謎の宇宙VTuber
美食野郎ベルゼブブとはベルゼブブがもつ食レポ系の人気配信chだ。
「美食野郎ベルゼブブの配信にようこそ。俺は太陽系にはいない。そんななかとびっきりのゲストがきてくれた!」
ベルゼブブの隣にいる人物は人ではない。アニメ系美少女CGで作られた、アバターだ。
「あーしは黄泉坂おぼろです! はじめましての人が多いかな?」
人気レトロゲーム系配信者、黄泉坂おぼろが何故かベルゼブブと一緒にいる。
赤神の巫女服アバターだ。
番組をみていたアルフロズルのクルーも騒然となった。
今代の技術なら3Dアバターをリアルに投射することは用意で、しかも機材が届く範囲内なら普通に活動できる。
専用の服まであるし、ボイスチェンジャーなど標準装備だ。
「待って。あの黄泉坂おぼろさん、隻翼一家にいる可能性が?」
「ホーカーの誰かかもしれないぞ!」
「黄泉坂って縁起の悪そうな名前をつける奴はカミ系スフィア住人しかいないだろ!」
ベルゼブブと一緒にいる人物は間違いなく人気配信者である黄泉坂おぼろがいる。本人認証マークが浮かんでいるので、間違いはない。
「今日は世話になっているシェフを紹介しよう。――腕の立つ屋台職人。隻翼という」
隻翼がシェフ姿というよりは居酒屋の大将みたいな姿で現れ、一礼をする。
「本日は私がメインシェフを務めさせていただきます。名もなき屋台職人です」
この撮影は隻翼参加ということで、アルフロズルクルーにも衝撃が広がった。
女神のように扱われているエイルとロズルは今、他の女性陣とパフェを食べている。
「どのような料理かな?」
ベルゼブブが気取った口調で料理を確認する。
「惑星カインの超越知能であるカイン様が絶賛された料理などはいかがでしょう?」
「もっと食い応えのあるものがいいな! おぼろはどんな料理がいい?」
これは一種のステマ配信。
ベルゼブブと隻翼が一芝居打つための動画配信なのだ。
「あーしは好き嫌いなんてないから! 期待しているよ隻翼!」
「承知いたしました。それでは焼き鳥のフルコースや串揚げなどはいかがでしょう」
「いいな!」
「タレと塩、どちらになさいますか」
「両方だ!」
「二本ずつねー」
「承知いたしました」
隻翼がさっと画面の外に退場する。
その後は隻翼自ら、料理を運んでくる。
「サラダ盛りとスープです」
その後串を次々と運び出す。
最初は軽いもの。アスパラやレンコン、モモや胸、皮など定番。
次に串揚げが運ばれてくる。
「アスパラレンコン詰まってる!」
「一品もののだし巻き卵はいいぞ。みろ、このとろとろ具合」
リスナーに容赦なく見せつけるベルゼブブ。
とはいっても食べ続けているだけではなく、二十一世紀から二十世紀のレトロゲームの話題で盛り上がっている。
二人の話題は何故か落ちゲーで、しかもベルゼブブまでが妙に詳しい。
「薬研なんこつとつくね串の盛り合わせです」
「つくねが絶品だな! 串のなかにも軟骨が入っているのか。薬研なんこつはつまみにいい」
「つくね美味しー」
アルフロズルの中にいる人間まで飯テロを受けている。
「なんて美味そうなんだ……」
「親分に作ってくれとはいえないよな……」
配信で見る料理はまた別格だ。見栄えにも気を遣っている。
「シメにはカレーライスとあんかけチャーハンがございます。どちらになさいますか?」
「両方だ!」
暴食のベルゼブブは揺るがない。
「あんかけチャーハンで!」
おぼろは迷わずあんかけチャーハンを選んだ。
火力で制されたパラパラのチャーハンにとろみのある餡がたっぷりかけられている。
カレーはいわゆるお家カレーであり、じゃがいもや人参もたっぷり入っている。
「あんかけちゃーはんでお口の中が幸せ!」
「カレーは美味いな。明日の朝もカレーで良いぞ」
最後はデザートが運ばれる。
マンゴープリンのアイス乗せだ。
「ところで隻翼よ。次はどこで屋台市を考えている」
「声をかけてくれたスフィアはたくさんある。もし、相手に戦意がないという前提だが……ガブリエルスフィアか。もしくはラファエルスフィアでもいい」
「ほう。それは難しいぞ。この俺がいるからな!」
「悪魔と相乗りしているからな。残念だな。ウリエルスフィアも検討してもいいが、太陽系に戻ってから考える」
「人気者は辛いな?」
「美味しく食べていただけるならどのスフィアにもいくさ。ミカエルスフィア以外は、な。幸いなことにミカエルスフィアからの招待はない」
「ならEL勢力でも絞られるな。俺も付き合う。ゆっくり考えるがいい」
隻翼は大きく肯く。
「承知した。それでは最後におまけのデザートだ。ゆっくり食べてくれ」
隻翼は最後に運んだデザートは巨大な飴だ。
「お、美味しそう! これはオレンジ飴だね! あーしは大好きだよ!」
「オレンジ飴か。なにか意味はあるのか?」
ベルゼブブが何気なく訊いた。
「火星に食べさせたい人がいたのさ。――もういないが」
「そうか。俺もいただくとしよう。――絶品だ」
オレンジ飴をかぶりついたベルゼブブは氷菓子のようにかみ砕いて味わっている。
画像をみていたエイルとロズルもその意味は知っている。
「お兄様。どうしてあのようなデザートを最後に出したのでしょうか」
エイルはお茶を口にしながら、真意を答えた。
「私はしっています。宣戦布告ですよ」
「誰に対してですか? ミカエルスフィア?」
真相を知らないユノが訪ねた。
「この世の理不尽に。――果たされなかった約束。隻翼のオレンジ飴はそういうものなのです」
ロズルが言った。隻翼が宇宙配信でオレンジ飴をだした。
それが彼なりの意志表示だということを三人だけが知っていた。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
隻翼なりの宣戦布告です。
EL勢力はどう反応するか。ミカエルスフィアには敵対宣言。
謎の宇宙Vチューバー。
さりげなく飯メニューのなかに久々に登場のオレンジ飴。
次回に引きます!
応援よろしく御願いします!




