闇から襲うゴーストハウス
幽霊屋敷に潜むアサシン達
死神仮面の女性が言う。
「貴女達は、今まで多くの組織を潰してきたわよね?」
良美が頷く。
「それがどうしたの?」
死神仮面の女性が一枚の幸せそうな家族の写真を取り出す。
「この写真の男性わね、貴女達に潰された組織の人間だった。貴女達に組織を潰され、体を壊され、その家族は、嘆き、動けない父親の治療に心身ともに疲労しきった。そして、母親は、父親と無理心中をした。残された子供達の悲しみって解る?」
「何が言いたいの?」
良美の言葉に死神仮面の女性が言う。
「貴女達の正義の味方ごっこで幸せを失った人が居るって事よ」
それに対して良美が呆れた顔をする。
「あたし達が何時、正義の味方だなんて言った?」
それを聞いて死神仮面の女性が言う。
「言わなくてもそういうつもりなんでしょ? 滅ぼした組織が悪党だから自分達は、正しい事をしたって言いたいんでしょ」
良美が言う。
「それじゃあ、聞くけど、その男性は、誰の人生も壊してなかったの?」
「そんな事は、関係ない、問題は、貴女達がその人の家族の人生を壊したことよ」
死神仮面の女性の言葉に良美が笑う。
「語るに落ちるってこの事だよね。貴女は、あたし達がした事だけを捉えて、その男性がしてた事を見もしなかった。それでよく、あたし達を攻められるよね?」
だが死神仮面の女性が続ける。
「何? それじゃ、この男性は、殺されて当然で、その家族は、不幸になって当然だって言うの?」
良美が即答する。
「さっきと同じだよ、その男性に人生を台無しにされた人が何をしたの? その人たちが不幸になる理由って何?」
死神仮面の女性がきつい視線で言う。
「やっぱり、貴女達は、正義をかざして、人を踏みつけてるわ!」
良美が激怒する。
「あたし達が踏みつけられていないとでも思った? あたしが苦しんでないと思った? 綺麗ごとを言ってるんじゃないわよ! この世の中は、強者弱肉なんだよ! あたしを捕まえて無理やりヤヤを呼び出してるあんたが、弱者の気持ちを代弁するなんて虫唾が走るのよ!」
死神仮面の女性が悔しそうに言う。
「私達には、この世界を護る責任がある」
「さっきの言葉をそのまま返すよ、その責任の為に、あたしやヤヤの家族が悲しむのは、考えてないの?」
死神仮面の女性が怯む。
「何事にも程度があるのよ。でも、そうね、私は、罪を償う必要があるわ。そして、その覚悟があるわ」
そんな中、較が幽霊屋敷に入っていくのが映る。
「そして、白風較にも過去の代償を払う時が来たのよ」
較が幽霊屋敷に入った時、スピーカーから声が聞こえてくる。
『我等は、お前に因って潰された組織の人間。お前の所為でどれだけの人間が苦しみ、人生を狂わせたか! お前には、その罪を償ってもらう』
較は、即答する。
「どうやって? お金だったら払うよ」
『金の問題じゃない!』
その答えに較が言う。
「それじゃあ、どうしたいの?」
『お前の命で償わせてやる!』
その声と共に飛んでくるナイフを較があっさり指で挟む。
「はいはい。それじゃ、行きますか」
緊張した様子も無く、幽霊屋敷に入る較だったが、入った途端、苦笑する。
「いや、ここまで殺気に満ち溢れていると、流石に特定は、難しいな」
そういっている間にも、猛毒が塗られているダーツが飛んでくる。
較は、直感でそれが危険だと察知して、硬貨を投擲して、叩き落すが、硬貨が当たった瞬間、ダーツが爆発する。
「避けたり、受け止めたりしたら、爆発してダメージを与えるって寸法だね」
そのまま、歩き続ける較。
壁が回転して幽霊の模型が出てくる。
「まえから思ってたんだけど、これの何処が怖いんだろ?」
通り過ぎた所で、幽霊が動き出し、背後から毒を仕込ませた爪を突きつけてくる。
「作り物だと思ったのが動いたら、少しびっくりするか」
較は、あくまで呑気に、幽霊のふりをした暗殺者の爪を避けて、ひじ一発で意識を刈り取る。
その後も、アサシン達の襲撃が続くが、較は、平然と全てをかわしていく。
『化け物が! これだけの数のアサシンの攻撃をどうして回避し続けられるのだ!』
スピーカーから聞こえる焦りの声に較が即答する。
「簡単だよ、貴方達が連携していないから、だから周りの殺気と明確に差別か出来る」
アサシン達が慌てて居るのを感じながら較が続ける。
「さっきも言ったけど、あちきに何を求めているの?」
『お前の死だ!』
答えに較が苦笑する。
「あちきだってそのうち死ぬよ。明日死んでもおかしくないね。そうすれば満足?」
『ふざけるな! 俺達の手でお前を殺す事に意味があるんだ!』
怒声にスピーカーがハウリングを起こす中、較が言う。
「あちきは、命は、一つしかないけど、どうやって貴方達は、全員が自分の手であちきを殺すの?」
それを聞いて動揺が広がるのを確認しながら較が続ける。
「どうやったって何処かで妥協しなければいけない。ついでに言えば、貴方達だって覚悟は、出来てた筈だよ。人を殺すって行為を続ければそれは、自分達に返って来るって事くらい」
『それでも、お前は、無慈悲に全て打ち砕いた。それを忘れられないのだ!』
アサシン達の言葉に較が言う。
「あんた達に殺された人々も同じ思いでしょうね」
『天罰だとでも言いたいのか!』
アサシンの怒りに較が答える。
「別に、あちきは、正義の味方じゃない。でもね、力尽くで何かをしようとしたら、もっと大きな力で押し返される。それに抗い続けるだけの根性があるの?」
『お前を殺せば全てが終わる!』
アサシン達の回答に較が肩をすくめる。
「本気で言っている? あちきを殺して、全てが終わると?」
『お前を殺した罪は、奴が背負うと約定が出来ている』
アサシン達の用意された答えに較が頬を掻きながら言う。
「そんなの信じられるなんて随分と夢があるんだね。まあ、それは、それで良いとして、あちきを殺した名声は、どうなるの?」
『そんな物は、俺達は、求めていない!』
アサシン達の言葉に較が苦笑する。
「そんな理想論が通じないって解っているでしょ? あちきを殺した人間は、その名声を妬まれて、次のターゲットになる。そんな敵と戦い続ける根性があるかが問題なんだけどね」
殺気が恐怖に飲まれていくのが較には、解った。
そして、死神の仮面をした男が現れる。
「最後に聞きたい。お前は、その覚悟があるのか?」
較は、手を前に出して言う。
「あちき達は、神だろうが喧嘩売ってるんだよ、その先にあるのが何かなんて承知の上だよ」
死神の仮面を外して男が言う。
「所詮、お前は、俺達とも住む世界が違うのだな」
較は、死神の仮面を受け取り、言う。
「違わない。ただ、あちきには、どんなに辛くても、戦う為の理由があるだけだよ」
そして較は、次のアトラクションに向かう。