お前、キッチンカーで空を飛べ
「隻翼の親分が建築中の要塞を破壊して戻ってくるまでは、耐えなきゃいけねえ! 各自、アルフロズルの姐さんに指一本触れさせるな!:
車長であるセンノスケが部下に檄を飛ばす。
『ネフィリムの数が多く突破してきています。敵無人戦闘機の飛来を確認しました。長距離砲を持っているホークは迎撃を』
エイルが状況を分析し、部隊に指示を出す。
「取りついたネフィリムは挽き潰す。問題は空だ。ナミの姐さんだけじゃ辛いな。―――おい。ヘイジ。お前、キッチンカーで飛べ」
「待ってくだせえ! キッチンカーは空戦には向いていませんぜ! 対空ミサイルも積んじゃいねえ!」
ヘイジの言い分は至極当然の道理である。
「人型のホークがが変形もせずに空を飛ぶよりはキッチンカーが空飛んだほうがいいだろ。大気圏離脱能力があるキッチンカーはそうない。空戦にも対応してあるとドヴァリンの兄貴から聞いた。やれ」
冷ややかな命令だった。
「ええい! じゃあ飛びますよ! キッチンカーだって空戦できることを証明します!」
キッチンカーは車輪による全速移動からスラスター推進に切り替わり、やがて離陸した。
「ヘイジさん。ガンバ」
ユノが心のこもっていない応援を投げかける。
「やるっすよ! ――そうだ! カインの兄貴が装備してくれた新型兵器があるじゃないすか! 頼んだっす」
「任せて!」
砲手担当の少女が躊躇なく引き金を引く。
カイン特製の拡散荷電粒子ビーム砲を展開したキッチンカーは敵無人戦闘機を一射で半数近く撃墜した。
「すげえ威力だ!」
使ったヘイジも驚く威力だ。
敵戦闘機編隊は距離を取り、キッチンカーに狙いを集中させる。
「ハンドルとブレーキで空中戦は無理あるっす!」
大型車であるため二速スタートのキッチンカーであり、何故かマニュアルトランスミッション操作だ。
ヘイジは必死の形相でアクセルとマニュアルを駆使して、減速と加速を繰り返しながら回避行動を取る。
背後を取られるが、急ブレーキをかけると、後方スラスターが作動。マニュアル操作で、車体後部のスラスターを用い急旋回した。
戦車の信地旋回に似た動きが空中でも可能なのだ。
間一髪対空ミサイルを交わしたキッチンカーは、メイン兵装である荷電粒子ビーム砲で敵機を撃墜する。
「おえっぷ。こらヘイジ! 無茶な軌道するんじゃねえ!」
メイン兵装担当のクルーがヘイジを怒鳴りつける。
「いたたた。やるなら一言いってよね!」
無線で砲手を担当しているクルーからヘイジに対するクレームが入る。
「直撃するよりましっすよ!」
ヘイジも必死な形相で空中戦をしている。
「ちぃ。撃ち漏らした。一機特攻してきやがる!」
砲手から連絡があったヘイジは眼前に迫る無人戦闘機を捉えていた。
「こんな時こそドリルっすよ!」
ドリルを展開したキッチンカーは特攻してくる敵無人戦闘機を粉砕する。
「ヘイジ! もっと高度をあげろ! 地上からネフィリムに狙われているぞ!」
「ヘイジさん! もっと射線のことも考えて! 狙いが定まらないの!」
車長とはかくも辛いものか。
ヘイジは鳴り響く通信をよそに、運転に専念していた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ネフィリムとは違う集団がアルフロズルに接近してくる。
タルヤが搭乗するアベルシリーズのホーク部隊だ。
「チヒロ様。援護をお願いします!」
「わかった!」
サイボーグであるタルヤの反応速度は速いが、それさえも上回る運動性を見せつけるユノのフラメンシュヴェル。
右手にビームライフル。左手にプラズマブレードで、盾は装備していない。
一撃離脱型の戦闘スタイルだ。
支援しているチヒロのスーパースパタは隻翼の愛機を譲り受けたものだ。
方向性は同じ汎用性重視ながらも、性能は桁違いになっている。設計者であるカイン自ら魔改造したスパタは高火力支援機体として生まれ変わった。
「俺たちもいくぜ!」
「おう!」
タコヤキ以下、屋台フードのコードネームたちも奮起している。
反応速度が速いアベルシリーズに、連携でうまくいなして撃退している。
「終わったら甘味が食べたい」
食欲のままに戦うハッピートリガーを叱咤する隊長のオルレア。
「kill数が一般人に負けています。私たちは専業ホークなのですよ? 戦いに専念しなさい!」
チヒロとユノが奮戦している。専業ホーカーであるオルレアたちの撃破数を上回っている。タコヤキたちも確実にアベルシリーズを撃破しており、ここまでではホーカーチームが最下位だ。
別に撃破数を競っているわけではないが、専業ホーカーとしてのメンツも丸つぶれだ。
「撃墜スコアはヴァーリ。次にツバキの装姿戦闘機。三番手が…… キッチンカーですって? 私たちはキッチンカー以下なの?」
専業ホーカーチームは部隊別でみればブービー。
最下位はアルフロズル本体と砲手担当チームだが、このチームが活躍するような状況になってはいけない。
「戦功を焦りすぎるなオルレア。あいつらは魔改造兵器に載っているいわばチートだ。できることに専念しろ。こんなことで降車はない」
ベルゼブブからの通信に下唇を噛みしめるオルレア。
グルメ野郎に正論を言われて屈辱の極みなのだ。降車通告を知っているか知っていないかわからないが超越知能だ。知っているのだろうと踏んだ。
「了解。――いいわね食いしん坊は」
一言だけ応答すると、通信を切って吐き捨てる。
食べるためだけに乗車している超越知能にフォローを入れられたオルレアは、ある意味吹っ切れた。
キレたともいってもいい。
オルレアのウルフベルトは鬼神の如く戦い始めた。
彼女はいまだ、一時乗車の身なのだ。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
キッチンカーはあんまり速度は出ません。推力は凄いのですが車体も重いので。
形状的にも空戦は向いていないですね。当たり判定が大きいのです。
チヒロ率いる食べ物チームの戦力はなかなか。
危機感を覚える一時乗車扱いのオルレア。実はあっという間に隻翼一家に馴染んだベルゼブブに軽く嫉妬しています。
隻翼一家なら冬定番のぜんざい系でしょうか。あの一家なら屋台関係なく普通にケーキ系も作るでしょうね!
今ならモンブラン系も多いかな?
応援よろしく御願いします!




