第21話 それぞれの戦闘スタイル
「しぬかとおもった……」
「お姉ちゃん……それな……」
「ひぃー……ひぃー……」
「お疲れのとこ悪いんですけど、モンスター来ましたので戦闘準備を」
俺たちの前に現れたモンスターはチンパンジーのような図体に山羊の頭と鳥の羽を持った動く石像、ストーンデビルだ。こいつらは柱から生み出されるモンスター、俺たちが着地で立てた音に反応して発生したのだろう。
普段なら適当に爆破魔法でも放って終わりだが、今はB級の3人を連れているからそうはいかない。不用意な行動が彼女たちの邪魔になってしまえば、それでパーティ全滅なんてこともありえる。
「俺は周囲の警戒をしているので、そのモンスターは3人で討伐してください」
「え!? 強いおじさん手を貸してくれないの?!」
「芝崎さん……そう来たか……」
まずは3人がどういう戦闘スタイルなのかをちゃんと見ておきたい。それ次第で俺がすべき行動が変わってくるしね。
「くぅ……想定外だぜ。あとはもう気楽に深層見学できるなんて思ってたのに……」
「いいからさっさと武器構えて。ほら、キュウちゃんも」
「あいさー。……ネゴみんと一緒に戦える……!」
現れたストーンデビルは一体だ。B級3人なら何とかなるレベルだろう。
「私が切り込むから、マヨイはいい感じに合わせて!」
「指示が雑だが了解!」
「《レッドブースト》!」
ネゴみんさんは自信に速度強化の付与魔術をかけ、一気にストーンデビルとの間合いを詰める。使う武器は短剣、細かい攻撃を重ねるタイプだがストーンデビルのような防御が高い相手には効果が薄いか。
「せい! お姉ちゃんランス!」
「あっぶな! 顔の横で振り回さないで!」
「当たらなければどうということはなし!」
マヨイさんは見たとおりに槍を使うタイプだが、見た目以上に繊細に扱っている。ネゴみんさんの後ろに立ちながら、ネゴみんさんには当たらずストーンデビルには当たる攻撃のギリギリを狙って、それを成立させている。やたらと顔の横に槍が来るからネゴみんさんの方は鬱陶しそうにしているが、着実にストーンデビルへ有効打を与えている。
ストーンデビルもマヨイさんへ攻撃を仕掛けたがっているが、目の前のネゴみんさんがちゃんとその邪魔をしている。自分以外の攻撃に対しての行動阻害はもちろん、自分への攻撃も難なく躱している。
パーティで回避盾でもやっていたのだろうか、彼女たちの連携が上手くいっているのはネゴみんさんが前衛を張っているおかげと言っても過言ではない。
そして……
「お姉ちゃん、溜まったよ」
ガントレットを着けているキュウさんは、戦闘開始時からずっと後方で力を溜め続けており、鈍い色をしていたガントレットが真っ赤に染まっている。
「よし、ネゴみん! 3秒後に後ろへ飛ぶぞ!」
「わかった!」
「3,2,1……ジャンプ!」
二人は一気に後方へ飛び、交代するようにキュウさんが一歩でストーンデビルの眼前に到達する。
「サイキュウ・インパクト!」
ドゴオオオン!
放たれた拳はストーンデビルに着弾すると、爆発のような衝撃を発生させる。過剰なまでの威力でストーンデビルは粉砕され、討伐が完了する。
キュウさんは一撃が重いタイプの人か。マヨイさんが前衛を張りつつ、後方のキュウさんが隙を見てスイッチし一撃を与える、というのが普段の二人の戦闘スタイルだろう。
うん、いい感じに連携も取れているし、3人に足りない要素も理解できた。俺はそこを埋めればいい。
「やったか!?」
「お姉ちゃんそれ言わないで」
「芝崎さん、後ろいます!」
一息つく間もなく、ストーンデビルの第二陣が発生する。今度は俺の後方に3体出現し、俺に向かって攻撃してくる。
「《ブラストショット・トリプル》」
ドンドンドン
振り向きざまに爆発魔法を3発撃ちこみ、ストーンデビルを破壊する。まあ、こんなものか。
「え」
「うっそぉ……結構大変だったのに……」
「あはははは、ですよねぇ……」
他にも襲ってくるかと思い、周りの気配を探っていると、インカムから通知音がする。
『……あーあー、芝崎さん聞こえますか? 聞こえていたら状況の説明をお願いします』
聞こえてきたのは舞華ちゃんの声だ。さっきよりも魔力が安定して通信が届いたのだろう。
「聞こえます。先ほど31階層の上昇落下に巻き込まれ、ネゴみん、マヨイ、キュウの3名を伴って深層へと突入。現在は帰還のため魔力が安定した場所を目標に行動しています」
『現状把握しました。まだ少しノイズがあるので少し不完全にはなりますが、こちらでも支援をします』
「ありがとう。周囲のモンスターの発生状況はわかる?」
『調べてるけど……さっき倒した4体以外は特にって感じかな。出現予兆も無いよ』
「そうか……うん、了解」
妙だな……ストーンデビルは音や気配に反応し次々と現れるモンスターであり、普段ならもっとドバっと襲ってくるはずなのに、それが無い。
原因を考えても仕方ない、情報が無い状態で仮定をしたって意味が無い。割り切ってこれは幸運と捉えるべきだ。
俺は胸ポケットから魔針計を取り出す。
「芝崎さん、それは何ですか?」
「ああこれ……魔針計って言って、魔力の流れが安定した場所を指し示す方位磁針みたいなものですね」
「そんなのあるんだ~お姉ちゃんポイント10Pあげよう」
「10Pも!? 大盤振る舞いだ……」
「ここはさっきよりも安定していますが、まだ命の紐が不発になる可能性は高いので、当初の目的通り魔力の安定した場所を目指しましょう」
「強いおじさん、少しはツッコんでもいいんだぜ?」
「はは」
マヨイさんを適当にいなし、俺が魔針計が指し示す場所へ向かって歩き出そうとしたその時、インカムからアラートが鳴り響く。
マジか、このタイミングで……!
『芝崎さん緊急です! 8時の方角から救難信号を受信!』
「……!」
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