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28話 ルシアンの教育④



『ルシアン様……明日は私たちに時間をください』

 

 三人の生徒が晴れて市民となったことを祝った日の別れ際に、そう言ったのはアーシェだった。

 結局、最後まで微妙な空気のまま三人を送り届けたルシアンは、アーシェのその言葉に救われたような気がした。

 三人には愛情もあるが、何より感謝していた。ラクシャクの力になって、ルシアンに素晴らしいものを教えてくれたのだから。このまま何も伝えずに王都へ向かうのは、あまりにも失礼な話だった。


 ルシアンはアーシェの言葉に、快く肯定の返事をして、その日の夜にあることを決意した。

 欲望に従ってアーシェとベルとウルスラをまとめて蹂躙する。そう決意した。

 いくら愛の言葉を考えても、言葉程度では安っぽく感じてしまい、最も情熱的に愛情を表現できる自信があったのが、強者となった三人を蹂躙するということだった。


「せんせっ! まってたよーっ!」

「こんにちは、今日もウルスラはかわいいね」

「ふ、ふぅん。その余裕も今日までだからねぇっ!」


 教育施設を訪れたルシアンをウルスラが出迎える。

 シビネ料理の効果なのか、ルシアンの見る目が変わってしまったのか、ウルスラのいつもの生意気で小悪魔的な表情の中に、可憐な女性の魅力を感じ取っていた。


「ルシアン様、お待ちしておりました」

「……待ってました」


 ウルスラに案内されて大部屋へと向かうと、アーシェとベルがルシアンを歓迎してくれた。

 アーシェが昨日提案したのはルシアンと生徒の三人で、他愛のない一日をただ過ごすだけというものだった。


「二人ともありがとう。ベルは少し元気がないみたいだけど何かあったの?」

「ッ……なんでもないです!」


 アーシェはいつも通り快活な笑顔を向けてくれたが、ベルはフーッフーッと少し荒い呼吸をしながら、何かに耐えているようでいつもより明らかに大人しかった。


「まぁまぁせんせぇ? ベルも頑張ってるんだからそんなにいじめないでねぇ」

「え? 別にいじめてないけど……うわぁっ、ちょっと! ウルスラッ……やめてよ……」


 いつものようにソファに腰掛けて、アーシェから出されたお茶を飲んでいたルシアンは、ベルの様子に戸惑ったが、すぐにウルスラが抱きついてきたことで思考が乱されてしまう。

 ウルスラのことを女として見ているルシアンは、自身の欲望を抑えるのに必死だった。三人とただ一緒の空間にいるだけで、激しい感情が湧き上がってくるのだ。

 ウルスラの柔らかな体と甘い香りに、本能が語りかけてくる——目の前の強い女を部屋に連れ込んで、愛情を叩き込んでやりたくないか?と。


「は? 何その可愛い反応……あのさぁ先生、私たちをからかうのはやめてねぇ?」

「……ウルスラちゃん、ルシアン様から離れて」

「……わかったぁ」


 欲望の狭間(はざま)で揺れているルシアンが弱々しく抵抗したことで、室内の温度が一気に上がったような気がした。異変を感じたルシアンは三人の表情を凝視した。


「ルシアン様は私たちの気持ちに気づいておきながら、そのような反応をしているのですか?」

「……あたしも今のはムカッときたわ」

「せんせぇ? 忘れちゃったのぉ?」


 アーシェもベルもウルスラもなぜか支配者の瞳をしている。荒い呼吸をしながら顔を赤らめて、身を乗り出している。

 そんな中でも思考していたルシアンは、ベルの素の話し方ってそんな感じなのかと、新たに知れた一面に嬉しくなり、愛しさを含んだ笑みをこぼした。


「ッ……ねぇこれってもういいんだよね? あたしもう我慢できないんだけどッ!」

「えぇ……ここまで女たらしだとは思ってませんでした。少し早いですけどその分楽しみましょう」

「……アーシェ? きっついやつにしてぇ? 動けなくなるくらい強いやつ」


 ルシアンは三人の様子がおかしいことに気づき、特に様子のおかしいベルに近づこうとしたが、立ち上がることができず、力無くソファにもたれかかった。


「え? なにこれ……体に力が……え?」

「……我慢の限界だったのは、ベルちゃんだけじゃないですよ。私ももう無理でした」


 顔まで動かせなくなったルシアンは、視線だけで三人を見やる。そしてようやく気づいた。

 室内の温度が上がったのも、支配者の瞳も、呼吸が荒いのも、顔を赤らめているのも三人のある望みを叶えるための前段階だったことを。

 

 『ルシアンをぐちゃぐちゃにして管理したい』


 その望みを三人は叶えようとしているのだ。おそらく体が動かないのは、アーシェの麻痺薬によるものだ。

 ルシアンはアーシェから出されたお茶を飲むことが当たり前になっていたことで、薬を盛られていることに気づくことができなかった。


「ま、まって三人とも! 僕の話を聞いてほしい」


 元より覚悟を決めていたルシアンは、立ち直るのが早かった。蹂躙する側ではなく、蹂躙される側となってしまったことは悔しかったが、これからはそれすらも楽しめば良いと割り切った。

 しかしルシアンにはどうしても伝えなければならないことがあった。愛しい三人の女——終わりの時まで共に歩んでいく妻達に。


「……今更、説教ですか? ルシアン様が悪いのですよ? 可愛い顔で誘惑して! いやらしい体で誘惑して! 私たちを狂わせて! ずっと我慢してたのに! もうあなたなしでは生きていけないのです!」


「あたしももう無理! あんなにかっこよく乱暴にされて絶対ルシアン様……いやルシアンを夫にする! あぁ……ついに呼び捨てをしてしまった……ルシアン……ルシアンッ! あなたを愛しているんだ!」


「私は嘘をついたことがないんだよぉ? 先生をパパにするし、ぐちゃぐちゃにしてお世話して管理するよぉ? 実はねぇ? だいすきって何回言っても、先生に流されてたのムカついてたんだぁ」


 狂愛——三人から溢れ出る怒りのような激しい愛情は、そう表現するのが正しかった。涙を流しながら(あや)しく笑う三人は、人によっては恐怖を感じるものだったかも知れない。重すぎると感じるかも知れない。

 それがルシアンには心地よかった。いくらでも欲しくなるものだった。まだ足りないとまで感じていた。三人がかりでそそげる愛はその程度かと。もっとよこせと叫びたかった。

 心が、脳が、満たされていく感覚に例えようのない快感を感じながら、ルシアンは言葉を紡いだ。


「アーシェ、ベル、ウルスラ。僕は君たちを愛している」

「ッ……それはっ——」


 ルシアンの言葉にアーシェが反応する。

 

「違うんだアーシェ……生徒としてではないんだ。三人を女として愛してるんだ。三人とも僕のものにしたい。妻になってほしいんだ」

「「「ッ!?」」」


 三人はルシアンの言葉が信じられないのか、もっと愛の言葉をもらって安心したいのか、驚いたまま黙り込んでしまった。その姿を確認したルシアンは心の内を全て(さら)け出す。


「もちろんこの気持ちは(きよ)いことばかりではないよ? 今この時も三人をぐちゃぐちゃに蹂躙して、その体に僕の愛を刻みつけたいと思ってるし、今回は好き勝手されても、それすら心地いいと思ってる。次は僕が三人をぐちゃぐちゃにするだけだから——覚悟してね?」


 ルシアンは欲望をたっぷりと含んだ低い男の声で三人にそう告げた。

 ベルが一際(ひときわ)大きく震えたのがわかって下品な笑みがもれた。

 そしてルシアンは、尚も言葉を紡ぎ続ける。


「僕は君たちから新しい愛情を教えてもらったんだ。こんなに激しくて苦しくて温かい感情があるなんて知らなかった。自分がもっと強い人間に生まれ変わったみたいで心地いいんだ。僕は教育者という立場だったけど、もう三人への教育は終わりだよ。これからは対等な立場で終わりの時まで、僕と共に人生を歩んでほしい」


 ルシアンは悲しくもないのに、なぜか溢れてくる涙を抑えることができなかった。声が震えて話しづらいのに、愛の言葉を伝えることを止めることができなかった。心臓の鼓動が痛いほどに騒いでいるのに幸せだった。


「アーシェ、ベル、ウルスラ。愛してるんだ。僕が終わる時は、三人にそばにいてほしいんだ。もっと僕に愛を注いでほしい。足りないんだ。僕も全てを使って愛を注ぐから……だから、妻になってほしい。一生を共にしてほしい」


 言い切った。全てをさらけ出した。情けなく、だらしなく、愛深く。ドロドロと溢れてくる感情を三人にぶつけた。決して物語で語られるような綺麗で美しいものではない。しかしこれがルシアンの本当の愛情だった。

 アーシェ、ベル、ウルスラが狂愛をさらけ出してくれた。だからルシアンは、さらに大きな狂愛でお返しをした。


 四人にそれ以上の言葉はいらなかった。ベルはルシアンの衣服を全て引きちぎり、アーシェは身体中の傷を舐めまわし、ウルスラは何度も口付けをした。

 愛に狂った三人は身動きの取れないルシアンをぐちゃぐちゃに(むさぼ)り続けた。

 三人はありとあらゆる方法と行為で愛を教え込んでいたが、ルシアンは獰猛な笑みを浮かべていた。お前達の愛をもっとよこせと三人を煽り続けた。


 ——最も愛に狂っていたのはルシアンだった。


 こうしてルシアンと三人の生徒の戦いは結末を迎えた。

 お互いがラクシャクに沈み、お互いが狂愛の底なし沼に沈むという結果を持って。







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