17.スキルの書
馬車が町を離れ、ラビの森へと向かう道中、アスクの表情は険しくなり、胃がキリキリと痛んでいた。隣に座るチャンドラは、彼の視線を敏感に感じ取った。アスクは以前、ホーンラビットとの戦闘で苦戦し、その記憶が脳裏に焼き付いていたからだ。
「どうした、アスク? そんな顔をして。」チャンドラが問いかける。彼の目は、深い知識と経験から来る冷静さで輝いていた。
「いや、ちょっと不安で…また、あのホーンラビットと戦闘になると、どうしようかと思って。」アスクはため息をついた。
チャンドラは頷き、口を開く。「ホーンラビットのスピードについていけなかったんだろう。それは、アスクの能力、器用さの低さが原因だ。戦闘においては、器用さがアップすればスピードにも対応できるようになるんだ。そこで、ひとつ対策を教えよう。」
アスクは一瞬動きが固まった後、目をキラキラと輝かせて、チャンドラの言葉に耳を傾けた。「どんな対策ですか?」
「これだ。」チャンドラは、手に持っていたスキルの書をアスクに渡した。「これは『鑑定・初級』のスキル書だ。開いてごらん。」
アスクは驚きながら本を受け取り、ゆっくりとページをめくった。すると、目の前に光が広がり、彼の中に何かが流れ込んでくる感覚があった。数瞬の後、彼はスキルを習得したことを実感した。
「これが…鑑定。初めての体験だ。」アスクは目を丸くし、驚きに満ちた声を上げた。
「そう、鑑定スキルは打撃系スキルに比べて人気がない。多くの者はあまり使用したがらないが、上級以降は使い勝手の良いスキルなんだ。ぜひ使ってほしい。」チャンドラは微笑みながら続けた。
アスクは自分の手のひらを見つめ、「これで、相手の能力値をある程度把握することができる。次の戦闘が少しは楽になるかもしれない。」と期待を抱いた。
「そして、スキル書を初めて使用したことで、ミッションが完了した。得られた能力値をどう振り分けるかわかるな。」チャンドラはアスクにアドバイスを与えた。
「もちろんです。全て器用に振り分けるのですね!!」アスクは自信を持って提案した。
「それが良い。器用さが上がれば、次の戦闘でのパフォーマンスが格段に向上するはずだ。」チャンドラは頷き、アスクの成長を見守る決意を新たにした。
「ところで、チャンドラさんはどうして、ボクの器用が低いことがわかったんですか?」とアスクはやや眉をひそめて問いかけた。
「それはな。昨日、アスクを鑑定したからさ…オレは鑑定の上位スキル『天眼』を持っている。アスクに渡したスキル『鑑定・初級』を鍛えていくと、中級、上級、極眼、天眼、神眼とスキルが上がっていく。道のりは大変だがな。」と苦労さを滲ませたようにチャンドラは答えた。
「スキルを上げていくためのコツはあるんですか?」アスクは目をキラキラと輝かせて、弾んだ声でチャンドラに質問していく。
「そうだな。基本的には、スキルを使い続けることだな」とチャンドラは言った。彼の声には、自信がにじんでいる。「また、重要な場面で使用すると、いつもよりもスキル経験値が上がることもある。」
アスクはその言葉に思うところがあり、大きく頷いた。「そうなんですね。良く使っていた短剣スキルが上がっていたのは、使用頻度が多かったからなんですね。」
アスクの方を見て、チャンドラも頷きながら、「ああ、そうだ。スキルを磨くには、実践が一番だ。特に戦闘の最中に使うことで、経験値が増える。あとは、正攻法ではないが、スキルを上げたい場合、同じスキルの書を開くことで、経験値を上がることもできる。」
「スキルの書は、どのようにして入手するのですか?」アスクは興味津々で尋ねた。彼の目は期待に満ちていた。
「スキルの書・初級は、冒険者ギルドで売られているが、これには経験値がない。あくまでも初級者用の入門書だ。経験値が欲しい場合には、オークションで入札するか、もしくは、ダンジョンのモンスターから入手する方法だな。オークションは、状況によっては、高額になるケースが多いんだ。」チャンドラは少し考え込みながら続けた。「希少価値の高いものほど、高額になるからな。」
アスクは頷いた。彼の心には、冒険者としての夢が膨らんでいた。スキルの書を手に入れ、さらなる高みへと昇りつめることを想像し、何かに満たされたような笑顔を見せた。
「どこでオークションが開かれるんですか?」アスクはさらに尋ねた。彼の知識を深めるための情熱が伝わってきた。
「そうだな、オークションは時々、各地の都市で開かれる。特に大きな都市では、定期的に開催されているから、情報を集めておくといい。冒険者仲間やギルドの人間に聞いてみるのも一つの手だ。」チャンドラは、経験に基づくアドバイスを惜しまなかった。
「ダンジョンのモンスターからスキルの書を入手するのは、討伐すれば良いのでしょうか?」アスクは念のための確認をした。
「あぁ。その通りだ。ただし、簡単なことではないんだ。スキルを持っているモンスターは、知能を持ち、強化されている個体が多いんだ。長年討伐できないモンスターなんかもいる。そういったモンスターは、冒険者の間で二つ名がつけられていたりする。」チャンドラは何かを思い出したかのように、遠くをぼんやりと見ていた。
アスクはその言葉を心に刻み、これからの冒険に期待を膨らませた。彼は決意を新たにし、馬車の明かりの中、チャンドラと共に新しい旅路を歩む準備を始めた。彼の心の中には、スキルを磨き、仲間との絆を深めるという目標が確かに宿っていた。
【ステータスウィンドウ】
LV:21(+0)
AP:120/160(次のLVまで残り1420)
HP:222/222
MP:40/40
SP:35/35
スキル:
- 短剣・中級、
- 探知・初級、
- 水魔法・初級、
- 潜伏・初級、
- 鑑定・初級、
-アイテムボックス・初級
AV:筋力78+2、体力44+1、敏捷34+1、器用10+18、知力20、精神20
ミッション達成
・初めてスキルの書を使用する(+10)
・初めてパーティに加わる(+10)




