太陽系外への片道切符
ヴァーリは建造中の基地、地下に向かう。
「事前情報によると大型リアクターが稼働寸前だ。動力さえ破壊すれば、マスドライバーからの砲弾も放てまい」
アベルシリーズのホークが邪魔するが、ヴァーリは閉所を利用して撃破する。
火力も装甲もヴァーリのほうが上だ。いくら中身がサイボーグであるタルヤでも、機体性能の差を覆す程ではない。
『残念だったなヴァーリ。リアクターを破壊してももうムダだ。装填済みの砲弾は惑星カインへ放たれる。その衝撃は歴史に倣いかの地を揺らし、カインはこのアベルとともに破壊されるべきなのだ』
「人体を完全機械化などするからだ。超越知能としては当然の処置だろう」
『ELは人類の深宇宙進出に適応した肉体を望んだのだ。私はその望みを叶えたに過ぎない。実際その計画は承認された。それをカインが邪魔し、ELによって罰せられたのだ』
「しかしELはカインを破壊しなかった。計画に問題があったと判断したのだろう」
『第一世代超越知能こそは全知全能である。いかなる間違いも犯さない。それは法則に等しき存在だ』
隻翼はふっと笑みを漏らした
「そこは違うな」
『お前にELの何がわかるというのだ』
「ELが全知全能なら、どうして各種の超越知能を作った? 神の反相である悪魔まで再現した? 異神の名を冠した第二世代超越知能ゲニウスを作った? 全知全能には程遠いからだ」
『黙れ人間!』
「だから第三世代サバオトに破壊されてしまった。真なる全知全能なら、そんなことは起きない。超越知能は神ではないことは、かの者たち自身が理解している。理解できないお前は、もう破壊された残骸に過ぎないからだ』
『黙れ。食欲性欲睡眠欲を克服した完全なる人間。それがタルヤだ。魂の移植も終え、生物との差異もない。ELはこの計画を承認した』
ヴァーリは追っ手のグラディウスアベルを破壊しながら、先に進む。
マスドライバーが起動しつつあった。ヴァーリのいる位置からでも振動が伝わる、超巨大施設だ。
「完全なる人間は次の魂。――意識をもつ生命体を作り出すことはできるのか?」
『不要だ。そんなことをする必要もない』
「種として終わっているじゃないか。存在意義がないだろう」
グラディウスアベルをティルフィングで斬り裂きながら、隻翼はアベルへの問いかけを続ける。
『多くのタルヤは未知の星系へと旅だった。帰ってきた者はほとんどいないが、ごくわずかに生還し、地球環境に適した惑星を見つけた者たちものもいる。生体の人間より遥かに有用なのだよ』
隻翼は言葉を失う。
「――ELが望んだ機械化人間。それは太陽系外への片道切符のためだったということか! まさに生贄の子羊だったというわけだ!」
『通常の人間には不可能な任務。私はもっとタルヤを増やして宇宙の可能性を調べないといけない。私を製造したELのために!』
「超越知能アベル。もうお前の役目は終わったんだ。もはや残骸のお前を破壊はできないが、この要塞のリアクターを破壊して時間稼ぎぐらいはできるだろうさ」
『お前はもう間に合わん。十分後には射出する。この建物は崩壊するだろうが、お前はそこで死ね。意識があればタルヤにしてやろう』
「十分か。ずいぶんと遅いな。所詮、残骸か」
隻翼はそう吐き捨てると、ヴァーリはリアクター目指して加速した。
三分もしないうちに巨大なリアクターに到着する。
厳重な搬入路をティルフィングは斬り裂き、強引にリアクターへの経路を確保した。
「終わりだ」
エクスプレスからビーム弾を連続して放ち、リアクターを攻撃する。
超大型のリアクターは、極めて頑丈だった。
「エクスプレスでは無理か」
機関部を破壊して停止させるしかない。プラズマを維持できなくなった核融合炉は、核融合反応は速やかに停止するだろう。
「これか」
核融合を制御しているユニットを発見し、ティルフィングで破壊する。
核融合炉は静かに停止した。
『――残念だったな。発射は止まらない。蓄電しているに決まっているだろうが』
「そうか」
隻翼は静かに返すだけだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
惑星アベルの新型要塞は大型の円錐型の塔のような形状だ。
下層ほど広く、上層ほど細い。
その最長点にあるサイロのハッチが開いた。この要塞自体が巨大な砲身なのだ。
惑星カインまで約百万キロメートル。十分に射程内だ。
「センノスケの兄貴! 要塞が動き出しました!」
「てめえは黙って無人機を墜とせ!」
「了解です!」
トレーラーハウスが敵航空編隊に斬り込み、無人機を撃墜していく。
『巨大な熱源を感知しました。大型マスドライバーが起動します』
エイルがクルーに通達する。
「計算通りだな」
ベルゼブブがにやりと笑う。
「――お前の出番だ。ツバキ」
はるか上空から急降下する機体があった。
ナミの駆る装姿戦闘機アグラェクウィフ・ビッグヴァルチャーはサイトに狙いを定め、引き金を引いた。
砲口寸前で放ったミサイルは迎撃不可能。
すかさずホーク形態に変形し減速。すぐさま再変形し戦闘機形態に戻り離脱する。
「任務完了」
ほんのわずかな間のあと、砲身が火山のように火を噴いた。
『ツバキが反応弾をマスドライバーに投射。あの要塞の砲身は機能不全。隻翼がリアクターを破壊も確認しました。すべての任務が完了です』
エイルがクルー全員に告げる。
彼等の完全勝利だった。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
アベル要塞攻略完了!
ELは神ではなく、すでに破壊されているアベルは正常な判断ができません。
遠い昔作り出されたタルヤたちは次々と太陽系外の、未知の銀河へ送り出されていったのです。
人ならリスクを伴いますが機械なので。
全知全能なのになんで天使や悪魔がいるの? と思ったあなた。
その問題に触れてはいけません。遠い昔から、議論の的なのです! 神義論といいます。
キッチンカーは敵を引きつける囮でした。
ヘイジ君は頑張りました。キッチンカーは空中戦には向かないので。
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