1@9.雷獣
アスクの活躍はまだまだ先のため、チャンドラの戦闘シーンを少し盛り込みました。一話にまとめるため、いつもよりボリュームが多いです(//∇//)
チャンドラがラビのダンジョンに足を踏み入れてから、三日目が経過した。湿気を帯びた洞窟の奥深く、ひんやりとした岩肌を伝う水の雫の奏でる静かな調べが聞こえていた。
彼は仲間たちと共に中級階層のボスを退治したばかりの興奮を感じていた。仲間たちは、ダンジョンブレイクによるモンスターの討伐で疲れた表情を浮かべつつも、ボス戦の勝利を祝っていた。彼らは一息つき、少しの間休憩を取ることにした。
チャンドラは、仲間たちの元に行く前に、ふと視線を奥に向けた。ダンジョンの奥は上級階層へと続いており、時折ちらちらと闇に隠れた気配を感じていた。彼の心には、次の階層への冒険が待っているという期待感が膨らんでいく。予定では、このまま引き返すはずだったが、彼の心の奥底には上級階層の偵察をしてみたいという欲望が燻っていた。
「ライアン、一緒に上級階層を見に行かないか?」チャンドラは、元気な声で言った。
ライアンは、チャンドラの提案を聞いて少し考え込んだ。しかし、彼もまた冒険心に燃えていたのだろう。すぐに頷き、「わかった、行こうか!」と答えた。
二人は仲間たちに声をかけ、短い説明の後、上級階層へと向かうことにした。仲間たちは心配そうな眼差しを向けたが、チャンドラとライアンの決意を感じ取り、最終的には応援してくれた。
ダンジョンの雰囲気は一変し、進むにつれて緊張感が増していく。
「ここが上級階層の入り口かな?」とライアンが言った。彼の目には、暗闇の奥にわずかに光るものが見えた。その光は、何かの生物や存在が待っている気配を感じさせる。チャンドラは心拍数が上がるのを感じながら、周囲に警戒しながら進んだ。
チャンドラは息を呑み、慎重に進んでいく。上級階層には強力なモンスターが待ち受けていることは明白だった。二人は互いに目を合わせ、無言の合意を交わした。何が待っているか分からないが、ここまで来たのだから引き返すわけにはいかない。
一歩ずつ進むごとに、ダンジョンの奥から響く音が近づいてくる。まるで何かが目覚めようとしているかのようだった。チャンドラの心は高鳴り、冒険の興奮と恐怖が交錯していた。
「行こう、ライアン。何が待っているか見に行こう」とチャンドラが囁くように言った。
⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰上級階層⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰
深い緑に覆われたダンジョンの中、魔力の影響で生い茂る植物たちが、まるで生きているかのように揺れている。光が差し込むと、葉の間からキラキラとした光が反射し、幻想的な雰囲気を醸し出していた。しかし、その美しさの裏には危険が潜んでいた。
チャンドラは武器を強く握りしめて、ジャングルの周辺を警戒する。周囲には奇妙な音が響き、植生の中から何かが動く気配がする。
チャンドラは緊張感を持って前進し、彼は天眼を使って周囲を警戒している。突然、目の前に現れたのはうさぎ型のモンスターだった。その名も「リーフバニー」。緑色の毛皮で覆われたその体は、周囲の植物と一体化し、まるでそこに存在しないかのように見えた。
「出たな、リーフバニー…」チャンドラは息を呑み、構える。モンスターは鋭い牙をむき出しにし、彼に向かって跳びかかる。チャンドラはすぐに横にステップし、モンスターの攻撃をかわす。彼の反応はとても素早かった。
チャンドラは剣から魔法の力を解放し、赤い光を放つ。「ファイヤーボール!」炎の球体がリーフバニーに向かって飛んでいく。しかし、モンスターは素早く跳躍し、炎を避ける。
「逃がさない!」チャンドラは跳躍した方向を読んでおり、剣を振り下ろす。剣がリーフバニーの体に当たると、緑色の毛皮が切り裂かれ、モンスターは悲鳴を上げた。
しかし、リーフバニーはただ倒れるだけではなかった。彼は周囲の仲間を呼び寄せ、さらに二体のリーフバニーが現れた。チャンドラは驚きつつも、何か楽しんでいるように見えた。「おっ、増えたな…!」
新たに増加したモンスターたちがチャンドラに向かって突進する。彼は増加していくリーフバニーへの対応策を冷静に考えていた。
⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰サンダーロップ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰
チャンドラは、上級階層での狩猟を終え、30体ほどのバニーを仕留めた後、薄暗くなってきた空を見上げた。彼は、いささかの疲労を感じながらも、狩りの興奮で心が高鳴っていた。しかし、その興奮も次第に薄れ、彼の中に飽きが忍び寄ってきた。もう少しで撤退しようと決意した瞬間、空が急に暗くなり、どこからともなく雨雲が立ち込めてきた。
「これはまずいな…」チャンドラは、心の中で感じた予感を振り払おうとしたが、雷鳴が轟くと、彼の直感は裏切られなかった。雷が地面に落ち、その瞬間、強烈な光に包まれると、その先に現れたのは、サンダーロップだった。
その姿は、雷のような筋肉質な体に、電気が走るような美しい毛並みを持っている。尻尾は黄色い光を放っている。サンダーロップは、周囲の空気を震わせながら、チャンドラに向かって目を光らせた。彼の心臓は、戦意を掻き立てるような高鳴りを見せていた。
「ライアン、退路を確保してくれ!」チャンドラは、仲間に声をかけた。ライアンは少し戸惑いながらも、即座に動き出す。彼の役割は、チャンドラが戦う間に安全に撤退できる道を作ることだ。
「頼んだぞ、チャンドラ!」ライアンは、周囲を警戒しながら声をかける。その声に背中を押されるように、チャンドラはサンダーロップに向き直った。
「まさか、雷獣とエンカウントするとはな。こんなラッキーなことはないな!」
チャンドラはアイテムボックスから、耐雷属性のバングルを嵌めて、不思議な魔石の付いたワンドを左手に装備した。
緊張感が高まる中でサンダーロップに挑んだ。雷の音が響く中、サンダーロップは一瞬で距離を詰めてきた。チャンドラの身体が反応する前に、サンダーロップが素早く跳び上がり、空中で回転しながら彼に向かって落下してきた。
「くっ!」チャンドラは、直感で避ける。彼はサンダーロップの動きを読み、次の瞬間には反撃の態勢を整えた。彼の目は、サンダーロップの動きに集中していた。サンダーロップは、雷の力を宿した一撃を放とうとしていた。
チャンドラは、周囲の岩場を利用して身を隠す。彼の目の前には、雷のような速度で動くサンダーロップが、全身を電気で満たしている。その姿は、まるで生きた雷の化身のようだった。チャンドラは、心の中で緊張を感じながらも、冷静さを保とうとした。
「まずは、環境を利用しよう。」
チャンドラは、周囲の岩陰に身を潜め、サンダーロップの動きを観察する。彼の頭の中では、これまでの戦いで身につけた戦略が駆け巡っていた。サンダーロップは、加速系スキルのコンボ「電光石火」「疾風迅雷」「迅速」を駆使して、まるで空を舞うかのように戦場を駆け回っていた。
「今だ!」
サンダーロップが一瞬の隙を見せると、チャンドラは素早く岩場から飛び出した。彼の手には魔力を吸収するワンドが光り、サンダーロップの放つ雷魔法を吸い取る準備を整えていた。彼は、真剣な表情で雷の光を見つめる。
「この魔法を吸収して、魔石を成長させる…!」
サンダーロップが雷を放つ瞬間、チャンドラは岩陰から飛び出し、ワンドの力を最大限に引き出す。雷の魔法が彼に襲いかかると、ワンドが光り、魔力が魔石に吸収されていく。
「よし、稼がせてもらうぜ。」
チャンドラは、雷の魔法を吸収したことで、魔石のエネルギーを増大させた。彼は、今度は自らのスキルを駆使し、攻撃を仕掛ける準備を整えた。サンダーロップの動きが一瞬止まったその瞬間、彼は全速力で駆け出し、素早い斬撃を放った。
「スキル・疾風剛撃!」
しかし、サンダーロップもまた、すぐに反応し、チャンドラの攻撃をかわす。彼は、次の一手を考える余裕もなく、再び追撃を受ける。
「くそ、やっぱり速い…!」
チャンドラは、戦況を把握し直し、再度岩場に隠れた。彼は、電光石火のスキルがもたらす圧倒的な速度に苦しむ一方で、彼自身の戦略を練り直す必要があった。サンダーロップの動きに合わせて、次の雷魔法を吸収するタイミングを見計らう。
「二度目のチャンスだ…!」
チャンドラは、再び岩場から飛び出し、サンダーロップの雷魔法を狙い撃つ。彼のワンドが再び光り、魔力を吸収する。その瞬間、チャンドラは対雷属性のバングルの消耗に気づいた。
「二発目で限界かぁ。どれだけ威力があるんだ!?あの雷魔法は…天性級かぁ」
サンダーロップの戦闘が決して有利に進まないことを理解したチャンドラは、ついに撤退を決意した。周囲を見渡すと、ライアンの顔には疲労と不安が漂っている。彼の心の中には、戦うことへの執念が残っていたが、冷静に判断することが最優先だと自分に言い聞かせた。
「ライアン、撤退だ!」チャンドラは声を振り絞った。彼は頷き、互いに目を合わせた。その瞬間、彼らの間に流れる緊張感が、撤退の決意を一層強固にした。
チャンドラは、足止めの切り札を手にした。これは、彼が長い間温めてきた強力なアイテムだった。彼の心には、仲間を守るために戦うという強い意志が宿っている。アイテムを発動させるため、入り口までの直線距離まで走る。
「ライアン!目と耳を塞いで、全力で走れ。」チャンドラは叫び、アイテムをサンダーロップの方へ叩きつけた。すると、地面から強烈な閃光が辺りを照らすと同時に、強烈な爆発音が鼓膜を犯していく。
さすがのサンダーロップも足を止め、混乱が広がる。その隙に、チャンドラとライアンは逃げることができた。
だが、彼の心の中に安堵の気持ちが芽生えた瞬間、背後から強烈な雷魔法が襲いかかった。サンダーロップが高領域の雷の魔法を放ってきたのだ。振り返る間もなく、彼は左手のワンドで魔力を吸収するが、バングルは壊れて、激しい痺れを感じた。まるで、全身の力が一瞬で奪われるかのようだった。
「チャンドラ!」ライアンの声が耳に飛び込むが、彼はその声をかき消すように、痛みと共に自らの手を見つめた。左手は麻痺し、動かすことができない。
「心配ない、逃げるぞ。ライアン!」チャンドラは落ち着いた声で答える。自分の手が動かないという事実が、彼の心を締め付けているにも関わらず、冷静だった。
ライアンは一瞬戸惑ったが、チャンドラの真剣な表情を見て安心した。彼らは何とか、上級階層から脱出するのであった。
チャンドラの切り札は、ラビットモンスター全体の眼と耳を狙った閃光手榴弾のようなものです(*^▽^*)




