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死神遊園地  作者: 鈴神楽
3/6

回り続けるメリーゴーランド

無数のキメラとの対決

 良美が大きく溜め息を吐く。

「何時も、自分の体の事を心配しないんだから、あの性格は、矯正必要だね」

 その言葉に死神仮面の女性が言う。

「この業界、常人には、狂っているとしか思えない行動をする人間が多いのよ。そうね、次の相手なんてその典型例かしら」

 そして、巨大なメリーゴーランドの中に入っていく較がアップされる。



「随分とメルヘンな乗り物で戦うんだね?」

 較の言葉に、目の前の馬に乗っていたピエロが言う。

「メルヘンですか? 確かに、現実では、ありえない物ですがね」

 その言葉と共に、メリーゴーランドの馬と思っていた者達が動き出す。

 どれも、通常の生物とは、異なる形をしていた。

「この子達は、私の作品の中でも指折りの戦闘能力を持つキメラですよ」

 それを聞いて較が油断無く構えながら言う。

「それで死神の仮面は、何処?」

 するとピエロが言う。

「私が、キメラマスター、ディラスが被っておりますよ。見事、奪い取ってみせなさい」

 較は、左右から襲ってくる、ライオンと虎を素体とした、キメラの攻撃をよけ、一気にピエロに近づき、ピエロの仮面を剥ぐ。

「やっぱり、フェイクか」

 仮面の下には、スピーカーが仕込まれていた。

『残念でした!』

 目の前のスピーカーから声と同時にピエロが爆発する。

 当然、較は、空中に飛びのき、無傷である。

「詰り、今回の勝負は、貴方を見つける事が出来るかどうかって事だね?」

『その通り! もしも負けた場合は、貴女の体を貰います。地上最強の戦闘生物、八刃、それも盟主である白風の次期長の肉体。どれほどのキメラが作れるか今から楽しみです』

 周りのスピーカーから聞こえるディラスの声に不機嫌そうな顔をしながらも較は、周囲を見回す。

 そのときには、既に大量のキメラが較を取り囲んでいた。

『彼らは、それぞれが、並みの使い手なら瞬殺する、傑作です。何時まで持ちますかな?』

 無数の棘を生やした大蛇が飛んでくる。

『オーディーン』

 手刀で真二つにする較に無数の口を持つ大型犬達が押し寄せてくる。

『ベルゼブブ』

 較の放った髪の毛が犬達の心臓に直撃し、絶命させる。

 上半身だけが異常に大きなミノタウロスみたいな化け物が拳を振り下ろす。

『タイタン』

 較が蹴りの振動の増幅による地震で、ミノタウロスもどきの攻撃がそれる。

 ジェットエンジンが体から生えている鳥達が高速で接近する。

『カーバンクルパラソル』

 それらを床に向かって受け流す較。

 床にぶつかった鳥達は、爆発し、黒煙を上げるなか、無数の触手を生やしたワーウルフが詰め寄ってくる。

 咄嗟に拳を受け止めるが、触手までは、止められず、較の体に巻きつき、動きを封じる。

 それにあわせるようにミノタウロスもどきがワーウルフに当たるのを気にせず、フックを放つ。

 ペシャンコになるワーウルフ。

 較は、大きく弾き飛ばされ、中央の柱に着地する。

 すると、柱がゲル状化して、較を取り込もうとする。

『どうですか、我が傑作達の実力は?』

 ディラスの言葉に較が淡々と答える。

「はっきり言えば、オリジナルティーが無いね」

 それを聞いてディラスが過剰に反応する。

『何だと!』

 較は、柱に擬態していたスライムに手を当てながら言う。

「どれもこれも、ファンタジー小説に出てくる化け物を多少変更しただけ、あなたのオリジナル性は、感じられないって言ってるんだよ」

『それをするのにどれだけの技術が必要だとおもっているんだ!』

 激怒するディラスに較が苦笑する。

「技術の有無なんて関係ない。『シヴァ』」

 凍りついたスライム。

『タイタンパンチ』

 撃術を伴った力技で粉砕された氷は、近くのキメラ達に直撃していく。

 開放された較が告げる。

「オリジナルティーが無いから、弱点だって直に解る」

『五月蝿い! どんなに足掻いた所で、お前には、私が何処にいるかは、解らないだろう!』

 較は、肩をすくめて言う。

「本気でそうだと思う?」

『当然だ! お前は、私がどんな姿をしているのかも解っていない、違うか?』

 ディラスの質問に較は、少し考えてから答える。

「オリジナリティーが無いって言うのは、訂正しとくよ」

 それを聞いてディラスの嬉しそうな声が聞こえてくる。

『そうだろう、私こそ最高のキメラマスターなのだから』

 較は、他のキメラの影に隠れるように居る、仮面をつけた小さな子犬に駆け寄り掴む。

「こんな特徴も無く、能力も低そうなキメラを作るんだから、独創性は、あるかもね」

 すると、子犬が喋る。

「どうして、これが私だと解ったのだ!」

 その声は、ディラスの物だった。

 較は、仮面を剥ぎ取って言う。

「この場に居て、一番安全な存在って何だろうって考えたんだよ。防御力の高いキメラ? それとも攻撃をかわし続けられる高速のキメラ? どちらも違うよね? この姿の様に無害そうな者が一番安全なんだよ」

 ディラスが顔中に脂汗を流す。

「殺すつもりか?」

 較が笑顔で言う。

「まさか? でもね、多分死んだ方が良かったと思う様になると思うよ」

 較は、ディラスの足を全て粉砕する。

「このまま放置するつもりか?」

 危機感をつのらせるディラスに較が告げる。

「さっきも言ったでしょ、死んだ方が増しだと思うようになるって。この戦いが終わったら、八刃の後処理が始まる。その時に、貴方を見つけた八刃の研究者がどうするかを考えるとご愁傷様としか言えないね」

「私を実験材料にするというのか!」

 切羽詰ったディラスの言葉に較が頷く。

「人の頭脳をその小さなキメラに押し込んだ、その技術をじっくり研究された後、その限界を実験するだろうね」

 嘗て自分がやって来た実験を思いディラスが叫ぶ。

「殺してくれ! あんな事をされるくらいなら死んだ方が増しだ!」

 較は、手を振って言う。

「ヨシの誘拐に関わった奴にかける情けは、あちきには、無いよ」

 そのまま次のアトラクションに向かう較であった。

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