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32.出会いと別れ

難しいシーンで、何度も書き直しをしました。

うーん(-.-)

アスクは、チャンドラの依頼で受けた武器やアイテムのエンチャント作業に没頭していた。張り詰めた地下の一室で、磨かれた刃が放つ冷やかな光。彼は一つ一つのアイテムに魔力と魂を吹き込み、三角形のアングルを以前よりも容易く伸ばせるようになっていた。魔力の線が初級の時よりも強く、丈夫に感じる。


アスクが額に汗を浮かべながらも、冷静な声で指示を出す。

「アズイン、エンチャントに集中したい。付与済みのアイテムを片付けて。それと、テーブルのランタンの火力を少し強めにして。」


アズインは落ち着きを崩さず、低い声で応じる。

「かしこまりました。資材の管理も確認します。地下の湿気が籠らないよう、通気口の調整も見てきますね。」


石壁が微かに熱を帯び、今まさに付与されようとしている魔力の周波数が、土台の岩盤深くに静かに染み渡っていく。


アスクは静かな机の周りに座り、指先でエンチャントするためのアイテムを触りながら心の中で焦りを拾い上げていた。腰を据えた新しい従者、アズインが静かに近づき、必要なアイテムを並べる。


アズインが、丁寧に尋ねる。

「これでよろしいでしょうか。」

アスクは優しく頷きながら答える。

「ああ、ありがとう。まずは練習用のアイテムから始めよう。」

アズインはアスクの意図を察し、先回りして尋ねる。

「調整からとりかかるのですね。特に重要な長剣になりましたら、改めて準備いたします。」

アスクはにっこりと答える。

「そうだね。始めはマイナス補正が大きく出てしまうことがある。慣れてきたタイミングで、貴重な武器に集中する方が効率的だからね。」

アズインは静かに目を細め、アイテムの配置を一つ一つ確認する。彼は付与済みのアイテムの微かな光の揺らぎを観察しながら、静かにそれらを横へ並べていった。


作業部屋の一角には、チカのためにエンチャントしたナイフがあった。彼女とアスクの間には、かつては冗談と励ましが行き交い、互いの夢を語り合う時間があった。しかし、アズインと共に過ごす時間が増えるにつれ、その距離感は微かなすき間となって広がってしまいそうだった。



⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰遠征⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰



そんなある日、チカは突然、胸の奥に静かな決心を宿らせた。日常の喧騒の中で、彼女の声はほんの少しだけ震えた。

「アスク、私、チャンドラさんの遠征に参加することになったんだ。」

その言葉は、彼女の唇を離れる前に、彼女自身の胸の鼓動と同調して震えた。


アスクは呼吸を整え、言葉を探すより先に、彼女の言葉の意味を自分の心にかみしめた。遠征の名は、希望の灯を灯す響きであり、同時に別れの風を呼び起こす合図のように聞こえた。彼はゆっくりと頷き、口元に静かな微笑みを浮かべた。微かな沈黙のあと、彼は語る。

「チカ、遠征の話を聞けてよかった。君の選択を、ボクはしっかり受け止めるよ。ボクはここに残る。でも、遠征の間も、君の夢を忘れないようにする。」


彼らは互いの視線を交わし、短い沈黙の中に、過去の笑いと希望が混ざり合うのを感じた。チカの瞳には、風に揺れる草のような揺らぎが映り、アスクの胸には、遠征へ進む決意と、彼女を見送る責任感が同時に宿っていた。


別れの前夜、二人は静かな場所を選んだ。星の数が少ない夜空の下、言葉は少なくても、心は十分に伝わる。チカは遠征の計画と、彼女が持ち出すべき準備のリストを、淡い光に照らされた紙の上にそっと並べた。アスクは彼女の肩に手を置き、かつてのような熱い声を取り戻す代わりに、軽く頷くだけで十分だった。


「行ってらっしゃい、チカ。ボクが一生懸命にエンチャントしたこのダガーを使って欲しい。」

アスクの言葉は、風へと消える前に、彼女の耳元で確かな音となった。


チカは微笑み、瞳の奥に宿る決意を強く結び直した。

「ありがとう、アスク。ランクアップして一流の冒険者になるんだから!」


アスクは、チカの背中が見えなくなるまで、その場を動けなかった。風が運んだチカの明るい声が、彼の胸の奥でこだまする。

「ランクアップ……か」。

ダガーに込めたささやかな魔力が、彼女を守ってくれるようにと、彼はただ強く願うしかなかった。


遥か地平線の向こうへ。彼女の輝く瞳に映る未来を信じ、アスクは静かに地下の工房の扉を閉めた。再会のとき、彼女がどれだけ変わっているのかを想像しながら。

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