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26.休息

昔、熱中していたゲームの話ですが、朝ごはんを食べた後、何も飲まず食わずでゲームに突入。気付けば10時間経過!これを3日間も続けてしまった。まさに「ゾーン」に入り込んだ瞬間ですね。さて、そんな中、アスクもエンチャント三昧。1アイテムあたりわずか5分でエンチャントを施し、1時間に12個弱も夢中でエンチャント。3日間で合計300本!これは単なる作業じゃなく、まさに修行の域ですな。

疲れ果てたアスクは、エンチャントを終えた後、静かに深い眠りに落ちていた。彼の周りには、魔法の光がほのかに揺らめくアイテムが静かに存在感を主張していた。その夢の中で、チャンドラが優しく近づき、手に小さな宝箱を持っていた。


目を覚ましたアスクは、ぼんやりと周囲を見回し、そしてチャンドラが差し出す宝箱に気づいた。箱の中には、さまざまな貨幣がきらめいていた。茶色の銅貨、光る銀貨、巨大な銀貨、大きくて輝く金貨、そして白金のように美しい白金貨もあった。


アスクは、何の価値も知らないまま、声を震わせて尋ねた。


「これらは…貨幣ですか?」


チャンドラは微笑みながら答えた。


「ああ。これはこの国の貨幣だ。先日のダンジョン討伐とエンチャントについての君への報酬を用意しようと思ってな。でも、君はそれぞれの価値を知らないだろう。だから、教えてあげよう。」


アスクは興味深そうに耳を傾けながら、チャンドラの言葉を待った。


「銅貨は、最も価値が低いものだ。日常の小さな買い物に使われる。銀貨はそれより価値が高く、より高価な品物と交換できる。大銀貨は、さらに大きな価値を持ち、より多くの品を買える。金貨は、貴重なものと交換されることが多く、王族や貴族が使うこともある。そして白金貨は、非常に希少で高価なものだ。特別な取引や、最も価値のある品物と交換されることが多い。」


アスクは目を輝かせながら、少しずつ理解していった。


「つまり、これはお金の種類なんですか?」


「その通りだ。貨幣は、価値を示すための目印だ。君がこれらを使えば、欲しいものと交換できる。これが、『価値』というものだよ。」


アスクは、チャンドラの提案に耳を傾けた。彼の声は静かで温かかった。


「アスク、貨幣の価値を知るために、町へ出てみるといい。いろいろな品物の値段を見て回ることで、少しずつ理解できるだろう。」


その時、チカが静かに近づいてきて、笑顔を浮かべながら言った。


「じゃあ、私が一緒に案内するよ!アスクには、エコロアの町を楽しんでいってもらいたいし。」


アスクは目を少し開き、微笑みながら頷いた。彼の顔には、少しだけ希望の光が射した。




⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰町へ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰



真昼の太陽が容赦なく照りつける時、陽炎が揺らめき、地平線の向こうの景色を歪ませる。

「チャンドラさん。町の中心部ではなく、町の端っこから歩くんですか? 」

アスクが額の汗をかきながら、少し怪訝そうに質問した。

「ああ、アスク。この町の本当の姿を知るには、この道を行くべきなんだ。」

チャンドラは涼しげな顔で答えた。彼の視線の先には、町の外れにある、簡素な露店が並ぶ一角があった。

「この町の血流、つまり貨幣の流れを辿るんだ。最下流の銅貨から、最も上流にある金貨まで、その流れを肌で感じれば、この町の全てが分かる。」


最初に足を踏み入れたのは、簡素な木造の屋台が並ぶ地区だった。農夫が運んできた野菜や果物が並び、日雇い労働者が汗を流して飲む水が売られている。山盛りのリンゴは1つで銅貨1枚、甘い香りが漂う桃は一つ銅貨2枚だ。アスクはリンゴを見つめながら、これがどのくらいの価値なのか思案した。


次に、屋台の前に立ち寄る。焼きたてのパンが3つ銅貨3枚。香ばしい香りに誘われ、つい購入。店主は笑顔で、「新鮮なパンですよ、どうぞ」と声をかけた。アスクはこれが今日を生きるための小さな金銭が循環する場所だと実感した。


アスク達は市場の賑わいに紛れてパンをかじっていた。ふわふわのパンから漂う香ばしい香りに誘われて、彼は一口ほおばると、自然と笑みがこぼれた。


その時、横にいたチカが静かにアスクの右腕を覗き込んだ。アスクが痛そうなそぶりを一切みせないので、チカは少し安心して優しく彼の手を撫でながら、「問題ないわね」と微笑んだ。アスクもまた、軽く頷いて安心した様子を見せた。


次に、チカはチャンドラの方へ目を向けた。チャンドラは少し動かしながら、「全治半月くらいだ」と答えた。彼の声には落ち着きと確信が込もっており、皆の心に少しの安堵をもたらした。


少し街の中心部へと進めば、その光景は一変する。職人が手掛けた品物が立ち並ぶ通りでは、鋭い切れ味の道具や、美しい装飾品が店先に並べられていた。それらを手に入れるには、10枚の銅貨を束ねた銀貨が必要となる。旅の行商人が遠い国から持ってきた珍しい香辛料や、丈夫な麻の布。日々の暮らしに彩りを与える品々が、銀貨と引き換えられていく。


その後、少し離れた場所にある道具屋へ足を向ける。ここでは銀貨すらも小さく見えてくる。武器や防具が並ぶ棚。銀貨では到底手が届かない代物だ。その重厚な価値は、10枚の銀貨を束ねた大銀貨で測られる。これらの品々は、冒険者や戦士たちにとって重要な投資だ。アスクは価格を見るたびに、これらの品物がどれほど価値を持つのか、少しずつ理解を深めていった。


昼時、町のレストランに入る。看板のメニューを見ながら値段を確認する。普通の定食とエールのセットは銀貨1枚。アスクは、旅の資金や生活のために、何にどれだけお金を使うべきかを考えていた。


独特の賑わいに包まれる店内では、獣人の豪快な笑い声、エルフの静かな話し声、ドワーフの酒を呷る音。そうした雑多な喧騒が、チャンドラたちの座るテーブルにも届いていた。

向かいに座ったアスクは、熱心に耳を傾けている。三日間のエンチャントに耐え抜いたにもかかわらず、その瞳には疲れの色よりも、知識を求める強い光が宿っていた。

「ここには色々な種族がいるんだ。」

チャンドラは、アスクの皿に盛られた肉の塊を指差して言った。

「この肉はな、獣人の狩人から買ったもんだ。彼らは森の奥深くに住んでて、優れた狩りの技術を持ってる。一方、あのパンを作ってるのは、ドワーフの職人だ。彼らは土を操るのが得意で、焼く技術も一級品だ。」

アスクは、肉とパンを交互に見つめ、小さな声でつぶやいた。

「すごい……。共存しているのは素晴らしいですね……」

その言葉を聞いて、これまで黙って話を聞いていたチカが、楽しそうに口を開いた。

「面白いでしょう? 昔、お父さんが言ってたんだけど、こういった町は『ダイバーシティ』って言うんだって。いろんな種族が行き交うから、いろんな文化や技術が混じり合って、この町は今後も発展していくんだって。」

アスクは、チカの方を向いた。そして、少しだけ不安そうに眉をひそめる。

「でも……、違う種族同士で、争いになったりしないんですか?」

その問いに、チャンドラは静かに首を振った。

「まったくないとは言えない。でも、たいていの場合は、お互いの違いを認め合って、うまくやろうとしてる。人間が優れてるとか、獣人が劣ってるとか、そういうのはただの偏見でしかないからな。」

チカが、ミニトマトを口に運びながら、にっこりと微笑む。

「そうだよ、アスク。みんな違うから面白いんだよ。私たちだって、人間だけど全然違うんだから!」

チカの言葉に、アスクは小さく笑った。そして、再び食事を口に運んだ。その顔には、先ほどの不安の色は消え、好奇心に満ちた輝きがあった。アスクは、そんなチャンドラとチカの姿を、ただ温かく見つめていた。

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