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7.唯一無二のギャンブラー

「ねえ、今日はあの子、来てるわよ!」


同僚の興奮した声に、皆が沸き立った。少しでもサービスを良くして、おこぼれに預かりたい。


でも、それだけだろうか?レナは考えてしまう。


しばらくぶりにカジノに顔を出したトーゴーは、預けていた掛札を引き出した。支配人が恭しく迎えつつも、厳しい視線を向けている。そんな視線に負けることなくカードゲームのコーナーに座り、他の客も含めたカードに興じる。


不正のないようにカードを切り、配っていく。


他の男たちがそれぞれの顔を作る中、トーゴーは眉一つ動かさない。低い声でチェンジ、チェック、レイズ、と的確に場を支配し、最後の最後でオール・イン、と勝負に出る。


客の殆どが素寒貧になる中、トーゴーの周囲には、数え切れないほどのチップが積み上げられていた。


その高額の札を支配人に、カードを配ったレナに、そして、サービスを提供している女子たちに気前よく振る舞った後で、平民の3ヶ月程度の月収をーーカジノにとっては塵芥のような数字だーーを引き出して、後は預けたまま。


支配人が、渡されたチップを弄りながら、つぶやく。


「女神に愛されてるっていうのは、ああいうことを言うのかね……」


そして付け加える。それにしても、媚を売りすぎだ、と。


それは、負け惜しみのようだった。今、場に出ている殆どの女性スタッフが、熱い視線を彼に送っていた。給料、月の収入にも等しい額のチップを貰って、浮かれないものがいるはずもない。


カジノ側としては出禁にしたいところだが、そんなことをすれば客が寄り付かなくなる。トーゴーに挑戦したい、という客は多いのだ。それに、他のカジノに流れていくのを考えれば、従業員が雪崩を打って後を追う可能性もある。


そもそも、大勝ちしているがその殆どはカジノ側に預けるという形で保管されているので、経営に支障が出るわけでもない。まったく、大したやり手である。


「アタシの親父もあのくらいスマートだったらなぁ」

「ねー。男ってすぐ負けるし、勝ったら勝ったでドバーッと引き出して散財するよねー」

「あの話、ホントらしいよ?姉と妹を、稼いだ金で学園に通わせてるって!」

「いいなぁ!私もトーゴークンみたいな子と家族になりたい!」


きゃいきゃいと同僚が騒ぐ中、レナは思い出す。チップを現金に変える時の、彼の顔。まるで、今から罰を受けに行く犯罪者のような、後海というか、自身を責めているような顔。


どうして、そんな顔をするのだろう……?


ただ一人、レナだけが、盛り上がれずにいた。



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