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長編版:撫でられるのが仕事です。~裏切られ死んだ俺、猫に回帰して仲間を最強にプロデュースする~  作者: 堀籠遼ノ助(ほりこめりょうのすけ)
第四章 廃棄薬ト商才ト屋敷ノ崩壊劇

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20/22

『裏庭のダンジョンと経営計画だにゃ』


 俺はクラウスの足元に擦り寄った。


『うらにわ……だんじょん。……あそこが、かぎにゃ』

「裏庭のダンジョン? バウマン家が管理している、あれか?」


 クラウスが首をかしげる。

 バウマン家が代々管理している、Fランクダンジョン『竜の箱庭(ドラゴン・ガーデン)』。

 たいそうな名前はついているが、実際にはゴブリン数匹が出る程度の、枯れた初心者用ダンジョンだ。


 ――そう思われている。


 だが、違う。

 あそこは、まだ誰も最深部に到達していない「未踏破ダンジョン」なのだ。

 そしてその奥底には、世界を変えるほどの資源(高純度魔鉱石)と、最深部には古竜が眠っている、SSランク以上の魔境(ダンジョン)だ。


『あそこを……しげんのあふれる、だんじょんに、かえるにゃ。……やりかた、しってる』


 俺の言葉に、クラウスが目を丸くした。


「えっ? あの枯れたダンジョンを……資源の溢れるダンジョンに変えられるだって!?」


 クラウスは俺の言葉を復唱し、そしてパッと顔を輝かせた。


「そ、それはすごいなノワール! 何だかよく分からないけど、すごいことになるんじゃないか!?」


 ……うん、こいつは分かっていない。

 だが、俺の言葉に反応した人物がもう一人いた。


「……資源溢れるダンジョンに、変える?」


 ミアだ。

 彼女は眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ、前のめりになった。


「クラウス様。もしノワール様の仰ることが事実なら……バウマン家の再興は、約束されたも同然です」

「え? そ、そうなのか?」

「はい。ダンジョンとは、すなわち『人を呼ぶ装置』ですから」


 ミアは立ち上がり、まるで軍師のように熱弁を振るい始めた。


「本来、この国の貴族における『ダンジョン管理』とは、魔物を抑え込むだけの防衛任務ではありません。……『経営』なのです」

「けいえい……?」

「ええ。魅力的なダンジョンには、多くの冒険者が集まります。人が集まれば、彼らが泊まる宿屋が潤い、武器屋が儲かり、酒場で金が落ちる。その経済活動から得られる莫大な税収こそが、貴族の力の源泉であり、家を支える柱なのです!」


 ミアは一息に言い切ると、眼鏡をくいと押し上げた。


「つまり、裏庭のダンジョンを『稼げる場所』にリニューアルできれば、バウマン家は領主として莫大な富と権力を取り戻せます。……借金など、一瞬で消し飛びますよ」


 その完璧な解説に、クラウスはポカンと口を開けた。


「す、すごいなミア……。そんなこと、俺も父様も考えたことなかったよ。……君、本当に孤児院で暮らしていたのか? どこかの商会の娘とかじゃなくて?」


 もっともな疑問だ。

 教養のないはずの孤児が、領地経営の本質を語っているのだから。

 だが、ミアは涼しい顔で答えた。


「市場の近くにある古本屋のお婆ちゃんとは、懇意にしてまして。……売れ残っていた経営や経済に関する本は、店番の合間にすべて読破(立ち読み)しました」


「ど、読破って……」

「淑女のたしなみです」


 しれっと言い放つミア。

 俺は心底呆れ、そして感心した。


(……こいつ、やっぱ化け物だわ)


 環境が悪かっただけで、中身は完全に「経営者」だ。

 さすが、未来で巨大クランを支配していた女王だけのことはある。


「よし! 方針は決まったな!」


 クラウスが拳を握りしめる。

 最強の剣士エレナ、最強の参謀ミア、そして未来を知る猫(俺)。

 役者は揃った。


「父様! 裏のダンジョンに潜る許可をください! 俺たちで再調査して、キッチリ利益を出してみせます!」


 クラウスが意気揚々と、父ヴィルヘルムに振り返った。

 だが。

 父の反応は、予想外のものだった。


「……あー、その。……無理だ」

「え?」


 父は視線を泳がせ、脂汗を流しながら、衝撃の事実を口にした。


「ダンジョンの権利書な……実は今、手元にないんだ」




これにて、第四章完結となります!

少し息抜きの章としましたが、いかがでしたでしょうか?


こちらの作品は、カクヨム版で先行公開中です!


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