘が!」

 良美に反撃しようとする和子の父親に較が釘を刺す。

「ヨシに手をあげたら、本気で潰しますよ」

 その一言に和子の父親の動きが止まる。

「お願いします。娘だけは、関係させないで下さい!」

 土下座をする和子に較が言う。

「今回は、間逃れたけど、今後、同じ事が起こらないとは、限らない。力を受け継いだ以上、多少の苦難は、覚悟しないといけないんだよ」

 辛そうな顔をする和子。

 そして、較が和子の父親の方を見て言う。

「こっち預かりって事ですから、勝手に子作りや結婚なんてさせませんからね」

 それに戸惑う和子の父親。

「それは、困る。我々にも一族を残す役目があるのだ!」

「さっき、切り捨てようとしておきながら勝手な言い分だね」

 良美の突っ込みに黙るしかなくなる和子の父親を無視して較が言う。

「娘さんは、これから大変だと思う。だけど、母親として、ちゃんと護ってあげて」

 その言葉に和子が較達の思惑に気付く。

「本当に良いのですか?」

 良美が指を立てて言う。

「親子は、一緒に暮らすのが一番。まあ、例外は、あるけどね」

 そして、和子は、うれし涙を流しながら何度も頭を下げるのであった。

 こうして、較の命を狙った死神達との戦いは、終わりを告げたのであった。



 少し後の白風家。

「それでさ、和子さん達は、どうなったの?」

 小較の質問に、良美が言う。

「竜夢区に引っ越して来て、神降ろしの巫女の修行をしながら、母娘二人、幸せな暮らしを開始したみたい」

「良かった」

 小較も安堵する中、較が帰ってくる。

「ただいま……」

 疲れた様子の較に良美が言う。

「今度は、どんな釘をさされてきたんだ?」

 較が肩をすくめて言う。

「今回は、罰当番まで回ってきたよ」

 較は、分厚いファイルを見せる。

「何ですか?」

 小較の質問に較が答える。

「八刃が押さえている、日本各地の不確定要素事件、いわゆるミステリー現象のファイル。その中でも危険度が高いって事になってる奴の解決をやって来いって」

「面白そうじゃないか!」

 乗り気な良美に較が溜め息を吐く。

「気楽なんだから、ただ戦えば良いって話でもないんだよ」

 小較が手をあげる。

「今度は、あたしも手伝いまーす!」

 なんだかんだで較と良美のトラブルは、途切れることだ無いのであった。

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