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43. ウェストゲート領の秘密

ザントの家を出たアスクとアズインは、宿の「大銀貨1枚(二人分)」がもったいないと思いつつも、まずは装備を整えるための休息と情報収集が必要だと判断し、町の中心にある安宿にチェックインした。

「今夜はここでゆっくり休んで、明日から公園で活動を開始する」アスクは言った。

「はい。久しぶりのベッドです」アズインは嬉しそうな表情を浮かべた。

二人は宿の一階にある食堂で夕食をとることにした。宿の食堂は、安宿にしては賑わっており、地元の労働者や、地方から流れてきたと思われる新米の冒険者たちでごった返していた。


テーブルに着くと、アスクはメニューを見た。この町の名物は里芋のようで、里芋を使った料理が並んでいる。

二人が注文したのは、素朴ながら温かい料理だった。

• 里芋の煮っ転がし

• 里芋のねっとりした味わいのコロッケ

• もちもちした食感の里芋パン

そして、アスクはもう一品、メニューの隅に書かれていた目を引く料理を頼んだ。

• 牛と玉ねぎを甘辛く炒めたライスバーガー


料理が運ばれてくると、アズインの目が輝いた。

「わあ、美味しそう!」

アズインはまず里芋のコロッケを一口頬張った。そのねっとりとした優しい甘さに感動したようだ。

「アスク様! これ、すごく美味しいです! 里芋って、こんなに色々な食べ方ができるんですね。煮っ転がしも味がよく染みていて、旅の疲れが癒やされます」

「ああ。この里芋パンも、普通のパンよりもちもちしている。この町の土壌が、里芋を育てるのに適しているんだろうな」アスクは頷きながら、頼んだライスバーガーに手を伸ばした。

アスクはライスバーガーを大きく齧った。醤油のような風味の甘辛いタレで炒められた牛と玉ねぎが、米を固めたバンズによく合っている。

「これも絶品だ、アズイン」アスクは驚きを隠せない。「この牛と玉ねぎの甘辛い味付けと、ご飯のバンズの組み合わせは、故郷を思い出す味だ。この料理が食べられるなら、この町に滞在する価値がある」

アズインも一口もらうと、その濃厚で力強い味に目を丸くした。

「本当に! この甘じょっぱい味が最高です。これなら、明日のクエストも頑張れそうです!」

アズインは心から料理を楽しんでおり、その無邪気な様子に、アスクも少しだけ険しい表情を緩めた。異世界に来て、初めて感じる日常の豊かさと、共に食事をする信頼できる仲間の存在の心強さを感じていた。


アスクは、食事をしながら、周囲の会話に静かに耳を傾けた。壁の向こうにいる者たちの情報や、冒険者の非公開の情報は、ギルドの掲示板よりも価値があることが多い。

右隣のテーブルでは、二人の古参冒険者が酒を飲みながら、この領地の話題を熱っぽく話していた。

「しかし、このウェストゲート領は気候が極端すぎる。東は湿地と森なのに、領地の中央はあれだ」一人がグラスを叩いた。

「ああ、あの大砂漠か。本当に信じられねぇよな。数百年まで、あの場所には巨大な山脈があったんだぜ? それが、空から降ってきた巨大な隕石で全部消し飛び、大地がひっくり返って砂漠になったんだから」もう一人が酔った声で言った。

アスクは表情を変えずに、その情報に聞き入った。

(巨大隕石による山脈の消失と砂漠化……。自然の法則を超越した事象が、この世界には存在する。そして、その影響がこの領地の環境を極端にしている。異常な環境は、通常の場所よりもより強力な素材や魔物を生み出す可能性がある)

「そんな話、冗談みたいだが……」

「冗談じゃねえ。その隕石が**『呪い』の根源だとか、『異界の門』**だとか、色々噂がある。だから、この領地は厄介だが、その分、他の領地では手に入らない貴重な資源があるのも確かだ」


アスクの左隣のテーブルでは、Dランクと思しき二人組の冒険者が、酒を飲みながら熱っぽく話していた。

「しかし、Dランクに上がるのが本当に難しい。半年で名声5,000がボーダーライン、どういう設定だよ!」一人がグラスを叩いた。

「仕方ねえだろ。今は『リーグ制度』があるんだ。コツコツ稼ぐより、同盟に入ってリーグ戦で優勝する方が早い。名声のランキングは半年でリセットされるんだから、5,000名声を稼いで1,000位以内に入らないとDランクにはなれない」もう一人が酔った声で言った。

アスクは表情を変えずに、その情報に聞き入った。

(名声5,000がDランクのボーダーライン。そして、半年リセットとランキング1,000位以内……。これで目標の具体的な数値が判明した。やはり、自力での到達は非効率的すぎる。同盟が必要だ)

その後、二人はさらに大きな話題に移った。

「その同盟の話で言うと、おれたちがいるウェストゲート領には、マジでとんでもない連中の拠点があるんだってな」

「ああ。『カース・キーパーズ』だろ。世界四大同盟の一つだぞ。しかも、創設者が王族兼冒険者っていう、ちょっとイカれた集団だ。あそこのリーグ戦に入れたら、Dランクなんて一瞬だろうよ」

「まぁ、新米が四大同盟なんて夢のまた夢だ」

アスクは、パンをゆっくり噛みながら、静かに目を閉じた。

(世界四大同盟……カース・キーパーズ。王族兼冒険者。同盟への加入とリーグ優勝が、最短でSランクを目指す鍵となる。このウェストゲート領は、そのための絶好のスタート地点だ)


アスクは夕食を終え、アズインと共に自室に戻った。

「アスク様、Dランクになるには名声5,000が必要で、半年で1,000位以内に入らないといけないのですね」アズインは心配そうに言った。

「ああ。地道なFランククエスト(名声150)で稼ぐのは効率が悪いことが確定した。だが、目標が定まったのは大きい」アスクは冷静だった。

「では、私たちもそのカース・キーパーズとかいう同盟に入るのですか?」

「まだ未定だ。最終的には四大同盟のどこかに入ることになるな。だが、まず手持ちの資金(大銀貨50枚)を確保し、最低限の名声(150)を稼がなければ、誰もFランクの新人など相手にしないだろう」

アスクは明日からの作戦を整理した。

「予定通り、明日の朝から水辺の公園でキャンプを張り、確実にフクロウを捕獲し、大銀貨50枚と名声150を得る。それが、Dランク5,000名声への最初の足がかりだ」

アスクはベッドに横になりながら、窓の外の星空を見上げた。

(目標は定まった。あとは、オレの知るゲームのセオリー通りに、最速で実行するだけだ)

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