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魔王、帰還す〜追放された傭兵は圧倒的な機動力と火力をもつ機体を駆り戦場を支配する  作者: 夜切 怜
過去との対峙

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ホーカーズビューロー

 隻翼はアルフロズルの装甲カプセル――宇宙艦でいうところの戦闘指揮所の戦車長として座っている。

 ほぼ宇宙艦の中枢戦闘指揮所なのだが、アルフロズルは戦車なのでこの呼称は必要らしい。

 

「狭いコックピット内なら気にならないんだが…… 一人だときついな」


 広すぎる戦車というのも問題だ。

アルフロズルは地球へ向かっている。ワープ航法は利用していない。


「ホークを数百機搭載可能な積載量は戦車とは言い難いよな」

『戦車です』


 ロズルの声に似た合成音が主張する。

 生体ゲニウスだった頃の名残は感じるが、雑談にも応じてくれない。


『賞金首の件をホーカーズビューローに確認しなければいけません』

「後回しだったあれをやるか…… ヴァーリもアルフロズルも登録していない。所属不明機のままとなる」

『所属不明機のままという選択肢もありますが全勢力が敵となる可能性もあります。登録を推奨します』

「そうだよな」


 コンソールを呼び出し、打ち込む。

 コンタクト先はホーカーズビューローだ。


 自分の項目を見るとコードネームすら空欄だが、ホーカーにとっては珍しくもない。

 隻翼――OneWingと打ち込み、登録を済ませる。

 

 機体と所属艦の項目も登録を済ませ、ホーカーズビューローのデータ更新を終えた。


『ホーカーズビューローへの登録申請を送信しました』

「とりあえず喰うにも困らない。屋台もあるが…… クルーは必要だが、無闇に人を増やしたくないな。クルーか……」


 戦術支援のエイルからも回答はない。同意なのだろう。隻翼はクルーについて考えを巡らす。

 しばらくして隻翼の登録ナンバーへ、ホーカーズビューローから通信が入った。


「俺だ」

「俺だ、ではありません。ホーカー」

「ミレーナか。久しぶりだな」

「生きているなら報告をしてください」


 ホーカーズビューローの制服を着た女性オペレーターからだった。

 隻翼の担当だ。名はミレーナ・カロザース。年齢は二十代半ばの、茶髪に青い瞳の美人だ。


「報告も何も。任務を達成して報酬は振り込まれただろう」

「そこからが問題なんですよ。なんですかこの登録は」

「俺の所有物を、規約通り登録しただけだが」

「所有物って? 古代文明のエース専用機に、巨大宇宙艦を一人で所有ですか!」

「古代というほど古いものではないし、宇宙艦でもない。記載してある通り、戦車だ」

「数百メートルの戦車? 御託は結構です。万単位の人間を収容できるキャリアーってだけでとんでもない代物ですよ。どうやって手に入れたんですか」

「ナイトホーカーだぞ。一山あてたに決まっている」


 ミレーナがわざとらしく大きな溜息をついた。


「何かいいたそうだな」

「あなたが派遣されたノアール地方において、魔王(アーチフィーンド)と呼ばれる機体が出現しました」


 ミレーナの眉間に青筋が浮かんでいる。


「そうか」

「そうか、ではありません。特徴が先ほどあなたの登録した機体と一致するんですが?!」

「それがどうかしたか?」

「賞金首になっていますよ?」

「知っている。すでに一人返り討ちにした」

「その前に連絡して欲しかったですね。こちらにはスパタの登録しかありませんでした」

「ホーカーズビューローは俺をEL勢力に売るのか。中立の名は返上するんだな」


皮肉げに笑う隻翼。

 ミレーナに恨みがあるわけではないし、オペレーターに所属ホーカーをどうこうする権利があるとも思えない。


「売りません! 魔王ということはであることは認めるんですね?」


 ミレーネは顔を真っ赤にして抗議する。

 賞金首の仲介はしているが、彼等が隻翼の居場所を教えることはない。ホーカーズビューローは各業種のホーカーたちによる人材派組織だ。

 立場としてはゲニウスにもEL勢力にも中立を維持している。


「俺自身は隻翼と名乗ることにした。コードネームもなかったからな。魔王と呼びたいヤツにはそう呼ばせておけ」

「あれほど自らを定義するコードネームを嫌がったあなたがどういう風の吹き回しなんですか?」

「そうだったか?」

「もう一つ嫌疑はまだあります。――あなたが依頼者であるジーンを殺したということです」


 隻翼は表情一つ変えない。


「依頼が終わったあとの出来事だ。仕事はした」

「その件も否定はしないんですね」

「とはいえ誤解されたままというのは勘弁だ。言い訳するよりは戦闘ログを送付する。真相は自分で確かめろ」

「少し安心しました。戦闘ログを提出できる程度には、狂犬ではなかったということですね」

「ひどい言われようだな。――エイル。スパタの戦闘ログをまとめてホーカーズビューローのミレーナに転送してくれ」

『承知いたしました』

「データを閲覧します。通信はこのままで」

「わかった」


 少し間があいて、ミレーナが通信を再開する。


「ジーンは自分のいた所属艦に処刑された…… あなたが元(・)依頼主を楽にした、ということですね」

「本人が望んだんだ。俺を罰することができる者がいるとするなら、ジーンに手を貸した北の魔王とやらだけだろう」


 北の魔王の正体は話さない。アルフロズルも登録したので説明する義務はない。

 隻翼も送付された内容を確認する。戦闘ログのみで、北極冠での出来事は送信されていない。


「北の魔王。火星にはテラフォーミングを主導した強力なゲニウスがいたはずです。そのうちの一柱でしょうか?」

「そうだ。EL勢力とは相反する。ジーンはゲニウスの遺宝を行使したゆえに処刑された。あとは個人間の問題だ」

「依頼者自身の願いであり、戦闘ログに改竄された形跡もありません。上層部に報告させていただきます」

「好きにしろ。やましいことはない」

「承知いたしました。しかし賞金首は解除になりませんからね」

「当然だ。賞金稼ぎ連中は殺してしまっていいんだろ?」

「構いません」

 

 そこは屋台行商から暗殺まで仕事を斡旋するホーカーズビューローのオペレーターである。

 顔色変えずに即答した。


「北極冠からの記録がありませんね」

「そこで機体と戦車を手に入れたからな。それ以降はスパタにも搭乗していない」

「スパタで魔王とは呼ばれませんよね」

「スパタで無双できるヤツがいるなら、そいつこそ魔王だと思うぞ」


 隻翼が思わず笑う。

 旧式機で基本性能の低いスパタは、バランスこそ取れているが強機体ではないのだ。そんな機体で敵を圧倒するならば、その者こそが真の魔王だろう。


いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


実はこの章が本来の一章だったのです。時系列に並べたほうがいいかなと。

一万人以上暮らせる巨大戦車に一人は辛い。早急にクルーが必要です。


隻翼がノワール戦役に参加したきっかけこそこのホーカーズビューローからの派遣依頼でした。

ホーカーズビューローこそはホークを操る鷹匠たちを管理する組織です。


次回、どうして屋台職人から傭兵への手違いが発生したかの追求です! 大事ですので。


応援よろしく御願いします!

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― 新着の感想 ―
タンクデサントする連中を集めるんだな 割と死にまくるそうだけど 廃れるわけだよ
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