73話 千年桜の秘密
こんにちは!作者です!そしてお久しぶりです!
なんとか年内に間に合いました。
実は先月仕事の都合で転勤がありまして…。その影響で色々とバタバタしたり、今の職場に慣れるのに必死で執筆のモチベが一気に下がっておりました…。申し訳ないです…。
物語は楽しくしていますので、サクッと読んでいただけると幸いです!
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
時は少し遡る。シャイン達が昼間に訪れた千年桜の幹に空く大穴。人気はなく、月明かりが大穴の前に造られた鳥居を幻想的に照らす。
そんな大穴の前に今、浴衣姿で紺色の髪を風に靡かせる少女──レビィ・サファイアが立っていた。光がない青色の瞳で、漆黒を飲み込む大穴を見詰めている。
「見付けたぞ。」
レビィの背後から声がした。レビィが無表情のまま振り返ると、黒色の中に黄緑色がメッシュの如く混じっているセミロングの髪を風に靡かせる少年──シャイン・エメラルドが立っていた。
「レビィ…じゃねぇな。中に誰がいやがる?」
レビィであってレビィではないと瞬時に見抜いたシャインは、鞘に手をかけながら問いかける。しかしレビィは何も答えず、ただそこで佇んでいる。
次の瞬間、草木が揺れるほどの強風が吹くと、レビィの頭上から桜の花びらが舞い落ちてきた。桜の花びらは竜巻のように回り始め、レビィの全身を包み込む。シャインは鞘を握る力を強めながら警戒心を高めた。
そして桜の花びらが優雅に散っていくと、中から現れたレビィの姿が浴衣から巫女服に変わっており、髪と瞳も桜色へと変わっていた。
「中のヤツの趣味か?」
シャインの茶化しは見事に無視され、レビィは漆黒の刀を影から出現させ、ゆっくりと構えた。
「たく…結局こうなんのかよ。」
シャインは予想していたパターンの中で一番最悪なパターンを引いたことに溜め息をつきながら刀を抜いた。その一拍後、漆黒の刀の刃が眼前に迫ってきた。
風砕牙によって紙一重で漆黒の刀を捌いたシャインはすぐに反撃に移るが、その一撃は峰による打撃となっており、レビィを遠くに吹き飛ばすだけとなった。
「[長月]。」
地面に着地したレビィは漆黒のオーラえを刃に纏わせてて長くすると、横薙ぎで攻撃を仕掛けてきた。シャインは跳び上がって回避する。
「[葉月]。」
刃に纏わせていた漆黒のオーラが無数の黒き葉と化してシャインへと放たれた。
「[守護風陣]!」
空中にいるシャインが真下に向かって風砕牙を投げて地面に突き刺す。すると魔法陣が展開され、風の柱を前方に出現させた。しかし、黒き葉は風の柱を斬り裂いてシャインにダメージを与えた。
(くそっ…敵になったら厄介だな。無属性ってねぇのは。)
レビィの夜叉魔法は無属性。無属性には相性が存在しないため、使用者の力量次第でどの属性の魔法でも断ち切れる可能性があるのだ。
咄嗟に防御態勢をとることによって致命傷は免れたシャイン。
「[治癒ノ風]…!」
着地と同時に応急処置レベルだが自身に回復魔法をかけて止血をする。そしてレビィの方に視線を向けると、既にレビィは次の行動に入っていた。
腰元で漆黒の刀が浮遊させ、鞘には手を触れず、少しだけ前屈みの態勢で構えている。
(あの構え…居合か!)
シャインが気付いた時には、レビィの足は地面を蹴っていた。
「[終月光]。」
レビィの一閃の居合がシャインを斬り裂く──寸前。とある人物が割って入り、レビィの居合を二本の刀で受け止めた。
「お前は…ムサシ…!」
黒髪の無造作ヘアに緑色の瞳をもち、山吹色を基調とした少し明るめの袴を身に纏い、下駄を履いた二刀流の男──ムサシ・ミヤモトが、レビィを弾き飛ばした。
そしてムサシはシャインを無視したまま、レビィの中のモノに話しかける。
「めっちゃ探したで。まさか他国の大木の中に封印されているなんて思わんかったわ。」
「………」
レビィの中のモノは無反応であった。代わりに背後にいるシャインが問いかけた。
「ムサシ、お前あいつの正体知ってんのか?」
「なんや知らずに戦っとんかい。嬢ちゃんに取り憑いているんは、『妖刀』や。」
「妖刀?」
予想外過ぎる正体に、シャインはただ唖然となる。
「そうや。東の国──オリエンスイーストの刀匠によって鍛造された刀。名は──『村正』。遥か昔、たった一本で国を滅ぼしかけたとんでもない代物や。」
「そんな妖刀が、何で桜の木に?」
「そんなん拙者が知るかいな。大昔の人に聞いてくれ。──それより嬢ちゃんとの戦い、拙者が貰い受けるで。」
ムサシがニヤリと笑いながら二本の刀を構える。
「おい、勝手にきめ──!!」
シャインが止めようとした瞬間、レビィが待ちきれず斬りかかってきた。超反応でムサシが防ぎ、鍔迫り合いとなる。
「嬢ちゃんは待ってくれんみたいやね…!なら、このまま戦らせてもらうで!」
ムサシはレビィを押し返すと、そのまま反撃に移る。レビィも応戦し、月夜の下で激しい攻防が始まった。
レビィとムサシの戦闘が始まると同時に、シャインを追ってきたスノウ、アレンの2人が合流した。
「シャイン!レビィはどこだ!?」
スノウがシャインに駆け寄りながら尋ねると、シャインは視線で誘導する。
「おい、レビィと戦っているのって革命軍の剣士じゃねぇか。」
スノウの後にアレンが続く。
「ムサシ・ミヤモトだね。何であいつがレビィと戦っているんだい?」
アレンの疑問に対し、シャインが答えようとした時、息を切らすエアルがようやく合流した。
シャインは全員が揃ったところで、先程までのムサシとの会話を伝えた。
「妖刀村正…伝説上のものと認識していたけど、まさか実在していたなんて…」
想定外すぎるモノの出現に、アレンは動揺をしている。
「妖刀だろうと何だろうと、とにかく早くレビィを助けないと!じゃなきゃムサシに殺されちゃうよ!」
エアルが慌てた様子で激闘を繰り広げるレビィとムサシに視線を向ける。
「……いや、むしろこのまま戦ってもらう方が良いかもしれない。」
アレンが告げたまさかの言葉にエアルが激怒する。
「ちょっとアレン!それはレビィに死ねってこと!?」
「違うよ。いくら妖刀に取り憑かれているとはいえ、レビィはレビィだ。なら…僕達は本気でレビィと戦えるのかい?」
アレンが冷静の問いに、誰も反論ができなかった。
「気絶させるにせよ、拘束するにせよ、ある程度レビィを弱らせる必要がある。だけど僕達は必ずレビィを傷付けることに躊躇する。そんな状況でレビィと対峙しても、僕達が無意味に殺されるだけだ。だったら、弱るまでムサシに戦闘してもらった方が勝算はある。」
「けどよ、ムサシが勢い余って殺しちまう可能性もあるだろ?」
スノウが懸念点を挙げる。
「その時はムサシを全力で止めよう。ムサシ相手なら、僕達も遠慮せずいけるだろう?」
アレンがクスッと笑うと、確かにと他のメンバーも納得した。
そしてアレンの意見に乗ったシャイン達は、遠目からレビィとムサシの激闘を見守るであった。
レビィとムサシの激闘は千年桜周辺を回るように繰り広げらており、常人では目で追えないハイスピードの斬り合いとなっていた。
2人は千年桜を上へ上へと上がっていき、太い枝に着地する。
「いや〜やっぱ殺意マシマシの斬り合いは楽しいのう。」
ムサシが満足気な表情を浮かべる。
「………」
レビィは一切表情を変えず、光なき瞳でムサシを見詰めている。
「さて…続きといこか。」
ムサシは楽しそうに二本の刀を構える。しかし、レビィに刀を構える動きはなく、ただその場に立っていた。
(なんや別の方法で仕掛けてくる気か?)
油断なくレビィの動きを警戒するムサシ。その時、ようやくレビィが口を開いた。
「今の現世の人間の力はこの程度か。」
声はレビィだが、話している者は明らかに違った。
「なんやようやく口聞いてくたかと思ったら…拙者の力に文句つけたいんか?」
剣豪としてのプライドに触れられ、ムサシの表情が一気に不機嫌になる。
「貴様ではない。我が言っているのはこの女のことだ。」
レビィが自分の体を指差す。
「この女、夜叉族の末裔だろ?なのにこの貧弱さ…腑抜けた世になっているようだな。」
「人様の体を奪っといて散々な言いようやな。そんなに嫌なら、大人しく拙者に使われてくれや。」
「貴様が我を使う?笑わせてくれる。剣の腕は確かにあるが、夜叉族でもなく、まして魔法も使えぬ貴様が我を使いこなせるわけなかろう。」
見下された発言が、またムサシのプライドに触れた。
「あーもう…刀風情がガタガタと五月蝿いねん。黙って人間様に使われろや。」
ムサシはギロリとレビィを睨みながら、二本の刀を握る力を強める。
「断る。力無き体であれば、力を集めれば良いだけの話だ。」
次の瞬間、レビィの足下に魔法陣が展開された。同時に大地が大きく揺れ始める。
「この街にはかなり強い魔力が集まっているようだからな…全てをいただく!」
レビィがニヤッと笑った瞬間、首都チュラルナ全域の地面から、約3メートルから50メートルは裕に超えるほどの長さの根っこが無数に生えてきたのだ。
「なっ…!?」
ムサシは根っこに気を取られ、レビィから目を逸らしてしまった。そしてハッとすぐにレビィに視線を戻すが、そこにレビィの姿はなかった。
「……チッ。」
逃したことに舌打ちをした後、ムサシは千年桜から飛び降りた。
ホテル──チェリーブロッサム。突然の木の根の襲来にホテル内は大パニックとなっていた。ホテルの従業員は必死にパニックを抑えようとしているが、全く意味を成していない。
「これは…シャイン達、しくじりましたか?」
ホテルの部屋で待機しているヒューズが、外に広がる地獄絵図を見ながら顔を曇らせる。その時、パニックになった宿泊客達がホテルの出入口から飛び出してくる光景を発見した。
すると、宿泊客達の前方に数本の根っこが出現して行く手を阻み、攻撃する動作に入った。
「これはマズいですね。」
ヒューズがすぐに弓を構えて助けようとした時、
「[幽鬼の爪]!!」
紫髪の少女──ソノ・アメシストが、青き炎の鋭い爪で根っこを斬り裂いた。根っこは青い炎に焼かられると、焼失するのではなく、みるみる枯れていき、最期には塵となって消滅した。
「大丈夫ですか!?今は外のほうが危険です!早くホテルに戻って下さい!」
ソノが宿泊客達にホテルへ戻るように促すと、宿泊客達は礼を言いながら素直にホテルへ戻っていった。
「グッジョブです、ソノ。」
ヒューズは当然ように窓から飛び降りると、ソノの近くに着地した。
「ヒューズさん、これは一体どういう状態なのですか?」
現状を理解できないソノが不安な表情を浮かべる。
「簡潔に説明します。」
ヒューズがレビィの件をソノに教える。
「私がスヤスヤと寝ている間にそんなことが…。今から私も一緒に戦います!」
ソノが胸の前でグッと両手で拳を作る。
「それは頼もしいですね。では──!!」
ヒューズが今からの動きを伝えようとした時、ホテルを囲むように10メートル以上の巨大な根っこが何本も出現した。
「わわっ!?いきなり囲まれました!」
慌てるソノの隣で、ヒューズは冷静に根っこの動きを観察する。そして付近の根っこの狙いがソノだと感知した。
「──!!狙いは貴女です!早くホテルへ!」
ヒューズがソノに避難するように叫んだ瞬間、根っこが一斉に襲いかかってきた。
「えっ…?」
反応が間に合わず、その場で立ち尽くすソノ。
次の瞬間、ヒューズが横からソノを突き飛ばした。バランスを崩して転倒するソノは、自分の代わりに根っこの猛攻を受けるヒューズの光景を目の当たりにした。
「ヒューズさん!!」
ソノが立ち上がりながら叫ぶ。
「私は大丈夫です…!早くホテルに入って下さい…!」
弓と魔法の矢を巧みに操って致命傷を免れたヒューズが再びソノに逃げるよう指示する。ソノはヒューズを心配しながらも指示に従い、ホテルへと走り出す。
すると新たに短めの根っこが何本も地面から生えてきて、ソノを捕獲しようとしてきた。ソノは紙一重で回避しながら。しかし、遂に足首を掴まれてしまい、ビタンとうつ伏せに勢いよく倒れてしまった。
「ううっ…!」
地面にぶつけた鼻から鼻血を垂らすソノを、根っこは容赦なく引きずっていく。
「いやっ…!助けてっ…!」
ソノが泣き声で助けを求めた。
──凍てつく歌声。
──響き渡れ!
──「[響氷歌]!!」
ホテルの屋上から、美しい歌声が響き渡る。歌声は凍てつく波紋となって周囲に広がり、根っこを瞬く間に凍らせていった。完全に氷結した根っこはバラバラに砕け散り、ホテルを包み込むように氷の結晶が幻想的に振り注いだ。
根っこの襲撃から助かったソノは、その美しい歌声を聴いた瞬間にテンションが爆上がりし、鼻血を垂らしながらも屋上に向けて両手を振っていた。
「これが『氷神魔法』の力ですか。」
ヒューズも屋上を見上げながら呟くのであった。
「はぁ…何で私がこんなことに巻き込まれなきゃならないのよ。」
白い息と共に愚痴を吐くのは、年齢23歳、水色のロングヘアーに白色の瞳をもつ女性──ルコード・フリズである。
「強き力は善行に使うものよ。それに、こういう時にアイドルとは違う一面を見せるのもアピールの一つよ。」
ルコードの少し後ろから告げるのは、ルコードのマネージャーで白髪のサイドヘアーに青色の瞳をもつ30代の女性──イアス・リオコである。
「抜かりがないことで。──ま、流石に私もこんな状況を無視するほど心は冷えてないしね。今回はあんたも手伝ったてよね、『アイヒョウス』様。」
ルコードは振り返るとニヤッと笑い、イアスを正体である氷の神の名で呼ぶ。
「…軽々しくそっちの名前で呼ばないで。誰に聞かれているか分からないんだから。」
イアスは少し呆れた顔で注意すると、根っこがまたウネウネと現れた。
「今は聞かれる心配はなさそうね。根っこしかいないもの。」
ルコードが笑いながら戦闘態勢となる。
「それもそうね。なら、少しお手伝いしましょうか。」
イアスもクスッと笑いながら戦闘態勢となった。
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
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2025年も本当にありがとうございました!来年も投稿頻度は遅めかと思いますが、ゆっくり続けていきますのでよろしくお願いします!
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