兄妹がチート持ちだった
どうもこんにちは。私はラメリ・ルーベルト。
なんと異世界転生してしまいました。
どうやらトラックに轢かれた系の異世界転生で、3歳のラメリ・ルーベルトに生まれ変わったようです。だけど20年分の情報量を頭に詰め込みすぎたせいで三日三晩熱に魘されて大変でした。
この世界の名は、アストルク。剣と魔法が存在し、スキルや加護、魔法生物やエルフやら魔族やらがいる在り来りな異世界。
この情報はお父さんに本を読み聞かせて貰って自然に覚えたのか頭の中に最初から入っていた。おかげでこの世界についてだいたい分かったので、次は私たちの情報。
私たちが住んでる村は、オルド王国領の西側の端っこにあるアーシュ村。簡単にいうとド田舎の村だ。人口も50人いないくらいの小さな村で、特産品は茶葉と果物。みんな顔見知りで、仲が良い普通の村。
私の家族は4人。お父さんとお母さん。そして3個上の兄と3個下の妹だ。
また真ん中に挟まれて、この世界でも面倒事がありませんようにと願っていたが、神はそう許してはくれなかった。
まず兄がおかしかった。
「お兄ちゃん。何やってるの?」
「魔力循環。」
兄は岩の上で瞑想をして、静かなオーラを放っていた。淡い青の魔力が全身を流れ、周囲の石礫を浮かしていた。
あんたまだ9歳だよな???
なんだ魔力循環って、あんたと同い年のルッキーは木の棒振り回して取り巻きと遊んでたぞ。
思わず口調が前世に戻るほどの驚きだった。
なぜ兄が魔力循環なんてものを行っていたのかは分からないが、母と父はきっと大物になるぞ!、と笑っていた。
この家でも放任主義らしい。私の両親は。
そして妹もやばかった。
「おねーちゃーん。」
「キーラ。どうしたの?」
「きょうね。かわいかないほうがいいって。」
「え、なんで?今日はいい天気だよ。」
「おほしさまがいってた。」
「なんて?」
その日の昼頃。晴天だった空がいきなり曇り、大雨が降ってきた。妹がどうしても川に遊びに行くのを嫌がるので、家族でピクニックは中止となったのが幸いだった。川は増水し、村と村を繋げる橋が壊れるほどだったと、後で村の人から聞いた。
「良かったわ。今日遊びに行かなくて。」
「キーラのおかげだな。ありがとう!」
「・・・」
「えへへ。」
父に頭を撫でられ、嬉しそうに微笑む妹を横目に兄を見る。兄は、喜んでいる妹をじっと見て、何やら考え込んでいた。
(強者の勘に反応したのかな?)
私は、兄だけには転生者であることをバレないようにしようと心に決め、父と一緒に妹の頭を撫でた。
私、ラメリ・ルーベルト。7歳になって初めてのイベントが始まりました。
待ちに待った洗礼の日。7歳になった時、自分の固有スキルを授かることができる儀式だ。ついでに、能力や魔法適性も見ることができるらしい。
異世界転生といったら特殊能力。憧れの魔法やらスキルやらを使うことができる。内心ワクワクが止まらなかった。
教会の周りには村の人達が集まっており、他の家族も授かるスキルの話ばかりしていた。
「うちは農家だから水系のスキルを授かってくれると嬉しいな。」
「父さんは火属性の魔法適性があったんだぞ!お前もきっと火属性だ!」
「俺、剣士になりたい!」
「じゃあ剣のスキルをくださいって神様にお願いしなくちゃね。」
周りはどんなスキルを授かるか、騒いでいる。父と母も、村の人達とスキルの話をしていた。
「お兄さんの時は凄かったですからねぇ。妹さんも期待ですね。」
「いえいえ。そんな期待されても、生活に役立つスキルを授かってくれたら良いと思っております。」
「子供の人生がより良いものになってくれたら、スキルなんてどうでもいいので。」
「あらあら。素晴らしい考えですね。うちの旦那も見習って欲しいわ。鍛冶屋だから鍛治のスキルを取れってうるさくて。」
そうだった。村の人達が話していた通り、兄の洗礼の儀式は凄かった。
兄は全属性の魔法に適性を持ち、他スキルも様々。さらに固有スキルは、古えを手にした者だったのだ。
当時4歳の私は、兄が主人公級のやばい人になることを察知し、前世のことを誰かに話すのは止めようと悟った。
兄のことを思い出して唸っていると、母が私が洗礼を受けることを不安に感じていると思ったのか、私の頭を撫でて、目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「ラメリがどんなスキルを持っても、お母さんたちは気にしないから大丈夫よ。」
「そうだぞ。案外お母さんのような鑑定のスキルを授かるかもしれんな!」
「そう言ったら、あなたみたいに魔法スキルを授かるかもしれないわね。ラメリの魔法好きはあなたに似ているから。」
母と父が私を励ますようにそう言う。
母は中級の鑑定系スキルを持っており、昔商人の元で働いたノウハウを活かして、商人との取引や村の経営の手伝いをしている。父は魔法適性が3属性あり、スキルも魔法系だったため、昔は冒険者をしていたらしい。今は引退して、畑仕事をしながら村の教師として、子供たちに剣や生活に役立つ魔法、文字の読み書きを教えている。
2人共、自慢の親だ。村でも評判が良く、仲睦まじい夫婦だと言われている。
だからできる限り変なスキルだけは授かりたくない。ここですごいスキルを授かったら、家族への期待は高まるし、将来妹への期待もすごいことになるであろう。それは避けたい。両親は優秀だし、妹も将来すごい人物になるであろうと思っていたが、過度な期待は身を滅ぼすことを私は前世知っている。
洗礼の儀式が始まり、子供たちが神父の前に並び、洗礼を受けている。
村の農家の一人娘が水晶に手をかざし、神父からの祝福の言葉を受け取ると、水晶が光りだし、青色に変わる。
「水属性の魔法適性を持っていますね。さらにスキルを2つ習得しています。とっても頑張ったのでしょう。《栽培》と《裁縫》のスキルを持っていました。固有スキルは...《虫除け》、虫を寄せ付けないスキルのようです。」
「やった!お母さーん!」
この世界では、研鑽を積むことで習得できるスキルも存在する。あの少女は村でも頑張り屋さんで母親想いのいい子だと評判だった子だ。7歳で2つのスキルを既に持っているなんて、将来有望な子だと村中思っただろう。
「次は、ランク・グライス。」
「はい!」
次々に名前が呼ばれ、固有スキルを授かっていく。火属性と土属性の魔法適性があって喜ぶ子。剣の固有スキルが授かれなくて泣いている子。魔法適性は無属性だったけど鍛冶屋の固有スキルを授かってほっとしている子。さらに名前を呼ばれ、皆洗礼が終わった後の表情は様々だ。
この名前を呼ばれる順番は、生まれた順で呼ばれており、私は最後の方だったので、ずっと緊張と不安でいっぱいいっぱいだった。
「次、ラメリ・ルーベルト。」
「はい!」
神父の前に立ち、水晶に手をかざす。不安で神父の方を見ると、大丈夫ですよ、落ち着いた声で笑ってくれた。
神父が祝福の言葉を唱えると、水晶が光りだし、色が着き始める。
「わぁ...」
色は5色だった。この世界は4大属性と無属性、そして上位属性がある。私の色は、赤、青、緑、黄、白。つまり、火、水、風、土の4大属性と、誰もが持っている無属性。まさかの5属性持ちだ。
「これは珍しいですね。お兄さんのように上位属性は持っていませんが4大属性を全て持っているとは。」
「や、やったー...?」
後ろで村の人達がすごいのなんの騒いでいる。私にとっては嬉しい半分悲しい。兄についで妹も天才かなんて言われたくない。私は面倒事は大っ嫌いなんだ。普通に生活したいだけです。
「さてさてスキルは...1つ習得していますね。《速読》のスキルですか。ラメリちゃんは本が大好きですからこれでもっと読めますね。」
恥ずかしい。たしかに私は昔から本が好きだった。こっちの世界の本はどんな物だろうと、家や教会にある本を片っ端から読んでいたのだ。おかげで神父様とは顔見知りで、微笑ましい目で見られて正直恥ずかしい。私は7歳だが、精神年齢が27歳なので子供扱いされるのは恥ずかし過ぎる。
「固有スキルは......」
固有スキル。これで決まる。魔法適性は魔法がどれだけ使えるかなので、別に問題ない。1属性だけで魔法の頂点に立った人物だっているから数がどうこうの話ではない。珍しいだけ。だが固有スキルは違う。固有スキルとは、唯一無二のスキルだ。人生が決まると言っても過言では無い。平凡で在り来りなスキルなら、このまま村で過ごすこともできるが、兄のような固有スキルだとあれこれ周りから進路を決められそうになる。国に使えろ、隣国に留学しに行け、もっと頑張れ、あれこれ家族でも無いのに言ってくるのを見てきた。
私は兄と違って意思は強くないから、何も言えないで流されてしまうだろう。それだけは絶対避けたい。
(魔法だけでも将来生きていけます!どうか平凡な。せめて生活の役に立ちそうなスキルを!!)
目をつぶって心の中でそう叫ぶ。そして神父の口が開かれた。
「固有スキルは......物語を見る者です。これは、どうやら鑑定スキルのようですね。」
「え?」
後ろで母が喜んでいる声が聞こえる。自分と同じ鑑定系スキルだったことに喜んでいるのだろう。
目を開けて神父の方を見ると、ゲームウィンドウのような画面が目の前に出てくる。
職業:神父 名前:コーラス・カンダロイ
固有スキル:風を説くもの
効果:嘘を見破れます。ただし、上位の隠蔽スキルを所有している場合は見破れません。
スキル:《洗礼》《初級回復魔法》《中級回復魔法》《薬草鑑定》《初級魔法薬生成》
魔法適性:水、無 上位属性:光
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これ以上は、スキルのレベルが上がらなければ閲覧することができません。
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これは、ステータス画面。後ろを振り返ると、至る所から画面が大量に出てきた。
周りの人達が見えなくなるほどの量の画面が出てきて、私は困惑と画面の圧迫で目を回しそうだったが、大人の精神で何とか踏ん張った。笑顔で神父様にありがとうと伝えて、両親の元へ駆け寄る。スキルのことを意識しなければ画面が現れないが、それでもちょこちょこ画面が出てくる。
母が嬉しそうに頭を撫でてくるが、私は無邪気な笑顔とは反対に内心疲れていた。
至る所に画面が出現。色々な情報が出てきて目が回りそうだ。さらに《速読》のスキルのせいで一瞬で読めてしまうので、さらに情報が入ってしまう。
「ラメリ、良かったな。母さんと一緒だぞ。」
「お姉ちゃんすごいねー!」
兄と妹の声に反応してそちらを見てしまう。
そして、2人のステータスウィンドウが目の前に出てきてしまった。
職業:転生者 名前:アラン・ルーベルト(ユーレン・レグエント)
固有スキル:古えを手にした者
効果:あらゆる古代魔法に適性を持ち、全ての魔導具を扱うことが出来る。
スキル:《全魔法》《全武道》《古代魔法》《魔力感知》《魔力操作》《精神耐性》《物理耐性》《魔法耐性》《魔導具生成》《魔法陣生成》《魔法作成》《看破》《転写》《隠蔽》etr...
魔法適性:火、水、風、土、無
上位属性:光、闇、召喚、使役、精霊、神聖、魔、古代
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これ以上は...
職業:村娘 名前:キーラ・ルーベルト
固有スキル:星々の資質(予定)
効果:星の力を操り、星魔法を扱う。(習得条件がまだ満たされていません。)
スキル:《星魔法》(未完全)、《裁縫》
魔法適性:無
上位属性:■■■■■■■■■■■
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一部情報の閲覧が不可能です。これ以上は...
兄妹のステータスウィンドウを見て、思わず笑顔が固まってしまった。
兄妹が不思議そうに私の方を見るが、思わず固まってしまうことを許してくれ。
だってそうでしょう。
兄妹がチートだった。




