第17話 おじさんは銃弾くらい防げるらしい 視点:ネゴみん
「ショットガンラビットですね。普通は5体前後で発生するんですが……これは結構多いな」
:え、モンスターいるの?
:ショットガンラビットまじ?
:囲まれたってやばくね
:芝崎さんの戦闘来たああああああ!
芝崎さんの言う通り、私たちの周りで小さなモンスターが囲むようにタッタッタと走り回っていおり、その足音の数は5体程度じゃ済まされない。
私はハンドカメラを浮遊モードに切り替え、抜いていた短剣を低く構えて自身に防護魔法をかける。
よかった、ショットガンラビットなら私も知っている。30階層に出現する兎型のモンスターであり、最大の特徴は口から放たれる魔力の散弾攻撃だ。動きが素早く攻撃も当てづらいくせに、飛び散る魔力弾は重たくて防御も難しいため、遭遇したくないモンスターの一つだと聞いている。
正直私一人だと速攻で命の紐使う案件なんだけど、今は芝崎さんがいる。勝ったも同然だ。
というか、視聴者も私より芝崎さんが戦ってるとこ見たいだろうしね。
「ネゴみんさん、危ないですよ」
「? うわぁ!」
:あぶねえ!
:ビックリした。大きい声出す時は言ってよ
:こわ
意識外からショットガンラビットが一匹、私の顔面に向かって飛びかかってきた。反射的に顔を後方にずらしたおかげで何とか直撃を避けられた。
嘘、こいつらって遠距離攻撃するタイプじゃないの?!
「気をつけてください、ショットガンラビットは弾丸を放つタイプと突進するタイプの二種類いますから」
:そうなんだ
:なんでこの人こんな淡々としていられるの
:あれ避けれるのすごいわ
:ネゴみん頑張れ
芝崎さんの言葉を皮切りに周囲のショットガンラビットたちが次々に襲い掛かってくる。私はそれを必死になって避けまくる。
死ぬ……! 初撃は芝崎さんのおかげでギリギリ気づけたけど、これ以上余計なこと考えてたら死ぬ……! ここは戦闘に集中しないと。
私は一度深く吸って目の前の敵に焦点を合わせ、飛びかかる。
:ネゴみんめっちゃ動けるやん
:おじさん戦わない感じ?
:腐ってもB級だな
:ほーん、まあまあかな
クソ、思ってた以上にめんどくさい……!
弾丸のような速度で突進してくるのはまだいい。攻撃地点は必ず地面からなので、足の踏み込みと方向さえわかれば対応できる。問題は遠距離で散弾を撃ってくるやつだ。口を開けたと認識した瞬間に魔力弾が飛んでくるから、いつ攻撃が来るか本当にわからない。突進してくるやつに注力しすぎると遠距離の攻撃を喰らうが、かといってそっちに気を取られると突進に対応できなくなる。
30階層のモンスターってこんなに強いの?! すばしっこくて攻撃が全然当てられないし! あーもう、私は戦闘中心の配信スタイルじゃないっての!
ふと、視界の端で口を開けるショットガンラビットを捉える。
やば、さっきの突進飛んで避けたから今空中! 回避……いや、防御強化!
咄嗟に腕の防御を強め、息を飲む。
ギィン!
放たれた閃光が、私の目の前で弾ける。ちょうどそこには芝崎さんのデッキブラシがあった。
「攻撃は避けた方がいいですよ」
「ありがとうござい……え、弾いた?! あの速度の弾丸を?!?」
:???
:すげえええええええええ!!
:何普通に弾いてんのこの人
:やっぱおかしいって
:おじさん来たあああああ!
よかった、芝崎さんも戦ってくれてる……! というかカメラ私に向いてるじゃん、芝崎さんの方に向きなさいって。
私は浮遊モードのカメラにちょいちょいっと指示を出し、少し戦線から下がる。
戦いながら芝崎さんを見ていると、ちょうどよく一匹のショットガンラビットが芝崎さんに襲い掛かる。
来た! どうなる?!
芝崎さんはその突進をひょいっと避ける。そして、それ以上何もしない。
「……?」
:なんだ?
:攻撃しないの?
:デッキブラシまだー?
え、それで終わり? デッキブラシばあああんは?
「あの、芝崎さんは戦わないんですか?」
「あ、素材いるかなと思いまして」
「……?」
「ほら、モンスターの素材って倒した人の物っていう暗黙のルールがあるじゃないですか。気にする人は気にするのでネゴみんさんももしかしたらと思いまして」
:?
:そんなルールあるんだ
:あるっちゃあるけど……
……なんだその理由は! 倒さなかっただけかい!! ……あれ、もしかして私が戦闘に参加したのは素材が欲しいからって思われてる?
「ぜんっぜん! 気にしないのでやっちゃってください!」
「素材は?」
「いりません!!」
「そうなんですね、わかりました」
:今度こそ来たーーーー!
:やっちゃえやっちゃえ!
:デッキブラシ?それとも爆発?
そう言って芝崎さんはデッキブラシを杖のように持ち直す。魔法を行使するのだろう、周辺の魔力の動きが芝崎さんを中心に乱れるのが見える。直前、芝崎さんのインカムからピピッとマイクがオンになった音が聞こえる
『芝崎さん、マークいる?』
「大丈夫、わかってるから。《縮小黒炎魔法》」
何……? 今までのと詠唱の感じも、流れる魔力の流れも違う……。ていうかマークって何のこと?
答えはすぐにわかる。デッキブラシの先端で収束した魔力は消失し、代わりにショットガンラビットの首元に小さな黒い炎が現れる。
それは、一匹だけではなく、見える範囲全てで。
:え
:なになになに
:燃えてる
:嘘だろちょっと待て
彼らは音もなく、もだえ苦しむ暇もなく黒色に燃え上がる。振り向くと、芝崎さんの死角にいるやつらも同様に燃えていた。
マークって、ここにいるショットガンラビットを全て座標把握してたってこと……!?
狙った場所に的確に魔法を行使するのは、針孔に一発で糸を通すようなものだ。相当な手練れでも、毎回必ず成功させることは難しい。それを一回の詠唱で、一斉に……! 無茶苦茶だ、無茶苦茶すぎる。
「ふう、いっちょ上がりっと」
「……すごい」
:そんなのあり?
:この人本当に何者なの
:すごすぎてネゴみんの語彙死んでるやん
:清掃完了って言え
:こんなん見たら探索者としての自信無くなるわ
芝崎さんが規格外すぎてコメントで何人もの探索者が心折られている。
……その気持ち、分かってあげられるよ。
「お疲れ様ですネゴみんさん」
「あ、はい。ありがとうございます、途中助けていただいて」
そうやって戦闘終わりに二人で一息ついていると、近くからパチパチと拍手の音が聞こえてくる。
「やあやあすごいねお二人さん! 感動した!」
「ようやく見つけました、ネゴみんと……強いおじさん」
現れたのは、見たこともない二人の少女だった。
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