初期機体の使い道
隻翼は制御室にいた。
エイルとロズルに今後のアルフロズル運営方針を相談するためだ。
「人員は揃った。俺達が全滅でもしない限り、テュールスフィアはしばらくは維持だきるだろう」
『隻翼のおかげです。テュール様も喜んでおられます』
「難民が押し寄せただけにすぎないかもしれないが……」
『そんなことはありません。命あっての物種といいます。かつてのテュールスフィア住人が戻ってこなかったことがその証左。戦う意志がある人々が住人になるということは喜ばしいことなのです』
「連中は見せしめのために徹底して破壊し尽くしていたからな」
EL勢力のやり方だ。異端と認定されてしまっては容赦がない。
『住人がいるというだけで大きな可能性を秘めることになります』
「そこでだ。新たな住人たちはほとんどが非戦闘員だ。どうするか」
『希望者から戦闘員と非戦闘員を区分します。隻翼とナミはホーカーですので単独行動も可能ですが、他の方々には防衛を担ってもらいます』
「希望者から戦闘員を募るんだな」
『その件ですが問題が生じています』
「どうした?」
『親子連れの妻子を除いてほぼ全員が戦闘員希望です』
「血の気が多い連中だからな」
隻翼も納得する。もとより戦闘したくない人間はアルフロズルに乗車していないはずだ。
『搭載兵器が限られます。隻翼のヴァーリ。ナミのビッグヴァルチャーなど乗員希望者が持ち込んだホークを除外すると修復したスパタと鹵獲したグラディウスの二機のみ」
「愛機だったスパタを悪くいいたくはないんだが、性能には限界があるからな」
『量産機では使いやすく優秀な機体です。専門のホーカーが搭乗する場合は良いかと』
「初期機体の使い道にはうってつけか」
スパタやグラデイゥスは大量に生産され、スフィアから支給される兵器や中古市場にも多く出回っている。
グラディウスよりもスパタのほうが安価で入手性も高い。
またホーカーズビューローから支給される機体としてもスパタは定番だ。使い潰して構わないからだ。
『装備に不安が残ります。スパタはとくに武装が定番化されています。ホーク用のライフルと盾。予備兵装の実体剣。ホーミング性能が優秀なミサイルのローンチポッドが定番です』
「スパタ用のミサイルは何故か優秀なんだが、対ホークでは火力不足だよな。俺はオーガードライバーで対応したが」
『必要な武装はドヴァリンたちが製造してくれるのでご安心を』
「パイロットの資質次第だ。そこは選ばれた本人の意向を聞くとしよう」
得意武装はパイロットによって異なる。
歴史的な流れでは刀剣類は片手持ちが主流だが、カミ系スフィアの出身パイロットは両手持ちの刀を好む傾向にある。
『訓練を適度に実施して適性の高い方からホークのパイロットになってもらいましょう』
「賛成だ。それでいこう」
『それではそのように計画します。そのためには物資調達を急ぐ必要があります』
「調達か。地球の軌道エレベーター地下以外だと……」
『水星と金星宙域古戦場あたりが有力ですね』
「資源惑星の水星。テラフォーミング化された金星か。金星は先進都市跡地が多いな」
多くはEL勢力とゲニウスの戦争で荒廃している。
火星はEL勢力が制したが、金星は居住区画を巡った争いは今なお続いているのだ。
水星は人が住むには適していない惑星だが、莫大な鉱物資源が眠っている。
『宇宙艦の兵装やホークの原材料や廃品が入手できれば、艦内で製造可能です』
「やることが多すぎるな」
『屋台巡業を最優先します』
「屋台? どうしてそうなるんだ」
まずは兵装を整える準備かと予想していた隻翼が理由を尋ねる。
『機械とAIが生産効率を上げた結果によって人間は働く必要がなくなりました。そうするとより豊かさを求めて争いが発生します。生活と関連する義務が必要です』
「仕事が必要なのか」
『毎日寝て戦闘に備えるだけではいずれ毒となり人々を蝕みます。幸い皆様は屋台職人なので問題ありません。定期的に出店することでモチベーションは維持されます』
屋台を出すことは住人になった者たちには必要不可欠なのだ。
隻翼は今後一家を担わなければいけない。
「俺も屋台が本職だ。異論はない」
『隻翼は傭兵のホーカーとしての仕事を優先してください』
「そうなるよな」
ヴァーリを遊ばせておく余裕もない。
『あれほどの戦力を眠らせておくには惜しいです。人がいなかった以前とは状況が違います』
「やることは多いが、以前の火星襲撃計画と比較すると派手さはないな」
『今は雌伏の時です。あの当時の計画はただの嫌がらせにすぎません。今は本格的な侵攻準備といえるでしょう』
「そうだな。エイトリを取り戻して四人。いや六人を元の姿に取り戻す必要がある」
『私達は最善を尽くします』
「頼むよ」
屋台の巡業計画と住人の戦闘訓練計画が提示される。
「屋台の巡業先は募集はホーカーズヒューローでやるのか?」
『屋台のホーカーたちも取り仕切っています。月での屋台市を定期的に行いましょう』
「月? 地球でも構わないが。ああ、カグヤの依頼か」
『カグヤ様より「屋台祭りの場所を定期的に提供するので月一回きてください。月だけに」と日本語での伝言を賜っております』
「やかましいわ」
思わず生まれ故郷の言葉で毒突く隻翼であった。
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今回は初期機体の使い道。
ゲームでもお世話になる初期機体ですが、通常のプレイヤーが終盤まで使える機体はごくわずか。
その意味では○C6の初期ブレは優秀ですね!
技術的制限からプラズマブレードではなく実体剣です。プラズマブレードは高級品扱いですね。
初期ミサはこの世界ではなんというのだろう…… 決めていません!
ツクヨミスフィアのカグヤ様は関西地方系の可能性がでてきました!
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