4.異世界ぼっちの数少ない友
異性の評判が高いトーゴーであるが、学園の殆どの男子たちは、いい顔をしない。
まず家柄である。ただの平民。それが領主にまで取り入っている。気に入らない。
同じ平民なら博打だけでのし上がった手腕に憧れもしようが、既存の秩序を壊すだけの脅威でしかない。
何より男らしくない。家事や勉学に長けてはいるが、スポーツの方は平凡である。そんなやつが女子にまで意味もなく媚を売っているのだから、嫌われないはずがない。
そんな中、下級貴族の出で、トーゴーと仲良くしているヒメノスは、かなりの変人と言えた。
「トーゴー。今度弁当を作ってきてくんねーかな」
類は友を呼ぶと言うが、ヒメノスもまた日頃から十分変人と言えた。
庶民と同じような乱雑な言葉遣いで、それを正そうともしない。
しかも、庶民のトーゴーに、対等に接するように求めていて、それもまた変人伝説に拍車をかける。
「構わんが……なんでまた」
「いや、弁当の交換をやってみたくてな。お前の噂の腕前を、味わってみたい」
「ヒメノスくん、ずるいっ!私もトーゴーの食べてみたい!」
「じゃあ、私も……」
「……おかず交換だけでいいかな?」
「ああ、それで頼む」
ところで、とヒメノスがポケットからトランプを取り出す。リリアとカレンが露骨に嫌な顔をする。
博打は男の遊戯である。女が稼いだ分まで持っていき、すっからかんになって帰ってきて当たり散らす。そんなのが当たり前だから、女子は博打が大嫌いだ。
外見に自信があれば、そこそこの高給取りにもなれるが、その代わりいやらしい目にさらされることになる。結局博打は、相容れないものなのだ。
トーゴーは例外中の例外だ。学園でもその伝説は轟いているから、挑むものはまずいない。
「今日こそお前に勝ちたくてな」
「まったく。俺は早く博打から足を洗いたいと思ってるのに」
「よく言う。領地中のカジノを潰すんじゃないかって噂されてるぞ」
「で、お前が俺に勝ったら?」
「俺も挑戦してみたいと思ってな。お前の伝説に」
一瞬、トーゴーの視線が鋭くなる。
「言っておくが、博打は博打だ。絶対はない」
「しかしお前は違うだろう?」
「数学と駆け引きを駆使して勝った。それが通用する相手だったからな。……今は昔ほど、勝ち続けられないよ」
博打といえば、ポーカーである。古典的な遊びの一つ。
ヒメノスは賭けたがるが、ここはカジノじゃない、とトーゴーは頑なに否定する。そんなわけで、勝っても負けても損得のない純粋な遊びが始まる。
そうなると男子は途端に興味をなくすが、逆に女子は、安心して二人の勝負を見ていられる。
「本当に、必勝のコツってないのか?」
「ないね。相手の身振りや動きから、役を推測する。自分の役は、逆に見抜かれないようにする。そんなところさ」
3回やって、3回ともヒメノスが負けた。
「うーん」
と、彼は唸り、トランプを仕舞った。
「本日の勝因は?」
「明かりだ。お前の座る位置に光が差し込んでいて、役が丸見えだった」
「イカサマだろ」
「ああ。カジノじゃまず通用しない」
「そうか。覚えておこう」
淡々と、ヒメノスは頷く。
勝負になれば、そういう手を平気で使うくせに、最後にはネタバラシをする。その辺りに、トーゴーの人の良さが現れている、と彼は思う。
友達か?と聞かれれば、ヒメノスはそうだと言うだろう。トーゴーがどう思っているかはわからないが。
友人でもあり、師でもある……ヒメノスは、彼の異才を尊敬していた。そして、身分に囚われずに自分が要求した対等な関係を卑屈も尊大さも持ち込まずにやってのけるトーゴーを、友人として好きなのだった。




