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魔王、帰還す〜追放された傭兵は圧倒的な機動力と火力をもつ機体を駆り戦場を支配する  作者: 夜切 怜
強化計画

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試射

「あれはなんだ?」

「打ち上げ花火か? オーロラが発生する花火だなんて」


 人々が夜空を見上げる。


「カインが言っていたな。主砲が完成したらわかりやすい合図を送ると。向かうか」

 

 隻翼たちはカインのもとに向かう。

 カインの手によって星間巡航戦車アルフロズルの改装は終了していた。


「この戦車に主砲が装備できる日がまた来るとは。感無量です。数多くの副砲まで」


 ロズルが自分の車体を眺め、遠い目をしている。


「アルフロズル復活はテュールスフィアの悲願でもありますね」


 エイルも感慨深いようだ。


「疑似太陽炉があったからな。とはいえ火力を再現するには苦労したぞ」

「カイン。ありがとうございます」

「礼には及ばん。また遊びにきてくれればいい」

「必ずや。いいですよね隻翼」

「もちろんだ」


 アルフロズルは戦車。主砲とはアイデンティティーの一種なのだろう。


「ロズル。エイル。先に戻って主砲を確認してくれ」

「わかりました」


 隻翼は二人を先に帰投させ、カインと会話を続ける。疑問があったのだ。

 

「カイン。疑似太陽炉と核融合炉とはどう違うんだ?」

「核融合炉は電場や磁場、レーザー反応でプラズマ内で核融合を起こす。太陽は自己加熱と重力だ。とはいえ太陽なみの人工重力は難しい。アルフロズルのような疑似太陽炉は磁場によって循環する自己加熱機能で核融合反応を維持しているんだ」

「自己加熱循環型だから疑似太陽、か」

「原理的にはブラックホールエンジンと同種だがな。マイクロブラックホールで定常入熱と核融合のアルファ粒子加熱で自己加熱させ、プラズマを循環させた特殊なエンジンだ。今はもう製造できんよ」

「ブラックホールエンジンか。製造できないだろうな……」


 ブラックホールを動力にするなど、危険極まりない。


「第一世代ELの時代からみても、こんな戦車は極めて稀だが。エーシル神族はエル勢力を攻めたからな。これも地球の歴史に倣った、自然な動きなのかもしれんが」

「地球の歴史?」

「ゲルマン人の大移動だ。もっともEL勢力に取って変わられた点まで踏襲しているが。ゲルマン人のローマ帝国化は、ローマ帝国のゲルマン化も意味しているのだよ」

「そういえばウリエルスフィアは柔軟にゲニウスの戦力を取り入れているな」

「僻地はそういうものだ。地球もそうだったからな。ゲルマン語の英語が共用語に近い役割を持つことになるなど、当時の地球人は思いもしなかっただろう」

「言語か。意識したことがないからな」

「お前達が使う日本語は、世界から孤立しているといわれるほど独自だったからな」

「そこまでいわれていたのか」

「独自の文化が残っていることはいいことだぞ。なんでもかんでも取り入れる文化も、な」


 スサノオスフィアでは正月。端午の節句。お盆。ハロウィン。クリスマスを祝う習慣が根付いていた。

 仏教や神道、中国文化に加えキリスト教のクリスマス。ケルト由来のハロウインなど節操なく取り入れていた。

 サンジョルディの日だけはややマイナーである。


「さすがに北欧神話までは取り入れていないぞ」

「ギリシャ神話や北欧神話をフリー素材にしていた時代があったと聞くが?」

「知らん! 第一超越知能は神様ではないんだろ」

「三次元に干渉する権能でも使えたらいいんだがな。そんなものは、少ししかない」


 ベルゼブブがぬっと話に割って入ってきた。


「少しなら可能なのか? 権能なんて超越知能でも無理そうだが」

「少しなら可能だぞ。ただし人間風にいうと死ぬほど疲れる割りに、大したことはできん」

「おいおい。聞いたことがないぞ」

「普通話さないからな。世の中知らんほうがいいこともある」

「俺はどうなんだ」

「お前はヴァーリ憑きだろうが」

「悪魔憑きみたいにいうな。ヴァーリが怒るぞ」

「魔王みたいなもんだしな。お前ら」

「本物の悪魔王に言われたくはないな…… で、ベルゼブブは何ができるんだ?」

「内緒だ。カイン。アルフロズルを例に説明してやってくれ」

「俺に振るなよ。ちなみに俺の権能は、七倍返しだな」

「アルフロズルの権能は有名なのか?」

「有名だな。――疑似太陽炉を制御できる権能だ。アルフロズルは疑似太陽炉を持つ超越知能のなかでも特殊だな。炉とふいごがある戦車、などは例がない」

「製造もできる戦車だもんな」

「アルフロズルの主砲はその権能を利用したものだ。主砲は小型の太陽フレアを打ち込むようなもの。命中すれば居住宇宙艦でも一撃で粉砕できるぞ」


 隻翼は肩をすくめた。


「改めて聞くと物騒だな」

「荷電粒子砲より一段階上の兵装だ。宇宙規模の戦略兵器級にもなり得る。何より凄まじい磁場は宇宙空間でも電磁バーストを用いたECM兵器としても運用できる。味方にも注意しないとな」

「どこかの星で試射をしてみるか」

「先ほど試射はしたぞ。惑星アベルに向かって一発撃っておいた」


 含み笑いを漏らすカイン。


「待て。いいのか!」

「構わん。大気によって拡散する。地表に届いたとしても一部を黒焦げするぐらいだろう。惑星破壊兵器とまではいかん。――大気があれば、な」

「なければ?」

「惑星の種類や規模にもよるが水星あたりだと一帯を灰燼にできるな」


 その頃、試射の直撃を受けた惑星アベルの一部は焦土と化し、サイボーグのタルヤも溶解し、吹き飛んでいた。


「確かに戦略兵器だ」


 隻翼も思わず息を飲む威力だ。


「強力な武器だ。これでEL勢力を交渉できる戦力を手に入れることができた。違うかベルゼブブ」


 隻翼はミカエルなど第三世代超越知能をよく知るベルゼブブに問うた。

 ベルゼブブは不気味に笑う。


「飴と鞭は手に入れたわけだ。飴は料理。鞭はヴァーリとアルフロズルの主砲。奴らも無視はできまい」

「覇権主義のミカエルからは刺客が送られる可能性は高いだろう」


 ベルゼブブの言葉を補足するかのようにカインが告げる。


「それこそ望むところだ。あいつには借りがあるんでね」


 隻翼はジーンの仇討ちこそ行ったが、黒幕は別にいる。

 その背後にいる超越知能こそ、超越知能ミカエルなのだ。



いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!

今回で100話達成です! 応援ありがとうございます!


アルフロズルの主砲、ついに復活です! 旅の中盤目的クリア、ですね。


太陽と核融合炉の違い。イギリスで核分裂より先に核融合が発見され、太陽の仕組みが解明されました。

疑似太陽を作るにも、質量が足りないなあということでコアは量子レベルのマイクロブラックホール。

疑似太陽炉を持つ宇宙艦は少ないです。戦車はアルフロズルのみ。


各神話にはだいたい一人はいる太陽神ですが、北欧神話は脇役。フィンランド神話は誘拐されます。

日本神話は岩戸に隠れますね。

太陽神が三人いるギリシャ系のスフィアはヘリオス、アポロン、ハイペリオンです。

ギリシャ系のスフィアは地中海世界に憧れた人々が集まっている、という感じです。EL勢力に続いて意外と多い感。


アジア系はアスラとディーヴァに別れているという設定です。アスラだとヴァイローチャナ、ディーヴァだとスーリヤですかね。


試射によってナレ死ならぬナレ破壊されてしまった哀れな子羊たちですが、重要な区画が一つ吹き飛んだだけです。

大気の護りは大事、ということで。


応援よろしく御願いします!

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― 新着の感想 ―
東側は大量の機銃積んだ戦車とかいうゲテモノつくってたな 結局無辜の国民ぶっ殺すには榴弾のほうが効率的とかになって歴史から消えたけど
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