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長編版:撫でられるのが仕事です。~裏切られ死んだ俺、猫に回帰して仲間を最強にプロデュースする~  作者: 堀籠遼ノ助(ほりこめりょうのすけ)
第三章 再会シタ災厄ト炸裂スル鉄拳

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『猫の説教と、覚醒した相棒にゃ』

 バウマン邸、クラウスの自室。

 重苦しい沈黙の中、少年クラウスは部屋の中央で正座をしていた。

 その隣には、なぜかエレナもちょこんと正座している。騒ぎを聞きつけて(あるいは俺をモフりたくて)やってきた彼女は、状況を察して同席しているようだ。


 そして俺は、ベッドの上から彼らを――主にクラウスを、冷ややかな目で見下ろしていた。


(……説教だ。Lv.1の【思考伝達】で、今の俺の怒りを、この愚か者に叩き込んでやる)


 俺は意識を集中し、拙い接続パスを通して、イメージと言葉の断片を送り込んだ。


『……ばか……! なんで……たたく!』

『いった!……おうち……おわる!』


 脳内に直接響く、ノイズ混じりの不鮮明な声。

 クラウスがビクッと肩を震わせ、顔を上げた。


「……っ! やっぱり、あの時の声はノワールだったんだな……」


 彼は、痛ましげな表情で俺を見つめた。

 現場で聞こえた「母さんが死ぬ」という警告が、幻聴ではなかったことを再確認し、その重さに押しつぶされそうになっている。


「ごめん……聞こえてた。聞こえてたけど……止められなかった」


「えっ、ちょっと待ってクラウス!?」


 隣にいたエレナが、カッと目を見開いてクラウスの肩を掴んだ。


「ノワ様のお声が聞こえるってどういうこと!? 私には『にゃあ』という尊い鳴き声しか聞こえないのに!」

「え、あ、うん……。耳じゃなくて、直接頭に響くというか……」

「ずるい! ずるいずるい! なんでクラウスだけ!? 私だってノワ様のありがたいお言葉を聞きたいのに!」


 エレナは「むきーっ!」と頬を膨らませ、本気で嫉妬しているようだ。

(……ん? エレナには聞こえていないのか?)


 俺は改めて、自分のステータスウィンドウを開き、今回発現したスキルの詳細を確認した。


《アビリティ詳細》

【思考伝達】Lv.1

 効果:対象の脳内へ、術者の意思を言語化して直接送信する。

 対象範囲:【同一の魂を持つクラウス・バウマン】限定


(……なるほど。そういうことか)


 俺は納得した。

 これは【魅了】による支配の一環ではなく、俺とこいつが「同一人物」であるがゆえの、魂の混線バグのようなものらしい。

 つまり、今後どれだけレベルが上がっても、エレナや他の人間に俺の声が届くことはないということだ。


(好都合だ。俺の正体がバレるリスクは最小限で済むし、クラウスとだけ密談ができる)


 俺が内心で安堵していると、エレナがハッとした顔で手を合わせた。


「はっ……そうか! これは『魂の絆』なのね! 飼い主と使い魔の間にしか通じない、秘密のテレパシー……! くぅ~っ、嫉妬しちゃうけど、それはそれで尊いです!」


 彼女は勝手に納得し、うっとりと俺を見つめている。

 面倒なことにならなくて助かったが、その信仰心の深さは若干怖い。


(……まあ、いい。今はクラウスへの説教が先だ)


 俺は思考を切り替え、再びクラウスに向き直った。

 拙い言葉でも、今は伝えるべきことを伝えなければならない。


『……くらうす……きけ……。あいつ……ぶた……きけん』

『よわみ……にぎる……。だめなら……かあさん……びょうき……しぬ』


 途切れ途切れの言葉。だが、その内容は伝わったようだ。

 クラウスの顔から、さらに血の気が引いていく。


「母さんが……死ぬ……? 本当に、僕が殴ったせいで……?」


 彼は震える手を見つめ、絶望に顔を歪めた。

 だが、俺は彼を慰めない。事実を直視させ、次の一手を打たせる。それが「プロデューサー」の役割だ。


『……なく……だめ……。まだ……できる』

『よる……やかた……いく……。よわみ……さがす!』


 俺は【思考誘導 Lv.4】を併用し、「豚貴族の館」のイメージと、「潜入」という強い目的意識を彼の脳裏に焼き付けた。


「……わかった」


 クラウスは涙を拭い、強い瞳で俺を見た。


 「やるよ、ノワール。僕が招いた種だ。僕自身で刈り取る。……母さんを守るためなら、泥棒にだってなってやる!」


(よし。覚悟は決まったようだな)


 俺は満足げに喉を鳴らした。

 だが、この無鉄砲な少年に単独潜入させるのは不安すぎる。

 彼には鍵開けの技術もなければ、隠密行動の経験もない。もし見つかれば、その時点でバウマン家は終わりだ。


(サポートが必要だ。それも、奴の死角から動き、いざという時にフォローできる存在が)


 ……俺が行くしかないな。

 猫の体なら、狭い場所への侵入も、気配を消すことも容易だ。

 それに、いざとなれば俺の「愛らしさ」を武器に、見張りの目を欺くこともできるかもしれない。


 俺は立ち上がり、窓の外――夕闇が迫る空を見上げた。

 未来で暗い噂の絶えなかった男、豚貴族バロン・ボルク。今回はその闇、白日の元に晒してやろう。


(待っていろ、豚野郎。お前の社会的地位、地の底に落としてやる)


 俺の瞳が、夜行性の怪しい光を帯びて輝いた。

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