23.ダンジョンの謎
一週間の険しい戦いを終え、チャンドラ達はようやくダンジョンの出口に立っていた。疲労と喜びの入り混じる表情が彼らの顔に浮かんでいた。薄暗く荒れた空気が彼らの髪や衣服にまとわりつき、外の光が彼らの目を眩ませた。
アスクはダンジョンから戻ったばかりの仲間たちを見て、まずはチャンドラの左手に目を向けた。そこには、焦げたような跡が薄く広がり、雷に打たれたことを物語っている。その傷のせいか、チャンドラの動きはどこかぎこちない。アスクは胸の奥が締め付けられるのを感じた。
「チャンドラさん、大丈夫ですか?左手、負傷してるみたいですけど」とアスクは優しく声をかけた。
「気にするな、アスク。ちょっとした火傷だ。」
チャンドラはそう言って、左手の手のひらをひらひらと振って見せた。熱で焦げた皮膚は痛々しいが、本人はまるで大したことないと言うように笑っている。アスクは、心配そうにその火傷を見つめながらも、彼の明るさに少しだけ安堵を覚えた。
「レアなモンスターとエンカウントしたんだ。」
チャンドラは楽しそうに、そう付け加える。彼の顔には、好奇心と興奮に満ちた輝きがあった。それは、まるで宝物を見つけた子供のような、純粋な喜びの光だった。アスクは彼の冒険心に触れ、この火傷がただの怪我ではなく、彼にとっての勲章なのだと悟った。
「まぁ、こんな冒険も悪くない。そうだ、アスク。仕事をしてみないか?ちょっとした依頼だけど、俺たちのチームにとっては重要なことだ」
アスクは興味をそそられた。チャンドラの表情が少し真剣になった。
「何の仕事ですか?」
チャンドラは少し照れくさそうに、しかし真剣な眼差しを向けた。
「武器にエンチャントを施す仕事だ。アスクの魔力を借りたいんだ。武器に新しい力を吹き込むみたいなものだと思っていい。」
アスクは頷いた。自分の魔力が役に立つのかわからなかったが、チャンドラの頼みを引き受けることに、迷いはなかった。
「いいですよ。やってみましょう。」
チャンドラは嬉しそうに笑みを浮かべ、左手を気にする仕草をしながらも、次の冒険への意欲を見せた。
⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰帰還⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰
ダンジョン――それはただの危険な迷宮ではなかった。それは生きた存在のようなものだった。深く入り込むほどに、未知の罠と魔物が待ち受けている。でも、その危険を超える価値もまた、確かにあった。
夕暮れの薄明かりが馬車の窓から差し込み、車内は静寂に包まれていた。アスクは窓の外の景色をぼんやりと眺めながら、ダンジョンの話に耳を傾けていた。隣にはチャンドラが静かに座り、深い声で語り始めた。
「魔石や宝箱がなければ、ダンジョンには誰も近づかない」チャンドラの声が、馬車の静寂を破った。「あれらはまるで魔の引力みたいなもんだ。冒険者たちは金や宝物を求めて、危険を顧みずにダンジョンに突入する。でも、その中には…」
彼は一瞬ためらいながら続けた。「ダンジョンはまるで生きてるみたいだ。帰れなくなった者たちを飲み込み、養分にしているかのようだ。まるで、吸収しつづける生命体みたいに。」
アスクはその言葉に重みを感じ、静かに頷いた。彼らが目指す先は、ただの金銀だけではなかった。あの危険な迷宮の奥深くに潜む、未知の力や秘密を手に入れることだった。
「しかし、ダンジョンが長い間、誰も冒険者を迎え入れなくなると、な…」彼の声は穏やかだが、その中に重みがあった。「魔力が暴走し始めるんだ。最初は小さな異変だが、次第にその力は爆発的に膨らむ。」
アスクは興味深そうに目を見開いた。「魔力の暴走って、どういうことですか?」
チャンドラは少しだけ目を伏せて続けた。「ダンジョンは本来、バランスを保っている場所だ。だが、誰も入り込まなくなると、その中の魔力が蓄積される。やがて、その魔力が制御を失い、モンスターたちの活動が活発化し始めるんだ。」
「活発化ですか…?」アスクはつぶやいた。
「そうだ。始めはわずかな魔力の流出だ。しかし、その小さな亀裂はやがて広大な裂け目へと変貌しダンジョンの深淵から禍々しい力が溢れ出す。次第にそれは拡大し、ついには強化されたモンスターが溢れ出し、周囲の土地や人々にまで影響を及ぼすようになる。最悪の場合、地獄の扉が開き出し、デビルが出てきて、国全体を滅ぼすこともあるらしい。」チャンドラの声は重く、まるでその未来を見通しているかのようだった。
馬車の揺れに身を任せながら、アスクはその話に引き込まれていた。静かに、しかし確かな危機感が胸の奥に広がる。
「だからこそ、俺たちは気を付けなきゃならない。ダンジョンが長い間、封じられたままになるのは、ただの休眠じゃない。危険な状態なんだ。放置した国や領主が厳しい罰則を受けるのは、そのリスクを軽んじた代償だ。忘れてはいけない。ダンジョンは放置してはいけない、管理すべき存在なんだ。」
馬車の軋みと、遠くで聞こえる風のざわめきが、彼らの思索を包み込む。アスクは心の中はざわついていた。あの生きたダンジョンの奥に何が待っているのか、恐ろしさと共に自分の目で確かめてみたいとも思っていた。
ep.22→ep.23
【ステータスウィンドウ】
アスク
LV:23(ステータスポイント残+14)
AP:0/180(次のLVまで残り960)
HP:220/243←225
MP:60/72←60
SP:45/45←40
スキル:
- 短剣・中級、
- 水魔法・中級、
- 探知・中級←初級、
- 潜伏・初級、
- 鑑定・初級、
-アイテムボックス・初級
AV:筋力82+12、体力46+6、敏捷36+6、器用50、知力30+6、精神30+6




