異世界転生したらまた真ん中だった
我が家は三兄妹だった。
兄、私、妹。そして両親の五人家族。
親の教育方針でやりたいことをやらせる自由な家だったので、個性もバラバラ。好きなこと、嫌いなこと、趣味、人間関係など全部合わなかった。
だからよく、喧嘩も起こった。
朝、今日は大学の午前授業が先生の都合で無くなったので午後だけである。なのでいつもより遅く起きて着替え、ゆっくり朝ごはんを食べようとリビングへと向かおうとしたが、リビングから妹の怒鳴り声が聞こえてきた。
「にーちゃんまた服放ったらかしにしたでしょ!片付けろ!あと、食器は自分のは洗って!」
「おう。後でやる。」
「今やれ!!」
(またかー。)
これがいつもの日常。
寝起きなのか、あくびしながらお茶をコップに注いでいるのが我が家きってのマイペース野郎、石野蓮。
基本我が家の人間はマイペースな人が多いが兄は特にマイペースだ。自分のペースで進めていきたい人なので、優先順位がぐちゃぐちゃで他の人からは今やって欲しいことを兄は後でやる人だ。
なので、洗濯物は基本干しっぱで畳まないし、皿洗いは後回し。唯一救いなのは、仕事はちゃんとやる人だから、あんまり外では迷惑かけていないこと。その気遣いをもう少し家族に回して欲しいものだ。
「ったくにーちゃんなんでやんないのかなーブツブツ」
「おはよう、りぃ。」
「ねーちゃんおはよう。俺もうバイト行くから。」
「あれ?今日早いね。せっかく学校祝日で休みなのに。」
「休みが出て代打。母さん今日いないから家にあるもんで食べてだって。」
「りょーかいです。いってらっしゃい。」
「いってきます。」
兄のマイペースに怒っていたのはツンツン真面目妹の石野凛。
妹は、少し性格が拗れているだけの真面目な妹だ。学校で成績を取るために努力はするし、家の手伝いもちゃんとやってバイトもするいい子。ただ、この家の血筋か、それ以外は全て趣味につぎ込むのでネットやらゲームやら漫画から色んな影響を受けて、男寄りな性格となっている。一人称が俺なのもその影響。元々、男勝りな性格だったのがさらに加速してこうなったのである。
妹を見送ってから私はご飯をよそい、冷蔵庫から梅干しを取り出して、椅子に座って食べ始めた。
兄は相変わらず妹に言われたことをせずにソファに座ってテレビを見ていた。それを横目にスマホで今日の午後の予定を確認する。
これはまた私が兄のもついでに洗うパターンか。
私がご飯が食べ終わっても兄は全くソファから動く気配が無かったので、仕方無く私が自分の分も一緒に洗う。ここで自分の分だけ洗うと、もし兄が食器を洗わなかった時、妹のストレスがやばいことになりそうだからだ。さすがに妹が可哀想なので時間もあるし、洗っておく。
「お兄ちゃん皿一緒に洗っておくね。」
「おーサンキュー。」
「お母さんって今日まるっといない感じ?」
「出張で明日の昼に帰ってくる予定。」
「りょ。お父さんは?」
「夜勤だから今寝てる。」
「りぃはバイトだから昼過ぎに帰ってくるだろうし、お兄ちゃんは仕事は?」
「今日はパソコンは無し。夜の警備員の仕事だけ。」
「OK。」
兄の仕事は編集やプログラミング作業の請け負いと夜のマンションの警備員の掛け持ちだ。マイペースな人なので、なるべく人との関わり合いが薄い仕事をしたいらしい。母は仕事が大好きで会社の管理局で働いている。出張や会議やらであっちこっち飛び回るので、家を空けることが多く1日帰ってこないなんてよくある。父は、警備員の仕事をしていて夜勤務が多いため朝は寝ていてほとんど見かけない。そして父の務めている会社はマンションの警備の仕事もしているので実は父は兄の上司でもある。請け負いだけでは収入が不安なので父が自分の会社に誘ったのだ。
「おい。時間いいのか?」
「え?」
皿洗いが終わってもまだまだ時間があったので、本を読んでいたらつい読みふけってしまい、兄に声をかけられるまで気づかなかった。
電車が来る時間まで、残り8分となっていた。
「やっっばっ!!」
急いでバックに本とスマホを詰め込み、身だしなみを整えて急いで家を出た。
「間に合うか?」
「間に合わせる!!いってきます!」
兄に見送られ、急いで外に出る。頑張って走れば3分で駅に着くはずだ。
しかし、足が遅くて体力が無い私では間に合うかどうかが分からない。神に祈りながら懸命に走り続けた。
そういえば私がどんな人か説明して無かった。
私は石野蘭。面倒くさがり屋なのに世話焼きな大学生だ。疲れることがとにかく嫌いでトラブルもあまり好まない。常に第三者、傍観者でいたくてのらりくらりとトラブルに巻き込まれないように躱して生きようとしているが結局頼まれたら断ることができずにやってしまう人だ。
こんな性格になった理由は兄妹だ。マイペースな兄とツンツン真面目妹に挟まれていればトラブルに巻き込まれる。だからすぐに終わるように自分から面倒事を買って出たり、愚痴や文句を聞いてストレス発散させたりと、さらに面倒事になる前に何とかしていたせいだ。
姉の性分か、家の外でも世話をやいたり、話を聞いたりしていたので頼られがちだったので余計疲れて、高校生の時に頼る側をやってみたら加減が分からなくて友達が離れてしまったため、反省して大学生になっても面倒事の請け負いをやっている。
疲れた時はいつも本に逃げて空想に走っていた。
本を呼んでいる時は傍観者としていることができる。人のトラブルは面白いし、話は聞きたい。見ているだけでいいから物語を知りたい。
登場人物になれなくていい。見て知りたいだけ。
ふとなんで自分がこんなこと考えてるんだろうと考えた。
人は死ぬ直前。走馬灯が流れるという。
青信号
身体は横断歩道を渡っている。
だが目は横から迫り来るトラックを捉えた。
あ、これは
トラックの運転手はスマホをいじっている。
気づいてないな
極限の緊張下で、人生の記憶が一瞬で駆け巡る現象。
瞬間、身体中に痛みが走った。
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「ラメリ?大丈夫か?」
「んぇ?」
気づいたら私は地面に転がっていた。
声をする方を見てみると知らない子供、いや、これはお兄ちゃんがいた。
「ふぇぇぇぇ!!」
「あらあらキーラが泣いちゃったわ。お姉ちゃんが転んだのを見てびっくりしちゃったのね。」
「こらアラン!まだラメリは小さいんだから手を離しちゃダメって言っただろ!」
「ごめんって父さん。」
兄の他にお母さん、お父さん、妹がそこにいた。
だけど私が知っている家族と見た目が全く違う。いやだけど、この人達も私の家族だ。
なんで、どうして、どこ、だれ、らめり、このきおくは?
脳が全ての処理を終えると、全ての結論が頭にでてきた。
「ラメリ?」
頭がぼーっとする。膨大な情報量を頭に叩き込まれたせいで熱を出したのだ。
母が気づいてすぐに駆け寄ってくるのが見えるが意識はシャットアウトする。
「ラメリーーー!?」
意識を失う前、思ったことは
(また、真ん中かよ。)




