表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長編版:撫でられるのが仕事です。~裏切られ死んだ俺、猫に回帰して仲間を最強にプロデュースする~  作者: 堀籠遼ノ助(ほりこめりょうのすけ)
第一章 死ト回帰ト復讐ノ設計図

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/17

『回帰と混乱、そしてステータスにゃ』

 ――熱く、ない?

 

 あの灼熱が、嘘みたいに消えている。

 代わりに感じるのは、柔らかな日差しと、干したての布団のような匂い。


(……ここは? 死後の世界か? にしては、身体が重い……いや、軽い?)


 ゆっくりと目を開ける。

 視界が変だ。

 周囲の家具が巨大に見える。天井が果てしなく高い。


「まあ、ヴィルヘルム様! ご覧になって! あの子猫、やっと目を覚ましましたわ!」


 聞こえた声に、息が止まりそうになった。

 若い頃の母――イザベラ・バウマン。

 優しく微笑む姿は、俺の記憶にある病床の姿とは違う。健康的で、美しい。

 その隣では、熊のように大柄な男――父、ヴィルヘルム・バウマンが屈託なく笑っている。


(なんで……母さんも父さんも……? もう、この世には……)


 混乱した俺の視界に、ふと自分の手が映った。

 黒い。

 小さい。

 柔らかい毛に覆われた――前足だ。

 力を入れると、ピンク色の肉球の間から、小さなカギ爪がスッと出る。


(は? 俺の手、これ?)


 その時、俺の小さな体がふわりと抱き上げられた。


「やったー! 元気になった! 父様、母様、手伝ってくれてありがとう!」


 俺を抱き上げているのは、まだ線の細さが残る、真っ直ぐな灰色の瞳をした少年。

 どこか頼りない、けれど希望に満ちた顔。

 十四歳の、俺。クラウス・バウマン。


(……は? 俺? 俺が、俺を抱えているんですけど??)


「どうしたんだ、目を真ん丸にして。驚いている顔も可愛いなあ、ノワールは!」


 十四歳の俺がそう言って、俺の顔をわしわしと撫でまわす。


(ノワール? ガキの俺が、俺のことをそう呼んだのか?)


 混乱する俺をよそに、母さんが優しく微笑みかけた。


「よかったわね、クラウス。森で倒れているのを見つけた時はどうなるかと思ったけれど」

「うむ。お前が三日三晩、必死に看病した甲斐があったな」


 父さんの言葉に、俺の思考が再起動する。

 森で、見つけた? 必死に、看病?

 記憶の彼方にある光景が、鮮やかに蘇る。

 雨の日。震える黒猫。俺が初めて「守りたい」と思った小さな命。


(嘘だろ……。これ、俺がノワールを拾ったあの日か!?)


 つまり、俺は死んで、十四年前に戻り、あろうことか「ノワール」に転生したってことか?

 確かめなければ。俺はチビクラウスの腕から飛び降りた。

 着地。スタッ。

 完璧なフォームだ。四本足のバランス感覚が凄まじい。


 俺はてこてこと壁際の姿見まで歩き、そこに映った自分の姿を見た。


 ふわふわの黒毛。大きな金色の目に太くてしなやかなしっぽ。二頭身の愛らしいフォルム。


(……か、可愛い。じゃなくて、俺だ。完全にノワールになってる)


 そこにいたのは、未来で俺を庇って死んだノワールが子猫だった時の姿だった。思わず涙がにじむ。


(こんな形とはいえ、また会えたなノワール……ありがとう。だけど……)


 絶望が胸をよぎる。この状況はきっと、ノワールが与えてくれた奇跡。だが、こんな無力な体でどうやって復讐を……。


(……待てよ。猫になったということは、種族特性スキルを授かっている可能性がある。未来で俺が扱っていた偵察猫たちも【危機察知】を持っていたはずだ)


(確認してみよう。ステータス・オープン(開示)!)


 眼前に、見慣れたウィンドウが浮かび上がった。



《術者[ノワール(0歳)]のステータス閲覧》

 Lv. 1

 種族:黒猫(幼体)

【現在職業】

・愛玩動物(適正:A)

【パラメータ】

 STR(筋力):2 (E)

 VIT(耐久):2 (E)

 AGI(敏捷):12 (C)

 DEX(器用):8 (B)

 INT(魔力):45 (S)

【保有スキル】

・危機察知 Lv.1

・魅了 Lv.0



(職業、愛玩動物かよ!)


 俺は心の中で盛大にツッコミを入れた。

 三十年間、人間として必死に働いてきた俺の現在の職業が、適性ばっちりの愛玩動物。

 がっくりと肩を落としつつ、下のパラメータに視線を戻した。



 【パラメータ】

 STR(筋力):2 (E)

 VIT(耐久):2 (E)

 AGI(敏捷):12 (C)

 DEX(器用):8 (B)

 INT(魔力):45 (S)


(うわぁ……。筋力2……)


 スライムでももう少しあるぞ。ドアノブすら回せないじゃないか。

 だが、INT(魔力)の才能値が『S』になっているのは、でかい。


(今は誰も魔力の重要さを知らないが……)


 数年後に起きる、世界規模の異変。

 それ以降、剣だろうが弓だろうが魔力前提の戦いが必要となる。

 未来の俺が弱小ギルドに所属していたのも、魔力が致命的に低かったことが原因だ。


(……だからこそ、このINT『S』は希望の光だ。……で、最後のこれはなんだ?)


 俺は、一番下のスキル【魅了】に意識を向けた。


『説明:対象へ癒しを与えることに成功した場合、「魅了ゲージ」が蓄積される』


(癒しを与える……? よく分からないスキルだな。だが、これは間違いなくユニークスキル。……使い方次第では、とんでもない武器に化けるかもしれないかもしれない)

 【魅了】スキルにさらに深く意識を向けると、ウィンドウの下に新たな情報が表示された。


・現在の魅了ゲージ:

 少年クラウス:0%

 イザベラ(母):100%(MAX)

 ヴィルヘルム(父):80%


(……なるほど。あの人たち、俺のこと大好きだったもんな)


 ふと、胸が温かくなる。この数値は、そのまま両親からの愛情の深さだ。未来では守れなかった家族。彼らの愛が、今は俺のゲージになっている。

 だが、問題はここだ。


 少年クラウス:0%


(俺、ゼロかよ!)


 拾ってきたばかりで、まだ懐かれていないということか。

 だが、スキルを使うにはゲージが必要らしい。Lv.0の現状を打破するには、まずはこいつのゲージを溜めるしかない。


(そのためには、まず最初の癒しの対象が必要だ。……幸い、この家には最高の実験台がいる)


 俺は心配そうに見守っている、少年クラウスへと向き直った。


(……よし、まずは『癒し』の一手だ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ